三者面談と言うと、教師と生徒と保護者の三者で行われるアレのことですね。
良くも悪くも学生時代の思い出が甦る方も多いでしょう。

そこで話される内容は、学業から交友関係・家庭環境や趣味性格など、今思えばよくもまあ、踏み込んだところまで話していたと思います。それだけ我が国の子供の成長において、学校という場の占める割合が大きいのかも知れません。近年ではそれが弊害を生んでいるなんて言うことは良く聞きますね。

大人になった今では、教師も生徒もメリットがないのだから、いい加減教科やクラブの分業化やスクールカウンセラーの本格的な活用を進めればいいのにと、ついつい思ってしまいます。
見聞きするのも辛いニュースはもうたくさんです。


さて、ちょっと愚痴が止みそうにないので話を戻します。

前話の第87話では、エドワードとこどもたちで密室の面談が行われました。姿立場は違えど、まるで三者面談のようです。

しかしそこで交わされた会話は、当然こどもたちのためではありません。エドワードの自分本位の謀略のために設けられた、言わば“検問”です。その拒否権は、こどもたちの棟の住人には与えられることはありませんでした。


その検問によって崩壊寸前に陥る第10班。

エドワードの策略 VS ケイトの統率力、という根競べが始まりました。


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エドワードの発言に目を見開き、やがて震えだすサラとミア。

物語は、いきなり彼女達の涙の理由から始まりました。


エドワードが語ったのは、サラが一番班の中で劣っているという、彼女達の自尊心を何よりも貶める内容でした。

しかもこの時、エドワードは班長になったケイトを引き合いに出しています。「大人になれない」「不出来なのはお前だ!」と告げられるに至って、とうとうサラとミアはセダンチェアから飛び出してしまいました。

大量の煤をまき散らしながら、一目散に部屋へと突っ走っていくサラとミア。ケイトの制止も聞かず、あっという間に走り去ってしまいました。

これまで見せたことのない二人の様子に、エミリコは心配と不安が入り混じった顔で見つめるのみです。


勢いよく部屋へ飛び込むと、サラは大声を上げながら暴れ始めました。部屋中のあらゆる物をなぎ倒し、絶望に打ちひしがれます。

きっと第20話でもサラは、こうやってミアの部屋で暴れていたのでしょう。あの時ミアの部屋は荒らされ、天井には煤つららができていました。あの時も今と同じく、部屋には煤が充満していたに違いありません。


しかし以前と違うのは、今回はミアまでもが悲しみに暮れていることです。

ミアの悲しみは、サラと同じく大人からの低評価にショックを受けているのか、はたまたこれから待ち受けているであろうサラの折檻に恐怖を感じているのか分かりませんが、とにかく彼女も頭を抱えて座り込んでしまいました。

或いは、これまでの描写からするとその両方かも知れません。第81話でもそうでしたが、今回の出来事がエミリコへの更なる悪感情へと繋がることは間違いないでしょう。エドワードの目論見通り、主人のサラも「ケイトがいなければ絶対うまく行っていたのよ!!」と当たり散らしました。


そして、癇癪起こすサラの前に落ちた一枚の紙。
この紙がさらにサラの感情を逆なでします。

ふいに落ちたその紙は、なんと婚姻の申請書でした。


ところがもっと驚く事実がここで判明します。

以前より取り沙汰されていたサラの婚姻相手。

その相手は、サラの同期であり、こどもたちの棟トップクラスの煤量を誇る、あのダグラスでした!


以前の私の考察は完全に外れていました。第67話でのケイトの推理は、ほんの少しではありましたが正解だったのです。


そしてもっと意外だったのが、挙句の果てにダグラスに振られていたことです。

確かに私も、なぜパトリックが読もうとしていた婚姻制度の本をサラが手にしたのか気になってはいました。婚姻を申請したことがあるのなら、サラにとって必要な本ではないからです。

しかし今回のお話で、すべての辻褄が合いました。

サラは恐らく、ケイトがジョンに言い寄られていることに危機感を強めたのでしょう。だから第66話でわざわざ婚姻制度の本を借りていたのです。時系列からすれば、ダグがミアをすす病にしていたのは第55話ですから矛盾は生じません。それどころか、ダグラスもダグも、サラとミアを恋愛対象と見做していないことは明らかです。

