「結束」と聞くと仕事柄「結束バンド」を思い浮かべてしまうのですが(ぼっち・ざ・ろっく!の方じゃないですよ!)、もちろんサブタイトルとは関係ありません。

というかそんな便利なもの、そもそもシャドーハウスにないでしょうしね。

結束バンドは1956年に米国で発明されたそうですが、当時から材質はナイロンだったそうです。ということはシャドーハウスの作中にプラスチックはなさそうなので、当然結束バンドもないでしょう。

オリバーとオリーが現実の結束バンドを見たら興奮必至だと思いますが、シャドーハウスで再現するにはナイロンの開発から始めねばなりません。まずは基礎研究からだ!頑張れオリバー&オリー!!


それと余談ですが、海外の感想記事を見ると「今回のエピソードは“THE END”というタイトル通りのストーリーが展開……」と書かれていたので何の事だろうと一晩考えていたのですが、多分これ「結束」と「結末」の見間違いかも知れませんね。

感想記事を書いた方が日本語(漢字)に精通していたからこそのミスかと存じます。日本人でも見間違えそうですし。

ただ当方全く英語分かりませんので、英語ご堪能な方はこんな風にサブタイトルを誤解している海外の読者を見かけましたら「今回は“end”じゃなくて“union”だぜ!」と是非お声掛けしていただければ幸いです。(いや“union”で合ってるのかも分かりませんが)


さて、ではこの辺で本題に入りましょう。

シャドーハウスで度々描かれる「絆」

これはサブタイトルのように「結束」と言い換えることもできるかと思います。ケイトとエミリコは論理的に、そして時には情緒的に他者と向き合い仲間を増やしてきました。そうやって皆々と理解を深めながら信頼関係を築き、遂にはこどもたちの棟のトップに上り詰めたのです。

いけ好かない男の台詞を拝借しますが「君にはリーダーの資質がある!!」としか言いようがありません。

偉大なるおじい様の覇道とは真反対の王道を歩む者、それこそがケイトです。


ですが、今回の173話ではこれまたケイトとは違う、強烈な怒気によってグループをまとめあげる人物が描かれました。

誰もが予想もし得なかった事態。

甘かったのはそのキャラクターの名ではなく、我々読者の認識でした。



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新人達のお披露目が始まってからというもの、今回はどんな物語が見られるのだろう、ケイト達のような冒険活劇がまた見られるのではないかと期待しておりましたが、その予想をはるかに超えるストーリーが描かれました。

よく考えてみれば当然です。
ソウマトウ先生が過去エピソードの焼き直しなどするはずがないからです。

似た内容のストーリーを同じ漫画の作中で展開する。

そういった例は世の中に沢山ありますが、シャドーハウスはもちろん違います。ケイト達のお披露目がシャドーと生き人形の「結束」を固める下地になったのに反し、此度の新人達は既に「結束」していました。


ということで、本編をご覧になった方は未だ衝撃冷めやらぬといった心持ではないでしょうか?

まさかまさかの真実でしたね。

新人達が洗脳から既に溶けていた上に、それを主導していたのがキャンディだったなんて。


冒頭、休憩所にて話し込むケイトとエミリコが描かれていましたが、エミリコから告げられた「師匠」という台詞、そしてキャンディがサーカス時代の先輩団員だったことには大変驚かせられました。

ただ、今回のエミリコの供述によって腑に落ちた点も幾つかありました。

まずエミリコが「雑用」などど呼ばれてぞんざいな扱いをされていた点です。

第104話を読み返して頂ければ思い出せるかと存じますが、エミリコはサーカスにて綱渡りという大技を披露していました。団長も「最後は大技!」と盛り上げます。あの時のエミリコはまるで花形芸人のようでした。

にも関わらず、団長は演技に失敗したエミリコを即クビにしてるんですよね。

あれだけ注目を集める演目の芸人を、例え初公演の重要な場で失敗したからといって普通はクビにはしないでしょう。それに、団長の機転もあってか演技が失敗したことに観客は気付いていません。幾らなんでも厳しすぎます。

