本誌を御覧の方はご存じかと思いますが、シャドーハウスの単行本累計売上が140万部を突破したとのことです。

昨年、アニメが終了した頃に100万部を超えたというアナウンスがありましたが、そうすると半年弱で40万部以上積み上げたわけですね。第50話公開時の大ブレイクの際は全巻が重版されていましたが、アニメ化の影響力もやっぱり凄いです。

今年は、単行本10~12巻の発売、そして7月にはアニメ二期が放映されますので、このままいくと年内には200万部に迫ることでしょう。

いや、アニメの放映真っ最中に11巻が発売されることを考えると、もっといくかも知れませんね。それこそ300万部だって夢ではないはずです。

購入特典も気になりますし、アニメに伴うコラボやイベントも楽しみですね。今年もシャドーハウス漬けの毎日になりそうです。


ところで単行本の売り上げの推移ですが、100万部突破以降は10万部刻みでお知らせがあったのでちょっと調べてみました。
ざっと以下の通りです。


令和3年
  8月26日  100万部突破(第107話公開)
  9月  2日  110万部突破(第108話公開)
  9月  9日  120万部突破(第109話公開)
11月25日  130万部突破(第117話公開)
令和4年
 1月27日   140万部突破(第121話公開)



何だか不思議な売り上げ推移ですね。

アニメ放映開始が4月、単行本8巻の発売が6月、アニメ放映の終了が7月、二期発表が9月、単行本9巻の発売が11月でしたが、こう見てみると売上げの勢いが最も強かったのは何にもなかった8月下旬頃ということになります。どういうこっちゃねん……。

まあ“類似作品不在”のシャドーハウスですし、売上推移も“類似作品不在”ということにしときましょう!

さてそんなシャドーハウスですが、回想編が終わったことで、またもやジャンルが変わってきました。

トマスの宣言によって混乱状態になったこどもたちの棟。

ミステリー&サスペンスな展開が始まりました。
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突然何者かに襲撃されたパトリックとリッキー。

煤煙が晴れると、そこにはびしょ濡れで倒れている二人がいました。

彼らが浸かっているのは温室の建物の脇にある水路でしょうか。或いは、細長いこじんまりとした池かも知れません。

ただ、いずれにせよ誰かに突き落とされたことは間違いありません。何が起きたのかと問うパトリックに、リッキーはすす能力によって襲われたと説明しました。

しかし頭は冷静であるものの、リッキーはどこか怪我してしまったようです。高いところから落ちた上に、さらにパトリックの下敷きになったのですから当然でしょう。パトリックは慌てて身体を起こそうとするものの、狭いスペースで満足に動くこともできず、コミカルな体勢のまま主従揃ってジタバタするのみでした。


そんな二人に、助けがやって来ました。温室仲間のマーガレットです。

たまたま通りかかったのでしょうか。珍妙な場所で倒れているパトリックとリッキーを見るや、すぐさま駆け寄って手を差し伸べてくれました。

ところでこの時のマーガレットとマギーですが、本当に美少女ですね。駆け寄る直前の心配そうな表情は、第66話の時と違って純粋な表情に見えます。ソウマトウ先生の事前告知でもこのシーンは紹介されていたしたが、こんなシチュエーションとは思いもしませんでした。


ただ手を貸したはいいものの、そこはやはり女の子です。ずぶ濡れになった少年を持ち上げるだけの力はなかったのでしょう。マーガレット組も水の中に落ちてしまいます。
(ルイーズとルウなら難なく引き上げられたかも)

落ちた先は、もちろん位置的にパトリックとリッキーの上です。図らずも、或いは図っていたかも知れませんが、マーガレットは体を寄せてパトリックと目を合わせました。まるで少女漫画のようなシーンです。見ているこちらまでじれったくなってきますね。