そんなダグラスの心を見抜けないまま、サラはその後婚姻を持ち掛けたのです。

第二次亡霊事件のダグの行動をサラが知っていたのかどうか分かりませんが、仮に知らなかったとしても、破談するのは明らかだったように思います。
(そもそも知っていて話を持ち掛けたとしたら、それはそれでサラの行動は奇行と言わざるを得ません)

ですがプライドの高いサラは、自分自身は何も悪くないと言わんばかりに怒鳴り散らします。一連の台詞を客観的に見れば、全てを人のせいにするばかりでなく、同期や班員を踏み台にしか見ていないサラ自身にこそ問題があるのですが、彼女の怒りは止むことはありませんでした。


場面は再び、セダンチェアが去っていった廊下へと移ります。
立ちすくむケイトとエミリコに、ルイーズとルウが近づいてきました。

ルイーズはケイトの耳に顔を寄せると、こっそりとある事実を打ち明けます。


「さっきのエドワードのシャドーじゃなかったよっ」


話の内容とは全然関係ないですが、こうやってケイトに情報を教えてくれるルイーズは可愛いですね。ルイーズが単にお話し好きなだけなのか、ルイーズの中で同期会がまだ継続中なのか、洗脳が薄まりつつあるだけなのか判別しがたいですが、第10班のシャドーの癒し枠になりつつあるのが嬉しいです。

さて、ルイーズの先の発言ですが、その根拠は「声」でした。それどころかルイーズはお年寄りとまで言い放ちます。

ルイーズからそのことを聞いたケイトは混乱します。視察自体がエドワードでなく、他の大人の目論見ではないかとまで疑います。一応エドワードのすす能力ではないかと疑いますが、それでも確信にまでは至りませんでした。

こんなケイトの様子を見てしまうと、バーバラにはすす珈琲の事はともかくとして、エドワードの視察についてケイトに相談して欲しかったですね。

それならよりイザベルとミラベルに念押しできた上に、ケイトならエドワードに対し逆に罠を仕掛ける事だってできた筈です。バーバラも余計な心労を増やさずに済んだでしょうし、少し残念でした。


しかし今現在の星つきにそんなことを考えている余裕はありませんでした。バーバラが発作で倒れこむのを見て、一対の漢がケイトににじり寄ります。

ベンジャミンとベンです。

ケイトに対し、イザベルとミラベルがすす珈琲瓶の破壊について口外していないか確認しろと命令しました。バーバラの心労をいち早く取り除くため、ケイトに有無を言わさないよう威圧するが如くです。

ベンジャミンの話を聞き、確かにそれは大変だとケイトも思いました。


ただこの時の「バレてしまえばどんな罰があるか分からない…!」というケイトの台詞ですが、今回の第88話を読み終わったら、是非もう一度読んでみて下さい。

一見するとケイトも双子を疑い、それによって罰を受けるのを恐れているように見えますが、その実態は全く真逆でした。


ベンジャミンとケイトの会話を柱の影で聞いていたイザベルとミラベルとベルでしたが、ケイトが振り返ると走り去ってしまいました。サラの時と同じく、ケイトの制止も叶わず庭へと消えていきました。

ところが、流石にケイトも二度も同じ失敗は繰り返しません。

庭園で双子を見つけ出すと、パーゴラの下で俯き座る「三人」の横にそっと座りました。「三人」は呆気にとられています。


これまでのイザベル達ならば、この時点でケイトを無視して去ってもおかしくなかったでしょう。すす能力を使って、修練の間で見せたような態度を取ることだってあり得た筈です。

