“忠誠こそは我が誇り”、というフレーズをご存知でしょうか?

かつてのナチスドイツの下部組織・親衛隊のモットーです。

敵対組織の討伐に貢献した親衛隊を、ヒトラーが称賛した言葉が由来とされています。
あるいはミュンヘン一揆の際に、自ら盾になってヒトラーを護衛した隊員を顕彰した言葉とも言われています。

『忠誠』という言葉は所属する団体・権力者に対する献身や服従を指しますが、それは時として自らの命に替えてでも対象のために尽くすという意味です。
良し悪しは別として、歴史上こういった例を探し出すことは比較的容易です。

半ば強制されたように見える例も数多いですが、それは権力者側が集団組織の存続を優先した結果と考えられます。
反面、個人自身の忠誠心による自発的な行動の場合は、後世を生きる人間に対してさえも強く訴えかけるものがあるのも事実です。

いずれにせよ、『忠誠』を貫くには強い覚悟が必要です。
さもなくば自身の存在を“無”とする悟りの境地か、そもそも最初から何も考えずにいた方が幾分か楽といえるでしょう。

エドワードが演出する“お披露目”は、生き人形のシャドーに対する『忠誠心』が試されているように思えます。
ところがそれは、3階の重鎮達の物議を醸しだす諸刃の剣でした。

(今回もネタバレ等含みますので、まだ本編を読んでいない方は注意して下さい。)
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声だけとはいえ、とうとう「偉大なるおじい様」が登場しましたね。

確証を掴めていないのでまだ断言は出来ませんが、少なくとも四人の重鎮達とは違う異質の存在が現れました。

どこにいるのかというと、扉絵の重鎮達の視線の先です。

重鎮達の視線の先に何があるのかは、第28話を読み返して頂ければ分かると思います。
『第28話 視線』でも書きましたが、窓とは反対側に謎の存在が鎮座しています。


“顔は自らの考えをいずれ失う”
“シャドーと顔は一体化する”
“シャドーハウスはまだまだ可能性に満ちている”
“面白いお披露目だ”

特に三番目と四番目の発言(P4・3コマ目)に注目して下さい。

ここで描かれている金色の紋章は、第28話の11ページ目の上端に描かれているものと同じです。

果たしてこれが「偉大なるおじい様」なのでしょうか。
または、それとは別の上位のシャドーなのでしょうか。

まだ判然とはしませんが、その巨大さと発言の内容から、上位のシャドーよりも更に高位のシャドーとみて間違いはないと思います。
この謎のシャドーが“お披露目”にどう関わっていくのか楽しみです。


さて、この謎のシャドーが発言したことで、上位のシャドー4人はエドワードの“お披露目”について議論し始めました。

もしこの謎のシャドーが「偉大なるおじい様」だとすると、4人の話し方が砕け過ぎていてやや違和感を覚えますが、それは少し置いておきましょう。

それよりも問題は、その内容です。

“シャドーと顔は一体化する”