ですがエミリコが急遽抜擢されたピンチヒッターだったなら納得です。当時のエミリコの扱いの裏にはこんな事情があったんですね。


もっとも、エミリコをクビにして以降の公演はどうするんだという気もしなくはないですけどね。

そういえばエミリコが演技失敗した後、団長はエミリコをぶん投げていましたがそこにはマットや藁が敷かれていました。案外団長も勢いで出ていけと言っただけで、エミリコにはいて貰わなくては困るので怪我させないようにしていたとも考えられます。

エミリコ失踪後、実は必死で探していたなんてこともあるかも知れませんね。或いは『ステラに続いて“雑用”もいなくなるなんて……。まさか顔なし妖精のしわざか!?』みたいな感じですす島から引き上げた可能性もありそうです。いずれにせよ演目の変更は余儀なくされたでしょうね。


それとエミリコがサーカスで失敗した理由も今回明かされました。

元々芸人でなかったのですから当然です。むしろ、いきなり本番で綱渡りした上にジャグリングまで成功させたエミリコはかなり凄いでしょう。

ですが失敗は失敗です。ケイトはそのことについて気にしていたようで、自分がいたからエミリコの気が逸れて失敗したと思っていたそうです。

第104話の掲載当時、逆立ち中のエミリコが何を見つけたのかについて、SNSやアプリのコメント欄で議論が交わされていましたが特に深い意味はなかったようです。ケイトの言う通りそもそも無理な演技をさせられていたら失敗するのも当たり前です。本当に怪我してなくて良かったです。(それこそ顔に傷ついてたら目も当てられません)(あと誤解させてすみませんとあわあわしてるエミリコ可愛い)


あと私は全く気付いていなかったのですが、当時のエミリコの衣装について違和感を感じていた読者の方もいらっしゃったようです。

どうやらエミリコの金髪にあの暗めの衣装は合わず、代役っぽさが出ていたとのことです。服飾に詳しくないので分かりませんでしたが、そう言われてみると何だかそんな気がしてきました(単純)

でも確かにあの衣装をキャンディが着てたら似合いそうですよね。今回、遠目ながら芸人時代のキャンディも描かれていますが黒髪のキャンディにぴったりです。こういった視点は私にはないので非常に勉強になりました。


しかし逆に疑問も生まれました。

サーカス時代のエミリコは「雑用」と呼ばれていましたが、もう一つ「綱渡り」というあだ名もあったことです。第104話でルウから名前を尋ねられたエミリコはそう答えていました。

でも芸人で綱渡りが得意だったら「綱渡り」のあだ名も分かりますが、先程申し上げた通りエミリコは芸人ではなくピンチヒッターだったんですよね。

ところが、なぜかエミリコは綱渡り得意です。

第60話(研究班の隠れ家)や第91話(星つきの居住塔潜入)でエミリコは綱渡りを披露しているので、彼女の「綱渡り」というあだ名は根拠があるということになります。ですが、その理由はサーカス出身ということではどうやらなさそうなのです。

個人的に、エミリコの出自についてはサーカスに拾われた孤児(捨て子)ということで決着していますが、もしかしたらサーカス以前のエミリコは何らかの理由で綱渡りが得意だったのかも知れません。

エミリコの身体能力を見ていると山や田舎で育った少女という印象を受けますが、果たしてそれが何なのか色々考えていければと思っています。
(あだ名の由来が、“お前の人生綱渡り”みたいな理由だったらエミリコ不憫すぎますが)


さて、本筋から外れましたので第173話の内容に戻りましょう。

キャンディの過去、それもエミリコと関係があったことが明かされ衝撃でしたが、それよりも驚いたのがラストのキャンディです。


「あたいたちの洗脳が解けているなんて気づいちゃいない馬鹿共め…!」


えええっ!?キャンディそんなキャラだったの!?