しかし、ここはシャドーハウス。こんないじらしい姿を見せているマーガレットですが、思い返せば第66話では含みのある行動をしていました。

「幸せな結婚」という花言葉を持つ白いピオニーをパトリックに渡していたからです。

あの場面を踏まえると、一連のマーガレットの行動には裏があるのではないかと私には思えてきました。パトリック達を襲ったのは彼女達ではないにせよ、マーガレットの照準はパトリックにロックオンされているのは確実でしょう。

それを証左するかのように、マーガレットはパトリックを試すかのような発言をこの後もしていきました。


まずはじめは、すす能力を使おうとしていたパトリックを見てしまったという告白です。

前回のパトリックは、ジョウロをすす能力で引き寄せるためにポーズを取っていました。その様子をマーガレットは見ていたというのです。パトリックにしてみれば知られたくないであろう秘密を見てしまったマーガレットは、煤を出しながらそのことについて謝りました。


次いで彼女は、パトリックが無能力者であることは誰にも言わないと告げます。

なぜなら、マーガレット自身も無能力者だったからです。

そう語る彼女はもの悲しそうに俯きました。
不安からか、マーガレットからぼんやりと煤が昇っています。


そんな中、パトリックは話を戻しました。

そもそもパトリック達がこんな目にあったのは、前回ラストのすす能力の襲撃があったからです。パトリックはマーガレットに、怪しい者がいなかったかどうか尋ねました。


ところが、マーガレットは何も分からないと言います。どうやら彼女達も、急に煤が現れたようにしか見えなかったそうです。残念ながら、犯人の手掛かりになるようなものは何もありませんでした。


しかし、マーガレット不安はそれだけではありませんでした。彼女は煤を出しながら、あることが怖いと語ります。

それは「無能力者狩り」です。

トマスの暴露によって、否応なしにこどもたちの棟は分裂しました。
「すす能力者」と「無能力者」です。

従来とは違うヒエラルキーができたことで、「無能力者」のマーガレットは脅威を感じていたのです。


そして三つ目。彼女はパトリックにあるお願いをしました。

もしもすす能力が開花したら、マーガレットを守ってくれるかと問うたのです。

それに対し、弱いものを狙うやつは許さないと、パトリックは即座に明言しました。流石正義と仁義に厚いパトリックです。彼にとって、貴族としてごく当然のことを言ったまででしょう。

それを聞くと、ようやくマーガレットから煤が止まりました。マギーも安心したかのような表情を浮かべます。

マーガレットは改めてパトリックの手を握りなおすと、着替えに帰らなくてはいけないとその場を後にしました。こうして二対の邂逅は終わりました。


ただ、この時パトリックは何かを感じ取ったようです。
マーガレットが握っていた手を見つめると、暫しの間沈黙します。

マーガレットの手から何かを感じ取ったのか。

それとも、お披露目の際に箱越しで感じたエミリコの手のぬくもりを思い出したのか。

握りしめた手が当てられた胸の中で、彼が何を思ったのかはまだ分からないままです。


読者にとって、パトリックとエミリコとマーガレットという三角関係(リッキーとルウとマギーの三角関係の可能性もあるかも)を想起させるような出来事が続きましたが、そんな中こどもたちの棟では異常事態が起こっていました。