これはシャドーハウスの原則であり、そして蝶々夫人曰く、「館の重大な秘密」だそうです。

ちなみに今回、蝶々夫人は『ソフィ』、モノクル卿は『ジョセフ』という名が判明しました。
よって、これからは上位のシャドーは全員名前で呼ぶことにします。

この大原則に対し、ジョセフとライアンはエドワードのやり方に疑問を唱えます。
特にライアンは、エミリコの人形を叩きつけるほどに不満なようです。

なぜかというと、「“顔”は『奪う』ためにある」からです。

驚きました。
前話でのエドワードの豹変は、まさにそれを表していたのです。

だからこそ、生き人形の自我を増進させるようなこの“お披露目”は間違っていると語るライアン。

“星つき”として教化するならともかく、そんなことは無駄だと吐き捨てます。

しかし、片や女性二人はエドワードのやり方に一定の理解を示しました。

ドロシーは、リスクは高いものの、忠誠心を試すには重要だと語ります。
ソフィも、実験的な試みをしたエドワードを評価しました。

直後の、謎のシャドーの「面白い“お披露目”だ」発言や、革新的だとしてジョセフが困惑している様子からして、今回の“お披露目”は前例がないものだったようです。

もしこの“お披露目”が成功したなら、試験官三人組は昇格する可能性が高そうです。
逆に失敗したら、館の保守勢力からの猛反発は避けられないでしょう。

ジェイが前回、エドワードに慎重にすべきと注意した気持ちも分かります。
まさにエドワードにとって、一世一代の大プロジェクトだったわけですからね。

しかし彼に対し一定の理解を示したソフィとドロシーですが、一点だけ看過できないことがありました。

それは、重大な秘密である“一体化”を、エドワード自身がよりによって庭園のど真ん中で披露していることです。

これにはアイリーン(エリー)も、エドワードの自己心酔振りに気が気でないようです。
ドロシーの指示に即座に反応すると、すぐにすすバトを作り、エドワードに警告しました。
「警告レベル1」というそっけない伝言に、アイリーン(エリー)の苛立ちがそこはかとなく感じられます。
もしかしたら、ドロシーが広場の入り口を塞いだのもこれを懸念してのことだったのでしょうか。
だとしたら、以前にもエドワードは似たようなことをやらかしたのかも知れません。

エドワードの“お披露目”に揺れる重鎮たちを前に、謎の存在は心なしか楽しそうです。


ところかわって、舞台は庭園迷路へと移ります。

登場したのは、ジョンとショーンです。

ショーンの推理はビンゴでした。
一番下の小屋はすす取りの間だったのです。

部屋にも似た設備があるのなら、着替える必要はないじゃないかと語るジョン。
服もさっぱり、気分も爽快です。

普段は部屋にしかいなかったせいか“お披露目”を面白がっていますが、その様子はエミリコとそっくりです。
ケイト嬢を差し置いてしまっていますが、エミリコとジョンはかなり良いコンビではないでしょうか。

将来、庭ではしゃぐエミリコとジョンを、テラス越しにケイトとショーンが眺めながら、ケイトが「ショーンこそ、エミリコのことどう思っているの?」なんて言って、ショーンが慌てる……

そんな風景がつい浮かんでしまいました。(誰か描いて!)

まあそんな想像よりも解決しなければいけないことは、ごまんとありますけどね。

それを証左するかのように、早速二人の前に仕掛けが現れました。

地図にはない、回転扉。
仕掛けは簡単で、入口の鉄の棒を引き抜けば難なく回ります。

しかし問題は、出口側にも同じ鉄の棒が刺さっていることです。

これでは反対方向から誰かが来なくてはなりません。
そんなショーンの前に、ルウでもなく、ラムでもなく、エミリコでもない生き人形が姿を見せました。

リッキーです。

よりによって一番衝突を起こしている二人組。
何も起こらない筈がありません。

どうにかして相手をやり込めて、回転扉を通り抜けたい二人。

正直言って、不毛であります。
しかもジョンは生き人形同士の関係が知りたいからといって中立を宣言する有様です。

しかし結局のところ、エミリコのことが頭をよぎったショーンが折れました。
勝手にスコアを計上するジョンも自由すぎますが、完全に主人とエミリコに感化されていますね。
深夜の見廻りで、「“余計なことを…考えちゃだめだ”」と言っていたのが嘘のようです。

ジョンは第32話でツッコミを入れたショーンに対し、「いや…それがいい」と返していますが、生き人形について柔軟な考え方の持ち主のようです。
上位のシャドーが考える『忠誠』とは違う形の“『忠誠』像”がジョンの中にはあるのかも知れません。

ショーンはここでもジョンに一通りツッコミを入れると、同時に棒を抜いて扉を通ることになりました。

ところが、その時リッキーの背中にある鋏をショーンは目にしてしまいました。

ルウが持っていた筈の巨大鋏。
否が応にも、悪い予感が胸をよぎります。

もしや、リッキーはシャドー家の生き人形としての『忠誠』を貫いてしまったのでしょうか。
それとも何か、別の出来事があったのでしょうか。


此度の“お披露目”では、部屋の暮らしでは絶対に分からなかった各組の個性が鮮明に表れてきました。

そして、それを見て5組の新人達の将来を想像する謎の存在の吹き出しは、まるで漆黒の瞳のようで不気味です。

しかしそれ以上に、リッキーの冷たい視線の理由が気になって仕方がありません。