民主制の歴史は長いです。
近代においては、一般的に専制政治から民主制へと移行する例が多いため、民主主義の成立は最近になってからという風に受け取られる場合も多々あります(私も子供の頃はそうでした)。
ところがそうではありません。
制度上はさておき、その思想哲学が生まれたのは古代ギリシャ・ローマ時代にまで遡るのです。

こちらの人物は、古代アテナイ(アテネ)の政治家・軍人のペリクレスです。
写真は以前イタリアに行った時に、バチカン博物館内に展示してあった彫刻を撮影したものです。(前回といい、結構イタリアの写真ブログで取り上げること多いな…)
彼はアテナイの発展に寄与したことで有名ですが、ペリクレスが現在まで名を馳せているのは、「民主主義」の原点といえる演説をしたことが理由として大きく挙げられます。
詳しくは「ペリクレスの葬送演説」で検索して頂くとして、平たく説明しますとこの演説が称賛されるのは「自立」「平等」「自由」の必要性に言及した点と、「市民」の役割を明確にした点が挙げられます。
特に、政治思想や言論の自由を法の下に認め、少数の権力者による政治の独占を排するとした部分は、民主制の根幹と言える原則です。
反面、政治に参加する市民の義務として、共同体(ポリス)の防衛や公に尽くす義務も強調しています。
また、政治参加する者の前提として、市民自身にそれを判断するだけの知性と品性を求めている点も重要です。
一定以上の知識・見識・常識を持った集団でなければ、ただの「多数決」によって間違った方向に進んでしまう危険性があるからです。
生まれた時から民主主義とその権利を有している我が国からすれば、実に耳が痛い指摘です。それだけ「民主制」とは個人と集団の鍛錬が必要な制度なのです。それがなければ、誤った判断による破滅、或いは少数の専制政へと取って代わられてしまうことは歴史が証明しているところです。
さて、では翻ってシャドーハウスのこどもたちの棟はどうでしょうか?
こどもたちの棟では、これまで「星つき」という4対の指導者グループによって統治されていました。イコール、専制政治と言ってもよいでしょう。その中でこどもたちは「余計なことを考えてはいけない」という掟もあって、表面上はつつがなく過ごしてきました。
しかし、ケイトとエミリコ、そして同期達の活躍により、こどもたちの洗脳は薄れ自ら物事を判断できるようになりました。
加えて「星つき」達もこれまでの体制に疑問を持ち、改革の必要性を強く認識し始めました。
つまり、「民主制」を実施しうるだけの土壌がまさに整い始めたのです。
此度の物語では、その集大成と言える象徴的な出来事が描かれました。
こどもたちの棟、いやシャドーハウスの歴史において初の民主的なリーダーが誕生しました。
近代においては、一般的に専制政治から民主制へと移行する例が多いため、民主主義の成立は最近になってからという風に受け取られる場合も多々あります(私も子供の頃はそうでした)。
ところがそうではありません。
制度上はさておき、その思想哲学が生まれたのは古代ギリシャ・ローマ時代にまで遡るのです。

こちらの人物は、古代アテナイ(アテネ)の政治家・軍人のペリクレスです。
写真は以前イタリアに行った時に、バチカン博物館内に展示してあった彫刻を撮影したものです。(前回といい、結構イタリアの写真ブログで取り上げること多いな…)
彼はアテナイの発展に寄与したことで有名ですが、ペリクレスが現在まで名を馳せているのは、「民主主義」の原点といえる演説をしたことが理由として大きく挙げられます。
詳しくは「ペリクレスの葬送演説」で検索して頂くとして、平たく説明しますとこの演説が称賛されるのは「自立」「平等」「自由」の必要性に言及した点と、「市民」の役割を明確にした点が挙げられます。
特に、政治思想や言論の自由を法の下に認め、少数の権力者による政治の独占を排するとした部分は、民主制の根幹と言える原則です。
反面、政治に参加する市民の義務として、共同体(ポリス)の防衛や公に尽くす義務も強調しています。
また、政治参加する者の前提として、市民自身にそれを判断するだけの知性と品性を求めている点も重要です。
一定以上の知識・見識・常識を持った集団でなければ、ただの「多数決」によって間違った方向に進んでしまう危険性があるからです。
生まれた時から民主主義とその権利を有している我が国からすれば、実に耳が痛い指摘です。それだけ「民主制」とは個人と集団の鍛錬が必要な制度なのです。それがなければ、誤った判断による破滅、或いは少数の専制政へと取って代わられてしまうことは歴史が証明しているところです。
さて、では翻ってシャドーハウスのこどもたちの棟はどうでしょうか?