ウェストウイングに響く叫び声がそれを告げます。



ウェストウィングといえば、メインハウスに次ぐこどもたちの棟の建物です。
男子部屋と女子部屋に分かれており、いわばこどもたちの宿舎ともいえるでしょう。

しかし、本来であればこどもたちが集まる場所ではないこの建物に、10対以上のこどもたちがいました。それどころかざわついており、なんだか険悪な雰囲気です。

そんな修羅場に駆け付けたパトリックとリッキー。
理由を聞くよりも早く、とある二対を見て状況を察しました。


そこには、パトリックよりも一つ上の先輩(第59話でエミリコのことを褒めていた少年シャドー)が苦痛の表情で座り込んでいたからです。

そばかすの少年は主従ともに切り付けられた腕を抑え、金髪の少年は地面に手を付け、生き人形はそれを心配そうに見ています。

直後に彼らはすす能力に襲われたと叫びますが、言わずともその場の誰もが「無能力者狩り」だと確信していました。

疑心暗鬼に陥った少年2対の班長、そしてダグラス班のジェームスに至っては、このまま喧嘩寸前になりそうな気配です。

マーガレットだけではなく、誰もがトマスの暴挙にナーバスになっていました。


そしてこどもたちにとって最も不運だったのが、この場を収めるものが誰もいなかったことです。

騒ぎを聞きつけてバーバラ・ベンジャミン・スザンナの星つき3対が鎮圧に訪れるものの、第84話の時と違ってバーバラは何もすることができませんでした。


理由は簡単です。

トマスのように、誰もが一目で慄くようなすす能力を、3対は持っていないからです。


無能力者狩りを目にしたこの場のこどもたちは、星つきなら何とかしてくれるだろうと期待していたことと思います。

実際にショートカットの少女班長はバーバラにすす能力の開示の判断を仰いでいますし、襲撃された金髪の少年はバーバラに何とかしてほしいと訴えています。

更に、襲撃された二対の班長は今こそ星つきが力を示すべきだと迫りました。

力あるものが上位に立つシャドーハウスにおいて、彼らは真っ当な期待を星つきにしていたのです。


しかし、ベンジャミンは強硬に反対しました。

バーバラはすす量が多いだけで、すす能力を持っていないからです。

あの莫大なすす量そのものが「すす能力」と言えなくもないですが、いずれにせよ彼女はすすをコントロールすることができません。
だからこそ、発作を起こすと修練の間に駆け込んでいたのです。


ただ、その行動が裏目に出ます。

先ほどのショートカットの少女は、一連の星つきの態度と修練の間でのバーバラの行動を鑑みて、バーバラの真の姿を暴いてしまいました。


“すす能力のない人物が棟のトップだった”


班長であれば当然持っている能力を、星つき、それもその中心人物が持っていないとあれば正当性が疑われます。

このやり取りを聞いていたギルバートは、すかさずバーバラにはトップの資格がないと口にしました。


エリートである救護班のメンバーからの反意にスザンナは動揺しました。
ましてや彼は、自身の班員です。スザンナにとってはショックだったことでしょう。

ただ、彼は第58話や67話を見れば分かる通り、非常に合理的な性格をしています。

スザンナが咎めようとしたことも気にせず、星つきは保身しているのではないかとまで発言しました。


棟の有力者からの疑義に、その場にいたこどもたちもヒートアップします。

しまいには疑義の目は確信へと変わり、バーバラに対してすす能力を見せろと全員が囃し立て始めました。

目を引くような圧倒的なすす能力を持たないベンジャミンもスザンナも、こうなってはもうどうしようもありませんでした。


ただ、この場には“本当の貴族”がいました。

パトリックです。


自分自身も無能力者なのに、それどころか新人なのに、班長勢や有力者、そして全員が年長者の中、果敢にバーバラの前に立って庇います。

一瞬で「見せろ!」コールは鳴りやみました。
バーバラからも煤が消えます。


果たしてパトリックはこの場をどう乗り越えるのか。
そしてそれは、この場にいる誰もが納得できる解決策となるのか。


…ただ、それは少し置いておきましょう。

それよりも、ラストのパトリックについて語らせて下さい。


それは、パトリックのこの勇気ある行動こそが、まさに“貴族”だということです。

「弱いものを狙うやつは許さない!」

彼は数刻前、こうマーガレットに告げていました。その台詞を身を以って示した彼の姿は、決して「貴族のまねごと」ではないでしょう。


不安に心を掻き立てられ、こどもたちの誰もが愚衆に成り下がりそうな情勢の中で差し込んだ、一つの光。

お披露目でパトリックは、エミリコに救われていました。

ならば今度はパトリックです。

エミリコによって灯された心の明かりを、とうとうパトリックがバーバラに灯す番がやってまいりました。