単行本第7巻は、第75話から第86話まで収録されていました。
ということは勘の良い方ならお気付きでしょう。

そうです、今回のお話は8巻最後のエピソードになる確率が非常に高いのです!

単行本最後のエピソードと言いますと、以下の7話ですね。

・1巻12話→エミリコの輝かしい笑顔
・2巻24話→ケイトとエミリコの美しきダンスシーン
・3巻36話→初めて明かされる「大人」の正体
・4巻50話→ケイト、反撃開始
・5巻62話→壮大な夜空
・6巻74話→死闘後の鮮やかな夜明け
・7巻86話→微笑ましいエミリコ班の面々

振り返るといずれも印象深いエピソードばかりです。各巻のフィナーレを飾るに相応しい回が勢揃いしていますね。

書いていて気付いたのですが、5巻と6巻のラストは見事に好対照です。読んでいる時は全然気が付きませんでしたが、読み込んでいるとこんな偶然(もしかしたら先生の計算内!?)を発見できるのも、シャドーハウスならではでしょうか。


ところで各巻のラストエピソードについて、もう一つ取り上げたいことがあります。

それは「大人」、とりわけエドワード絡みの話が多いことです。

2巻・3巻・7巻がそうですね。6巻も直後の75話でエドワードが登場しますので、間接的に関わっていると言えます。

とにかく、単行本の最後の回はエドワードの影がちらつきます。
エドワードファンにとっては必見ですね!(シャドーハウスにおけるエドワードファンの占める割合はどのくらいか分かりませんけども。でも登場人物は100人以上いるわけですから、単純計算で1%超えていれば十分に健闘です)


そして今回の第98話。

例によって、あの男の存在がストーリーに大きく関わります。

エドワードの罠が、徐々にケイトを追い詰め始めました。


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扉絵は、アイリーンのすす能力・すすバトです。

第29話・37話・42話で披露されていますね。全てお披露目中です。庭園にいるエドワードへ、重鎮の伝言や緊急情報を伝達するのに用いられていました。

そういえば第71話でアイリーンがトマスと一触即発になった時、SNSでは『アイリーンはすすバトでどうやってトマスと喧嘩するつもりだったのだろう?』という疑問が何度か発信されていましたが、多分すすバト以外にもすす能力があるのだと思います。恐らく彼女も物理系のすす能力と考えられますが、真の能力については本編の描写を待つことにいたしましょう。


物語は、館の庭から始まります。

そこで2対のこどもが話をしていました。
サラ組とダグラス組です。

第96話で喜びの会が終わった後、ミアとダグはアイコンタクトをしていましたが、恐らく喜びの会での異常事態を主人に知らせたのでしょう。話の内容は、まさにその件でした。


サラはというと、早速「エドワード様が危惧していた通りね」と息巻きます。続いて、これで星つき達は反乱分子で間違いないと声を荒げました。

ミアの方も完璧な“顔”です。これまで以上の憎しみに満ちた顔で、偉大なるおじい様を裏切る行為に出た星つきを糾弾します。その表情は、完全にサラとシンクロしていました。


そんなサラを冷静に見やるダグラス。何を考えているのかは分かりません。

ただ、もしかしたら熱くなるサラの方を『危惧』していたのかも知れません。彼はとりあえず、一つの提案をしました。

「少し様子見をするか?」

確かに状況証拠としては、星つきが反乱分子という推測も成り立ちます。しかし、これはあくまで推測の域を出ません。まだ明らかに確定とは言えないのです。

おまけに二人とも、前話でリッキーに姿を見られています。ならばダグラスの提案は妥当なものでしょう。ここは慎重にいくべきです。

ところが、サラはいとも簡単に却下しました。曰く、「生温い」だそうです。
そして「エドワード様」の推測は全て正しいと、返す刀で次のターゲットをケイトに定めました。


ここからサラは早速行動を起こします。語るまでもなくケイトはサラと同じ班ですから、接触する方法は幾らでもあります。
サラは、ケイトがルイーズを誘って部屋の外に出たのを確認すると、ケイトを試そうと2対についていきました。


ここでのサラのプランはこうです。

①ケイトとルイーズが二人きりで部屋を出るのを確認する。
↓
②2対は良からぬ会話、或いは秘密の会話をする可能性があるので尾行する。
↓
③2対が話し始めたら、班の集まる時間を勘違いしたフリをして合流。
↓
④勘違いしていたフリに信憑性を出すため、イザベルとミラベルも誘う。
↓
⑤不意打ちでケイトを揺さぶり、反応を確かめる


よく考えたものだと思います。確かにここでケイトがボロを出せば、企みは成功です。また、例えボロを出さなかったとしても何らかの収穫はあるでしょう。サラは計画通り、ケイトとルイーズが話をしている現場にイザベル達と一緒に向かいました。


サロンで何やら話をしているケイトとルイーズ。

そこに、サラが姿を現します。計画通り『班の集まりの時間を勘違いした作戦』です。ミアはホッとした表情を浮かべ、サラは「良かったわ」と安堵しました。計画は順調です。

おまけに、想定通り突然の事態にケイトは戸惑います。何とも言えない曖昧な返事をしました。それを見てサラは畳みかけるように「ケイトとルイーズだけで話したいことがあったのね」と煽ります。見事に作戦は成功しました。