こどもたちの棟では、これまで「星つき」という4対の指導者グループによって統治されていました。イコール、専制政治と言ってもよいでしょう。その中でこどもたちは「余計なことを考えてはいけない」という掟もあって、表面上はつつがなく過ごしてきました。
しかし、ケイトとエミリコ、そして同期達の活躍により、こどもたちの洗脳は薄れ自ら物事を判断できるようになりました。
加えて「星つき」達もこれまでの体制に疑問を持ち、改革の必要性を強く認識し始めました。
つまり、「民主制」を実施しうるだけの土壌がまさに整い始めたのです。
此度の物語では、その集大成と言える象徴的な出来事が描かれました。
こどもたちの棟、いやシャドーハウスの歴史において初の民主的なリーダーが誕生しました。
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久々にエミリコの「考えないノート」がお目見えしました。
最後に登場したのはいつだったでしょうか。恐らく、第81話でケイトが班長に就任したことをエミリコが書き込んでいた時以来かも知れません。改めて読み返してみて、もうそんな前なのかと驚きました。
さて、この「考えないノート」
エミリコのたわいもないアイディアから生まれたアイテムですが、実に物語の重要な場面で登場していますね。
ざっと見ても、お披露目前夜の21話、ケイトがエミリコを取り戻そうと奮闘した47話、第二次亡霊事件の捜査が始まった58話、そして前述の81話と、物語の動くタイミングで「考えないノート」が大活躍です。
既にアプリのコメント欄やSNSでも仰っている方は多いですが、ひょっとしたらシャドーハウスの物語の最後はこのノートの記録から語られるかも知れません。かなり将来の話になりますが、そんな風に夢想したくなる展開ですね。
まあそれは置いておきましょう。
「考えないノート」を読み返すエミリコですが、彼女はとあるページを見ると手を止めました。エミリコが感慨深げに眺めているのは、指を上に掲げる自身の落書きです。
お披露目前夜にエミリコが初めて立てた、「星つき」という目標。
最初はエミリコ一人だけの目標でしたが、それは第53話で主従が共に目指す道へと変わり、遂に悲願達成まであと一歩のところまでこぎ着けました。
思えば、53話当時はまだ第二次亡霊事件さえ起きておりません。
にも関わらず、数章の後に語られる大目標がこの時点で明言されていたとは驚きです。流石ソウマトウ先生です。
ひょっとしたら、丹念に読めば今描かれているストーリーの中にも後々クローズアップされる出来事が見つかるかも知れませんね。こんな風に物語の構成を楽しむことができるのもシャドーハウスの魅力であります。
そして構成といえば、何よりも強調したいのが本エピソードの推移です。
全体的には、エミリコが「考えないノート」に記述していく内容がモノローグ形式で語られていくわけですが、その中で現星つきの自主退陣、投票という方法でのリーダー選出、こどもたちの様子が描かれていきます。
加えて、エミリコのモノローグで足りない部分はこどもたちの会話で補われており、各々の個性豊かなやり取りが明らかになっています。
様々な顔を見せる、エリザベスとロレッタ、ウィリアムとヘンリー、イザベルミラベルとジョージ&ニコラス、サラ、ダクラス班、ギルバート、バートラムとエヴリン、オリバーとリディア、アンナとジェレマイア、ルイーズとベンジャミン、パトリックとマーガレット、ジョンとスザンナ……
後半になるにつれて男女のやり取りが多くなったせいか、つい読んでいる途中で数年前に流行った「ファイナルファンタジー現象」を思い出してしまいました。いやいや、シャドーハウスではありえないか……。
すいません、ちょっと横道に逸れましたね。
ただここで注目したいのは、本エピソードの半分以上が過ぎてもケイトの姿が描かれていないことです。
これまでの演出を見た限りではケイトが星つきになったのは間違いないでしょう。なぜなら、今まで作中で登場したこどもたちのほぼ全員がこのエピソードで登場しているからです。