食いしん坊で、すすツタ事件で怖いとか泣いてて、リッキーやダグに手引かれてて、お礼がしたいからとわざわざケイトの部屋に来て、パン咥えてお披露目遅刻してたのは何だったんですか!?あれもサーカスで培った演技力とでも!?チクショウすっかり騙された!!


……すみません取り乱しました。

というか別にこれキャンディのことじゃないですよね。シャドーハウスでは当然お影様が主なわけですから、以上に挙げた諸々の行動は全てステラのことです。キャンディは生き人形としてステラの「顔」をしていただけでしょう。

だとすれば、今回ラストで描かれたキャンディの姿は意外でも何でもありません。ただ単に必要がないから今まで描かれていなかっただけです。シャドーハウスにおける「シャドー」「生き人形」という設定の妙に改めて感じ入りました。そうですこれこそがシャドーハウスの面白さです!!


ただ気になるのは、これまでのキャンディの登場シーンに島外から来た人間と思わせる描写がなかったことです。

エミリコなんかは初期の頃のドジさ加減(エミリコごめん!)もあってか、他の生き人形とは違うことが明確に描かれていました。

ケイトもお披露目の頃から、他のシャドーとは違う存在であることが滲み出ていました。

それに比べてキャンディは、すす島(しかもミラーサイド)に最初からいたように思えます。

単行本4巻の第46話(だい46わ)をご覧下さい。この時の選別会でシャドーハウスに招かれたのは、現在オスカル・マーチ・キャンディと呼ばれている少年少女たちです。

ここにキャンディがいるということは、ミラーサイドで学校に入り、正規に選別会に行ったと考えるしかありません。

エミリコのようにイレギュラーな方法で紛れ込んだ可能性もなくはないですが、協力者なしでそれは難しいですし、何よりシャドーハウスに関して事前知識がなければそもそも選別会に参加できないと思います。エミリコだってショーン達からシャドーハウスのことを聞き、選別会というシステムや名簿のことを聞いてようやくスタートラインに立ったのです。それと同じことをキャンディがしたとでもいうのでしょうか?


エミリコはキャンディについて「そういうタイプじゃない」と述べています。

「そういうタイプ」とは、「シャドーハウスに魅力を感じたのかもね」というケイトの発言に対してです。キャンディは根っからの芸人であり、サーカスでの立ち位置を確保していて安泰だったのでしょう。

或いは、誰かに仕えるなどということが肌に合わない性分だったかも知れません。ラストの怒気を孕んだ彼女の顔を見ているとそんな気もします。

となれば、キャンディがシャドーハウスに来た目的には、相当の理由があるに違いありません。


すす島に住む人間がシャドーハウスに行く理由は、「裕福な生活が保証される」(村人・第46話)「何不自由なく暮らせる」(ルウ・第104話)「シャドーハウスに入ることが幸せだし外部にここ以上の幸せはない」(ショーン・第111話)といったことです。

エミリコもシャドーハウスに入った方法こそイレギュラーでしたが、その動機は現在の境遇から抜け出して幸せを掴みたいというミラーサイドでは常識的な理由でした。


しかし、やむにやまれぬ理由があって、シャドーハウスへ潜入した人物が一人だけいます。

ケイトです。

エミリコを助けるため、ミラーサイドを取り戻すため、全てのこどもたちを救うためと様々な理由から戦い続けているケイトですが、元々の理由は自分の身体を蝕んだ「元凶」を知るためにシャドーハウスにやって来ました。

シャドーハウスに魅力を感じたわけでは決してないのです。

ということは、「そういうタイプじゃない」というキャンディも似た理由でシャドーハウスにやってきたのではないでしょうか?


五周年目にて新たなライバルが現れたシャドーハウス。

エドワードの横やりなど関係なしに、ケイトのプランは変更を余儀なくされそうです。