今回のお話の中で「幻影」という言葉が出てきました。

この言葉の意味には、「幻」という文字に重きを置いた「実際には存在しないものが存在するように見えるもの」と、「影」という文字に重きが置かれた「遠い過去の情景」「願望から作り出される理想像」の二通りがあります。


ただシャドーハウス絡みで考えると、「影」という文字が使われているので少し違った意味を見出してしまいそうになりますね。

なんせ「幻」の「影」、イコール「幻のシャドー」という連想ができるからです。

我ながら安直な連想だと思います。本記事を読んでいる方もほぼ全員がそうお思いでしょう。

しかし、連載初期にはそんな「幻のシャドー」と言うべき人物がいました。


クリストファーです。


第52話でマリーローズから発せられたこの名前。


長らくその姿が伏せられていたことから、やれローブ様の正体だとか、やれ館のタブーに触れた禁忌のお影様だとか、当時は様々な説が飛び交っておりました。

ただ、その真の姿がどうだったのかを述べるとネタバレになりますのでここでは触れません。

しかしながら、第75話でついに姿見せた時は大きな話題となりました。そして今となっては、かなりの重要人物としてその存在がクローズアップされることも少なくありません。もはや「幻」という言葉が似つかわしくないほどの存在感といっても過言ではないでしょう。それどころか物語の行方を左右するほどの影響力を誇っています。

正直私も、ここまで各キャラクターの動向に関わる存在だとは想像もしていませんでした。


ところが、そんな彼が本来の意味で「幻影」と呼ばれることとなりました。

発言の主はバービー。

かつて自らも「幻影」に苦しんでいた少女は、主人の最大の理解者でした。




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さて、今回のエピソードは「秘めた想い」とあるように、とある人物の明かされてこなかった真実が判明しました。

その人物とはクリストファーです。

前回ラストでアンソニーはバーバラに「クリストファーはバーバラのことが好きだったんだ」と言っていましたが、なんとそれは本当だったようです。


正直私も、バーバラが言うようにアンソニーの嘘だと思っていました。どう考えてもこれを明かすことでアンソニーの利にはなりませんしね。アンソニーならそれくらいの嫌がらせをしてもおかしくありません。

ところが意外にも、というよりはアンソニーの説明を聞いたら納得ではあるのですが、クリストファーは周囲からの期待をプレッシャーに感じ、唯一自然体で接することのできたバーバラに惹かれていたそうです。しかも婚姻申請書を渡そうとしていたとも。


これを聞いて思い出したのが、第76話「消えない傷」で描写されていたこのシーンです。


バーバラ「マリーローズとクリストファーは……」
              「す…好き合っているのですか?」
マリーローズ「…あははっ!安心してくれそんな関係じゃないよ」


この時のマリーローズの「…」、そして口に手を当てて微笑むローズマリーを見て、当時の私は「あーなるほど、バーバラが傍目から見てクリストファーを好いてるのが丸分かりだから、マリーローズとローズマリーはいじらしい質問をしたバーバラを微笑ましく見てたんだなあ」と思っていたのですが、これは逆だったようです。

むしろマリーローズとローズマリーからしたら「クリストファーが好きなのはバーバラに決まってるじゃないか、安心しなよ!」ぐらいの気持ちだったんじゃないでしょうか。

アンソニーが「優等生が世話をやいてるようにしか見えなかったみたい」と語る通り私もそう受け取っていましたので、今回のエピソードを読んで第76話の描写がまた新しい視点で読むことができました。

なるほど、これは他にも過去エピソードを振り返ると興味深い事実が明らかになるかも知れません。ちょっと時間があるときにでも読み返したいと思います。


ただ、今回のエピソードを読んで私が一番印象に残ったのはバーバラではなくバービーの描写でした。

アンソニーが去った後の「アンソニーは何も理解していない」という台詞。

これ、バービーにとってみればアンソニーの言っていることは一面的なものばかりでとてもじゃないですが受け入れることのできないものばかりだったと思うんですよね。


クリストファーを軽んじる台詞もそうですし、かつての星つきの仲間たちを「馬鹿の寄せ集め」とこき下ろし、バーバラの行動は迷惑ばかりだというアンソニー。

こんなことを言われれば、バービーからしたら反論したくもなるものです。途中で「言い過ぎだ!」と激昂したのもうなづけます。


しかしバービーが何よりも「違う」と感じていたのは、彼女自身が語るようにバーバラはクリストファーの「幻影」を断ち切るために大広間に来たという事実です。

これを理解していたからこそ、バービーは勝手なことをつらつらと語るアンソニーに怒りを向けたのだと思います。


思えば、第151話でも「幻影」という言葉が出てきましたが、あの時のバービーはモノローグでこう言っていました。


「戻れない過去の幻影に囚われるのはやめよう」


バービー自身がそうやって「幻影」を乗り越えた経験があるからこそ、今回主人のバーバラがやろうとしていたことが分かったのだと思います。その答えが描かれたのが今回のエピソードなのではないでしょうか?


奇しくも、第151話はベン、スージー、オリー、そしてエミリコとの交流が描かれていました。

「馬鹿の寄せ集め」なんてとんでもない、素敵な仲間たちがそこにいました。

そしてあの時のエミリコはこうも言っています。

「必要なのは今のバービーの笑顔ですよ」


今話のラストでは、主人の手を取り「今」の笑顔を見せるバービーがいました。

バーバラとバービーの「消えない傷」

それが本当の意味で癒されたのが、今回の第235話だったのかも知れません。