ならば消去法で、ケイトが星つきになった可能性は非常に高いと言えます。
ですが、それはこどもたちの様子からそう推測されるだけのことです。残り5ページを切っても彼女の立場について明確な描写は全くないのです。
しかし、それもそのはずです。
それが読者にはっきりと明かされたのは、図らずもエミリコと同じタイミングだったからです。
部屋に一人でいるエミリコに、ケイトから合図が送られてきました。
棟に鳴り響くけたたましいベルとは対照的な、パンちゃんを介したひっそりとしたサイン。
本当にささやかな合図ではありますが、ケイトとエミリコにとってはこれで十分です。ケイトから送られてきたサインを見て、エミリコはすかさず部屋を出ていきました。行く先はもちろんケイトの部屋です。
エミリコの手には、しっかりとパンちゃんが握られています。
説明するまでもないですが、パンちゃんはエミリコにとってどんな時も手放さない「大切なもの」です。
今思うと第11話でケイトがエミリコを褒めていたのは、ケイトがエミリコから送られた「大切なもの」(=エミリコから貰った人形)を大事にしてきたのと同様に、エミリコが「大切なもの」を必死に守り抜いたことに対して連帯感を抱いていたのかも知れません。今更ながらそんなことを考えてしまいました。
過去エピソードをなぞるかのようなシーンが続いていくうちに、エミリコがケイトの部屋に到着しました。部屋の入口は当然、第3話の頃と変わらないあの回転扉です。
ですが変わったことがあります。
それは、部屋で待っていたのは煤にまみれながら眠りから覚めない主人ではなく、一切の穢れもなく凛とした佇まいの主人が立っていたことです。
サッと身に着けた白い手袋も、第6話で描かれていたものとは様相が異なります。それは彼女の目の前にいる存在が「人形」ではないことを暗に示している、と考えるのはいささか深読みでしょうか。でもそんなことをつい考えてしまう一コマであります。
そしてついに手に取られた、星つきの勲章。
エミリコの、同時に読者の目の前に現れたのは、とうとうこどもたちの棟のトップに上り詰めたケイトの姿でした。
星つきの勲章を輝かせたケイト。
まごうことなき新リーダー誕生の瞬間です。いかにシャドーハウスという館の支配者が偉大なるおじい様だったとしても、ここまで神々しい姿は真似できないでしょう。
第44話の「謁見」とは全然比較にはなりません。偉大なるおじい様を褒め称える何十人ものこどもたちを集めたとしても、此度のエミリコ一人の眩しい表情には勝りますまい。これこそが真のカリスマを描いたといえる、そんな一連のシーンでありました。
それにしても、こう振り返ると過去話を彷彿とさせるシーンが続々と現れましたね。
上述しただけでも、3・6・10・11・15・21・44・47・53・81話といったエピソードをつい思い出してしまうシーンの連続です。
それらを思い出しながら読んでいくうちに、最後の最後に星つきになったケイト嬢が登場したのですから私も思わずエミリコと同じ表情をしてしまいました。私と同様の方も、もしかしたらいらっしゃるのではないでしょうか?(ん、ない?そっか……。)
でもこのようにエミリコと読者がシンクロする構成を見て、一つ思い出したことがあります。
それはエミリコが星つきを目標に掲げた、第21話公開当時のソウマトウ先生のツイートです。
先生は当時、第21話を読んだファンに対してこう仰っていました。
「このままただ辛く暗い話に向かうわけではないので読者の方にはエミリコと一緒に前向きにシャドーハウスのことを知っていってもらえるといいなと思います。」
この言葉通り、読者はエミリコのことを応援しながら、時には心を重ねて一緒にシャドーハウスの謎を解き明かしてきました。それはきっと、今後も続いていくことでしょう。
それを思う時、此度のエピソードの構成も、星つきになったケイトをエミリコが目にした瞬間の気持ちを、読者にも追体験させたかったソウマトウ先生のサービスだったのかも知れないなあと、そんなことを考えてしまいました。もしもそうだとしたら、嬉しい限りですね。
