「これってもしかして」
「俺たちは夢の中で」
「「入れ替わってる!?」」

といえば、2016年に公開された映画「君の名は」のPVの台詞ですね。

この台詞を見た途端、RADWIMPSの「前前前世」が脳内に流れた方もいるかと思います。

私がこの予告動画を見たのはその年の春でしたが、映画館で見た時「なにやら凄そうな映画がでてきたな」と感じたことを覚えています。
俗に言う「入れ替わりモノ」は世に溢れていますが、何だかそれだけに留まらない雰囲気を感じたんですよね。
今でもこの時の感覚はうまく言語化できません。
ただただ、「面白そうだな」と思いました。

その後の大ヒットは述べるまでもないでしょう。
私も上映中、まだ半分位しか終わっていないというのに心の中で「凄いなあ、これは凄いなあ、これは騒がれるわけだ!」と何度も頷きながら観てました。


私が特に惹かれたのは、この映画が当時の世相をよく反映していたことです。

東京と地方。近代文明と伝統文化。
相反するものがそれぞれ並立あるいは共存しながら成立している様子は、21世紀初頭の我が国をかなり鮮明に映し出していました。

また、物語の主要テーマ「入れ替わり」がファンタジーであることは自明ですが、一昔前なら一笑に付された“ある共同体が自然災害によって一瞬で失われる”という最近になって人々が共有した経験は、作品にこれ以上ないリアリティを与えていたと思います。
巧みな描写により、物語の中に現実世界を投影する効果をもたらしたことが大ヒットに繋がったのではないでしょうか。

もしも私が長生きして、未来の若い人に平成末期はどんな時代だったかと問われれば、迷わずこう答えることでしょう。

「『君の名は』を見れば事足りる」

将来、それくらいの評価を受ける作品だと私は思っています。


さて、相変わらずシャドーハウスから話題が逸れましたので軌道修正します。


夜を徹して続いたマリーローズ  VS ケイトの戦い。

その死闘に終止符を打ったのは、この「入れ替わり」でした。


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勝負はあっけなく決しました。

マリーローズ組の敗北です。


ケイトとジョンを追い詰め敗因を諭したマリーローズと、戦いの先に迫る自分達の運命を既に見据えているかのような瞳のローズマリー。

この時点では、まだ彼女達の勝利は揺るぎないものでした。


ところが、ケイトへ向けた敗因の口上が自身を襲うとは、流石のマリーローズも想定外だったようです。


亡霊の背後から突如現れたジョン。
繰り出される煤パンチ。
崩れゆく亡霊。
水しぶきとともに正体を現したエミリコとショーン。


前回のラストで繰り広げられたこびりつきと亡霊の襲撃シーンは、すべてこの瞬間のために練られた偽装工作でした。マリーローズの台詞を解釈し直すならば、ケイトの勝因はマリーローズとの直接対決を避けたことにあるでしょう。見事な連係プレーでした。


スタンダードを着て活き活きしていたジョンと、シャドーの装いがさまになっているエミリコとショーンとくれば、締めはあのお嬢様の登場です。


驚きを隠せないマリーローズ組の前に現れたシャドー。
それはスタンダードに身を包んだ、普段よりも少し不気味なケイト嬢でした。

今度こそ戦いの終焉です。
ケイトは二人に対し終戦を告げました。


暫くして、大人しく縄につくマリーローズとローズマリー。
最後の授業が思わぬ結末を迎えたことにショックを隠せないのか、二人とも俯き加減です。
あと数刻の命しか残されていないことを思えば、あまりにも悲壮感あふれる姿に見えます。


それを察したのか分かりませんが、ケイトはマリーローズとローズマリーから視線を外すと、エミリコとショーンの方へ向きました。

名演技を披露したエミリコとショーンを称えるためです。

今回の作戦は、マリーローズをどう欺くかにかかっていました。
そんな中行われたエミリコとショーンの演技は神憑っていたと言っても過言ではありません。

第6話の時と違ってケイトのドレスが似合っているエミリコや、煤が流れ落ちている途中のエミリコとショーンが「一体化」のように見えるなど少し不穏な雰囲気があったものの、囮役として完璧な役割を果たしました。

それもこれも、ケイトとエミリコとジョンとショーンだからこそ成功した一手でした。

その後もケイトがショーンを褒め、ショーンがエミリコのおかげだと打ち明け、エミリコの祝杯の音頭にジョンが乗るなど、4人が互いを信頼している姿がそこにはありました。


それを見て、微笑むローズマリー。
その表情はマリーローズと全く変わりないように見えますが、生き人形としての「顔」ではなく、心通わせた二人が見せた、優しさと切なさを湛えたこれ以上ない笑顔でした。