ただ、相手はケイトです。彼女にこんな企みは通じません。寧ろサラの煽りがケイトにとって幸いしたのでしょう、一旦部屋に帰ろうとするサラ達を引き留めました。ケイトは慌てた表情で、班員に内緒にするような内容ではないと、サラやイザベル達を交えて語り始めました。


話の内容は「同期会」についてです。このことについて相談したいと、ケイトは先輩シャドーのサラとイザベル・ミラベルにその狙いを明かします。同期との交流を深めるために集まりたいが悩んでいると打ち明けました。


しかし、一見不自然には見えない「同期会」という話を聞いてサラは違和感を覚えます。

なぜなら、本来こどもたちの棟において「同期」というのは重要と見做されていないからです。それよりも重視されるのは「班」です。この「班」という括りについては、イザベル・ミラベルの台詞によって館の公認ルールであることが分かりました。逆にそれ以外の活動は推奨されないとあって、サラはケイトの真意を測りかねます。


ですが、“エドワード様”のことを信じ切っているサラです。ケイトの同期会の目的を「ルイーズとパトリックをこれから仲間に引き入れようとしている」と断定すると、同期会の開催を悩むケイトの背中を押しました。

「ルールに縛られているだけではつまらないわ」

今まで見せなかったような笑顔を浮かべる“サラ”。

しかもこの台詞は、まさに前話でケイトがリッキーを説得しようとしていた時の発言とほぼ同じです。ケイトの支えになりたいと語るサラを見て、エミリコは嬉しそうな顔をしました。恐らく、ケイトも同じ心境だったことでしょう。一気に場の空気が明るくなりました。


ここからはダグラスを肴に一通り盛り上がった後、サラは同期会の開催場所についてアドバイスします。

なぜなら、時間外に女子が男子棟に侵入すると罰せられるからです。
それを聞いてケイトは、パトリックの部屋で行う予定だったのにどうしようと悩み始めました。

前回同期会を断ったパトリックの部屋をなぜ使用する予定なのかは判然としませんが、ここは一旦置いておきましょう。
重要なのはサラの狙いです。

実は、サラはアドバイスのフリをしてケイトを誘導していたのです。


男子棟は無理、メインハウスは無理、共有部ならOK。

こう助言したサラは、ケイトが感謝しながら去ったのを確認すると同期会の開催場所を推理し、唯一それに適した場所を導き出しました。

「ウェストウイングの2階バルコニー!」

偉大なるおじい様に対して何か企てようものなら、確実に証拠を得られるに違いないとサラはほくそ笑みます。いよいよケイトに罠が仕掛けられました。
サラからすれば、あとは夜が更けるのを待つだけです。


勝利を確信したサラは、部屋に戻るとうきうきとした様子で手紙を書き始めました。

宛先は愛しの「エドワード様」。手紙に自分の香水を掛け、自己PRも十分です。思い人から言われた通り部屋の窓を全開にし、今か今かと連絡を待っていました。


サラが上機嫌に喋っていると、窓の外に黒い鳥が現れます。まだ遠くにいて姿は判然としません。

ところが、その鳥は勢いよくサラの部屋の窓に飛び込むと、サラとミアを掠めて奥へと進み、テーブルにぶつかるや否や大きな奇声を上げて破裂しました。

テーブルに移されたエドワードからの伝言。あの鳥は、扉絵で紹介されていたすすバトでした。

エドワードはすすバトの仕組みについてサラに簡単に説明すると、もう1匹すすバトを寄こすのでそこに伝言を吹き込めと命じます。もちろん、最後に「期待しているぞ」という“甘言”も忘れません。

サラは新しいすす能力を目にしたことで、増々エドワードへの親愛の情を強くしました。手紙を渡せないのを残念がる様子は年頃の女の子らしいですが、相手が相手なだけに見ているこちらとしては複雑です。


ですが、サラに我々の気持ちは関係ありません。

サラはすすバトの前でエドワードへのメッセージを語り始めると、進み隠さずこれまでの経緯を吹き込みました。最後に「確実な証拠を掴んでいるでしょう」と語る時には、両手を胸にあてて、いかにも思い人が目の前にいるかのような仕草です。隣のミアも全く同じ表情をしています。ケイトの身辺に危機が押し寄せるまで、もう猶予はないでしょう。



今話の冒頭、サラ組とダグラス組が会話していたのは、第88話でケイトとイザベル・ミラベルが話をしていたパーゴラでした。

あの時、疑心暗鬼に陥ったイザベルとミラベルとベルに対し「それでも班員を信じると決めたの」と明言していたケイト。

ところが、それと同じ場所でその班員がケイトに憎しみを抱き、自らの敵だと断じ、とうとう滅ぼさんと決意するまでに至ってしまいました


ケイトは本当に、班員を信じ切ることができるのでしょうか?
そして自分の哲学を否定せずに、これからも歩み続けることができるのでしょうか?

ケイトが救いたいと語る「こどもたち」の中にミアがいることなど、きっとサラは夢にも思っていないことでしょう。

そして淀みない笑顔で班員を信頼するケイトのことに気が付かないまま、館が仕掛けた罠の脅威にサラが直面している可能性は非常に高いです。


マリーローズの言葉を借りるなら、「憧れた大人の世界」が羨ましいものではないことに、早くサラも気付いて欲しいと願わずにはいられません。