さて、星つきになったケイトの船出はかくも美しいものでした。できればこれからのケイトのゆく道も輝かしいものであることを願いたいです。
ですが、そう簡単にはいかないでしょう。
投票の結果を見て、サラはそんなことどうでもいいと吐き捨てています。ダグラスも心から納得していません。
また、驚いたのがマーガレットの動きです。第140話でケイトが手にしていたガラス片、つまり「無能力者襲撃事件」の犯人に繋がる物的証拠を見つけ出したのは、実はマーガレットだったのです。その重大証拠をパトリックのためにと渡したのに、ケイトだけが評価されてしまい不満げです。
そういえば第139話でマーガレットはケイトに意味ありげな視線を向けていましたね。あの視線の真意はそういうことだったのかと腑に落ちました。
もうこの時点で火種は幾つも燻っていますので、それをどうコントロールしていくのか非常に難しいところですね。
しかし、何よりも乗り越えなくてはいけない重要課題が現在のバーバラとバービーです。
エドワードからクリストファーの真実を聞かされたことで、発作を起こしてしまったバーバラ。やはりあの大爆発は大きなダメージを主従に与えてしまっていました。
バービーは今回こそはバーバラを抱きしめて離さなかったようで、主人を引きずって栄光の廊下まで連れていきます。いつかの惨事は繰り返さずに済みました。
ですが、彼女はこどもたちの棟に辿り着く前に気を失ってしまいました。
一応マリーローズの弁を借りるなら、栄光の廊下の半分を過ぎたのだから既にこどもたちの棟に着いたともいえます。
しかし力尽きたバービーの表情は尋常ではありません。事態がどこまで深刻なのか分からないまま物語は幕を閉じました。
バーバラはかつて、信じられるものがあるから頑張ってこられたと語っていました。
その信じられるものとは「クリストファー」のことです。それを失った今、心の支えの代わりを見つけることなど容易くないでしょう。今の彼女達に果たして生きる希望があるのかと問われれば、それはほぼゼロです。
新リーダー誕生の瞬間に前リーダーが危機に陥るとは、何たる残酷なことか。
第57話でバーバラは「“星つき”でなくなるということは命の保証もありません」と述べていましたが、こんな形で現実になりつつある事実にケイトの「牢獄」という言葉が無理にでも思い起こされました。
大人の脅威、内部の火種、旧体制から新体制への移行……
残された多くの課題をどう解決していくのか、新リーダー・ケイトの手腕が早速問われようとしています。
久々にエミリコの「考えないノート」がお目見えしました。
最後に登場したのはいつだったでしょうか。恐らく、第81話でケイトが班長に就任したことをエミリコが書き込んでいた時以来かも知れません。改めて読み返してみて、もうそんな前なのかと驚きました。
さて、この「考えないノート」
エミリコのたわいもないアイディアから生まれたアイテムですが、実に物語の重要な場面で登場していますね。
ざっと見ても、お披露目前夜の21話、ケイトがエミリコを取り戻そうと奮闘した47話、第二次亡霊事件の捜査が始まった58話、そして前述の81話と、物語の動くタイミングで「考えないノート」が大活躍です。
既にアプリのコメント欄やSNSでも仰っている方は多いですが、ひょっとしたらシャドーハウスの物語の最後はこのノートの記録から語られるかも知れません。かなり将来の話になりますが、そんな風に夢想したくなる展開ですね。
まあそれは置いておきましょう。
「考えないノート」を読み返すエミリコですが、彼女はとあるページを見ると手を止めました。エミリコが感慨深げに眺めているのは、指を上に掲げる自身の落書きです。
お披露目前夜にエミリコが初めて立てた、「星つき」という目標。
最初はエミリコ一人だけの目標でしたが、それは第53話で主従が共に目指す道へと変わり、遂に悲願達成まであと一歩のところまでこぎ着けました。
思えば、53話当時はまだ第二次亡霊事件さえ起きておりません。
にも関わらず、数章の後に語られる大目標がこの時点で明言されていたとは驚きです。流石ソウマトウ先生です。