今までずっと、仲間もないまま抗い続けたマリーローズとローズマリー。
あと僅かな命しかありませんが、最後の最後にケイトという希望を見つけ出し、自分達の志を継ぐ者が現れたことに安堵しているかのようです。

すっきりした笑顔は、やれることをやりきったという満足感からでしょうか。
直後に語られた、自身の運命をケイトに委ねるマリーローズとそれを受け入れるローズマリーのやり取りは、一切の後悔も感じられない清々しい姿でした。


そんなマリーローズたちの覚悟に、暫し思案するケイト。

ケイトがこれから起こす行動の選択肢は二つあります。

一つはマリーローズ達を星つきに引渡すこと。
二つ目は、マリーローズを見逃しケイトが亡霊事件の罪を被ること。

しかし思案するまでもありません。
普通に考えて、マリーローズ達を星つきに引き渡す以外にないからです。

その先にマリーローズ組を待つのは「処分」ですが、この状況ではやむをえません。それを承知の上でケイトも覚悟を迫られました。


ところが、それを察知したエミリコはケイトに訴えかけます。

“シャドーハウスに洗脳されたこどもたちを救うこと。”

それこそがケイトの目的ではないかと問いかけたのです。
一体どうしたらいいのかと疑問を投げかけるエミリコの表情は、ケイトなら何か策がある筈だと信じている風に見えます。
これから訪れる悲劇を見逃すわけにはいきません。


しかし、それを制したのはマリーローズでした。

これまでいくつも罪を重ねてきた自分達を憐れむ必要はないと、エミリコを慮り、そして自身に言い聞かせるように彼女は語ります。

「許されないことを…してきたんだよ」


沈黙するマリーローズとローズマリーを見て、エミリコもジョンもショーンも言葉を失いました。
彼女達が背負う十字架の大きさに、3人は改めて気づかされたようです。

そしてケイトは、マリーローズのその言葉を聞いて拳を握り締めました。
ケイトもとうとう覚悟を決めたのです。



シャドーハウスに似つかわしくない清々しい朝。

エミリコの訴えもむなしく、この日マリーローズとローズマリーは星つきに引き渡されました。



館に対する反乱行為。

実行犯のマリーローズとローズマリーが許されることはまずないでしょう。

ましてや相手は星つきです。
否が応にも「処分」の二文字がちらつきます。

ケイトとしては苦渋の決断だったと言えましょう。


しかしそれ以上に厄介なのが、エドワードもマリーローズを危険視していることです。

そもそも事の発端はエドワードがマリーローズを「お呼ばれ」したことから始まりました。

するとローズマリーがせめてもと願った「処分」ではなく、マリーローズが絶対に避けたいと語っていた「一体化」を強制することも考えられます。

その次のターゲットがケイトであることを鑑みると、ケイトが更に窮地に陥ることは間違いないでしょう。

もはやシャドーハウスには暗澹たる未来しか残されていないのかも知れません。


ただ、私個人としては、ケイトがそれを甘んじて受け入れるとは正直思いたくありません。
なぜならエミリコが言っていた通り、それはケイトの哲学に反するからです。


マリーローズはケイトへのエミリコの訴えに対し、許されないことをしてきたと言っていました。
このシーンを見ると、ケイトはこの台詞によって星つきへの引き渡しを覚悟したように思えます。

しかし、そもそもの原因として、マリーローズ達をそこまで追い詰めたのは誰でしょうか。

ケイトは第44話で、偉大なるおじい様を見上げながら心の中でこう言っていました。

「あいつが…全ての元凶!」


ケイトがそのことを忘れていないのであれば、エミリコとジョンとショーンが沈黙した時、きっとマリーローズにあなたが悪いわけではないと語りかけた筈です。

そして、どうにかして彼女たちを救う術を編み出そうとしたと思います。


その策が一体何なのかは私には分かりません。

一時的にローズマリー班の管轄下の空き部屋に匿うのか、マリーローズが企んでいた「最後の舞台」に紛れて裏工作をするのか、はたまた星つきに対して交換条件を持ちかけて交渉するのか……。

少なくとも、ケイトとエミリコが座してこの事態を静観することはないと思います。


ラストページに描かれた夜明けの空。

これはマリーローズとローズマリーの晴れ渡った心中の表れだと、私は固く信じています。