ただ今までのケイトの姿を見てきたせいか、それとも弱気になっているのか、幼い班長に心の内を明かすように叫びました。


「……ベンジャミンは嫌いよ!」


何を言っても信じないんだから、と零す二人と一人。

それはきっと経験から裏打ちされたものでしょう。珈琲瓶を割ってしまった後、どんなに無実を訴えてもベンジャミンが聞き入れなかったことは、容易に想像がつきます。

それによって、もう一人のベルを失うという辛さを味わった彼女達の表情は、皮肉にもかつての冷徹な表情とは違った、人間らしい表情でした。


直後にケイトに向けた表情も同じです。

ケイトは双子を受け入れないダグラスや第9班に対して、懸命にイザベル達を庇っていました。

ベルの顔は、『そんな貴女でも私たちの事を疑っているのでしょう?』と言いたげな表情です。どうせ信じて貰えないと拗ねているようにも見えます。なんだかんだ言って、イザベル達はケイトを信頼しつつあったのかも知れません。それがこんなことで裏切られるなら、いっそ自分達から切り出した方がマシです。

ベルは主人達がそうしたように、自身達の事を疑っているであろうケイトを睨みました。


ところが、ケイトから出てきた言葉はイザベル達を心配する一言だけでした。

ケイトは、大人から処分を言い渡されると震えていたイザベル達を誰よりも案じていたのです。あの「どんな罰があるかわからない……!」というケイトの焦りは、班長である自分自身ではなくイザベル達に向けられていた言葉でした。

マリーローズ達との戦いの後でも彼女達を救おうとしていたように、ケイトは自身が窮地に陥りそうでも自分本位になりません。それこそがケイトの哲学であり、こどもたち全員を助けたいという何よりの願いだからです。

ケイトはイザベル達に微笑むと、「班員を信じると決めた」と言い切りました。隣のエミリコももちろん同じ“顔”です。


徐々に育まれていたケイトへの信頼。
事ここに至り、イザベル達のケイトへの疑念は完全に氷解しました。後に残ったのは春のような温かい日差しと、すっかり雪解けを迎えたような表情の三人でした。

エドワードの謀略をものともせず、逆にイザベル達の信頼を勝ち取ることに成功したケイトは、次の攻略対象へと向かうべく館へと歩を進めました。その相手とはサラとミアです。程なくして彼女達の部屋を誰かがノックします。


ところがそのノックの主は、残念ながらケイトではありませんでした。あと一歩のところでエドワードに及ばなかったのです。

その人物とはダグラスです。サラもケイトだと思っていたのか、思いがけない訪問相手に驚きます。(ケイトが部屋に来てくれると思っていたとすれば、サラも可愛く見えてきますね)


女子棟に侵入した上に、振った相手の元へわざわざ来たダグラスにサラは苛立ち、彼の弱点である髪目がけて攻撃します。攻撃と言ってもすす能力ではなく、直接手で払っています。その前の会話からして、サラにはすす能力がないことがほぼ判明しました。言い澱むダグラスの態度が何よりの証拠です。


しかし何も、ダグラスはサラに怒られに来たわけではありません。もうちょっとこの二人の喧嘩を見ていたかったのですが、ダグラスの「いい話を持ってきてやった」という台詞と意外な事実にサラは大人しくなりました。

意外な事実とは、ダグラスもセダンチェアで面談を受けた時に酷いことを言われたというのです。
その発言にサラは意味不明と言った様子です。

対してダグラスは、髪を直しながらその意味についてこう言いました。


「俺(ダグラス)たちはエドワード様に選ばれたんだ」


なぜ面談相手がエドワードだと分かったのかや、それをエドワード自身がダグラスに告げたのか、など分からないことは沢山ありますが、とにかくダグラスによればあの面談は「試されていただけ」だそうです。もしそれが本当なら、流石第1班の班長です。

ただ読んでいる方も、サラとミアと同じく、何が何やらと言った感じです。果たしてダグラスは何をどこまでエドワードから聞いたのでしょうか?そして本当にあの人物はエドワードで良いのでしょうか?


何も知らないままケイトとエミリコは廊下を進んでいます。

このままだと、第84話でイザベル達とケイトの会話を覗いていたダグラスのように、ダグラスとサラのやり取りをケイトは目撃してしまうかも知れません。

もしそうなった時、ケイトはイザベル達にしたように、果たしてサラを班員として信じ続けることができるのでしょうか。

同期会の時の『ダグラスとサラが手を組む』という推理が本当になりつつある今。

ケイト班長の指導者としての器量が、いよいよ本格的に試されそうです。