ひょっとしたら、丹念に読めば今描かれているストーリーの中にも後々クローズアップされる出来事が見つかるかも知れませんね。こんな風に物語の構成を楽しむことができるのもシャドーハウスの魅力であります。
そして構成といえば、何よりも強調したいのが本エピソードの推移です。
全体的には、エミリコが「考えないノート」に記述していく内容がモノローグ形式で語られていくわけですが、その中で現星つきの自主退陣、投票という方法でのリーダー選出、こどもたちの様子が描かれていきます。
加えて、エミリコのモノローグで足りない部分はこどもたちの会話で補われており、各々の個性豊かなやり取りが明らかになっています。
様々な顔を見せる、エリザベスとロレッタ、ウィリアムとヘンリー、イザベルミラベルとジョージ&ニコラス、サラ、ダクラス班、ギルバート、バートラムとエヴリン、オリバーとリディア、アンナとジェレマイア、ルイーズとベンジャミン、パトリックとマーガレット、ジョンとスザンナ……
後半になるにつれて男女のやり取りが多くなったせいか、つい読んでいる途中で数年前に流行った「ファイナルファンタジー現象」を思い出してしまいました。いやいや、シャドーハウスではありえないか……。
すいません、ちょっと横道に逸れましたね。
ただここで注目したいのは、本エピソードの半分以上が過ぎてもケイトの姿が描かれていないことです。
これまでの演出を見た限りではケイトが星つきになったのは間違いないでしょう。なぜなら、今まで作中で登場したこどもたちのほぼ全員がこのエピソードで登場しているからです。
ならば消去法で、ケイトが星つきになった可能性は非常に高いと言えます。
ですが、それはこどもたちの様子からそう推測されるだけのことです。残り5ページを切っても彼女の立場について明確な描写は全くないのです。
しかし、それもそのはずです。
それが読者にはっきりと明かされたのは、図らずもエミリコと同じタイミングだったからです。
部屋に一人でいるエミリコに、ケイトから合図が送られてきました。
棟に鳴り響くけたたましいベルとは対照的な、パンちゃんを介したひっそりとしたサイン。
本当にささやかな合図ではありますが、ケイトとエミリコにとってはこれで十分です。ケイトから送られてきたサインを見て、エミリコはすかさず部屋を出ていきました。行く先はもちろんケイトの部屋です。
エミリコの手には、しっかりとパンちゃんが握られています。
説明するまでもないですが、パンちゃんはエミリコにとってどんな時も手放さない「大切なもの」です。
今思うと第11話でケイトがエミリコを褒めていたのは、ケイトがエミリコから送られた「大切なもの」(=エミリコから貰った人形)を大事にしてきたのと同様に、エミリコが「大切なもの」を必死に守り抜いたことに対して連帯感を抱いていたのかも知れません。今更ながらそんなことを考えてしまいました。
過去エピソードをなぞるかのようなシーンが続いていくうちに、エミリコがケイトの部屋に到着しました。部屋の入口は当然、第3話の頃と変わらないあの回転扉です。
ですが変わったことがあります。
それは、部屋で待っていたのは煤にまみれながら眠りから覚めない主人ではなく、一切の穢れもなく凛とした佇まいの主人が立っていたことです。
サッと身に着けた白い手袋も、第6話で描かれていたものとは様相が異なります。それは彼女の目の前にいる存在が「人形」ではないことを暗に示している、と考えるのはいささか深読みでしょうか。でもそんなことをつい考えてしまう一コマであります。
そしてついに手に取られた、星つきの勲章。
エミリコの、同時に読者の目の前に現れたのは、とうとうこどもたちの棟のトップに上り詰めたケイトの姿でした。
星つきの勲章を輝かせたケイト。
まごうことなき新リーダー誕生の瞬間です。いかにシャドーハウスという館の支配者が偉大なるおじい様だったとしても、ここまで神々しい姿は真似できないでしょう。
第44話の「謁見」とは全然比較にはなりません。偉大なるおじい様を褒め称える何十人ものこどもたちを集めたとしても、此度のエミリコ一人の眩しい表情には勝りますまい。これこそが真のカリスマを描いたといえる、そんな一連のシーンでありました。
それにしても、こう振り返ると過去話を彷彿とさせるシーンが続々と現れましたね。
上述しただけでも、3・6・10・11・15・21・44・47・53・81話といったエピソードをつい思い出してしまうシーンの連続です。
それらを思い出しながら読んでいくうちに、最後の最後に星つきになったケイト嬢が登場したのですから私も思わずエミリコと同じ表情をしてしまいました。私と同様の方も、もしかしたらいらっしゃるのではないでしょうか?(ん、ない?そっか……。)
でもこのようにエミリコと読者がシンクロする構成を見て、一つ思い出したことがあります。
それはエミリコが星つきを目標に掲げた、第21話公開当時のソウマトウ先生のツイートです。
先生は当時、第21話を読んだファンに対してこう仰っていました。
「このままただ辛く暗い話に向かうわけではないので読者の方にはエミリコと一緒に前向きにシャドーハウスのことを知っていってもらえるといいなと思います。」
この言葉通り、読者はエミリコのことを応援しながら、時には心を重ねて一緒にシャドーハウスの謎を解き明かしてきました。それはきっと、今後も続いていくことでしょう。
それを思う時、此度のエピソードの構成も、星つきになったケイトをエミリコが目にした瞬間の気持ちを、読者にも追体験させたかったソウマトウ先生のサービスだったのかも知れないなあと、そんなことを考えてしまいました。もしもそうだとしたら、嬉しい限りですね。
さて、星つきになったケイトの船出はかくも美しいものでした。できればこれからのケイトのゆく道も輝かしいものであることを願いたいです。
ですが、そう簡単にはいかないでしょう。
投票の結果を見て、サラはそんなことどうでもいいと吐き捨てています。ダグラスも心から納得していません。
また、驚いたのがマーガレットの動きです。第140話でケイトが手にしていたガラス片、つまり「無能力者襲撃事件」の犯人に繋がる物的証拠を見つけ出したのは、実はマーガレットだったのです。その重大証拠をパトリックのためにと渡したのに、ケイトだけが評価されてしまい不満げです。
そういえば第139話でマーガレットはケイトに意味ありげな視線を向けていましたね。あの視線の真意はそういうことだったのかと腑に落ちました。
もうこの時点で火種は幾つも燻っていますので、それをどうコントロールしていくのか非常に難しいところですね。
しかし、何よりも乗り越えなくてはいけない重要課題が現在のバーバラとバービーです。
エドワードからクリストファーの真実を聞かされたことで、発作を起こしてしまったバーバラ。やはりあの大爆発は大きなダメージを主従に与えてしまっていました。
バービーは今回こそはバーバラを抱きしめて離さなかったようで、主人を引きずって栄光の廊下まで連れていきます。いつかの惨事は繰り返さずに済みました。
ですが、彼女はこどもたちの棟に辿り着く前に気を失ってしまいました。
一応マリーローズの弁を借りるなら、栄光の廊下の半分を過ぎたのだから既にこどもたちの棟に着いたともいえます。
しかし力尽きたバービーの表情は尋常ではありません。事態がどこまで深刻なのか分からないまま物語は幕を閉じました。
バーバラはかつて、信じられるものがあるから頑張ってこられたと語っていました。
その信じられるものとは「クリストファー」のことです。それを失った今、心の支えの代わりを見つけることなど容易くないでしょう。今の彼女達に果たして生きる希望があるのかと問われれば、それはほぼゼロです。
新リーダー誕生の瞬間に前リーダーが危機に陥るとは、何たる残酷なことか。
第57話でバーバラは「“星つき”でなくなるということは命の保証もありません」と述べていましたが、こんな形で現実になりつつある事実にケイトの「牢獄」という言葉が無理にでも思い起こされました。
大人の脅威、内部の火種、旧体制から新体制への移行……
残された多くの課題をどう解決していくのか、新リーダー・ケイトの手腕が早速問われようとしています。
