自分語りですみませんが、旅行で知らない土地を訪れた時、ついついメインストリートから外れて裏道を歩いてしまいます。

裏道を行く時は大抵遠回りだったり、本来の行程よりも時間が掛かったりと何かと労はあるのですが、縁のない土地の日常や空気感を感じたくて寄り道することもしばしばです。

しかし不思議なもので、そんな風に散策していると思わぬ発見や出会いがあったりするものです。

最近はなかなか時間が取れず旅行に行けずじまいなのですが、年度が明けて仕事が片付いたら羽を伸ばしにどこか遠くへ行きたいなあと思っています。


さて、今回のサブタイトルは「裏道」

とはいっても先ほど私が述べたような、自由気ままな「裏道」ではありません。

これは“ケイト派”が目的に向かって進んでいくにあたって、主たるルートが封じられたが故に導き出された攻略法を指しています。

しかし、それを主導したのは研究班でした。

お騒がせがお約束のあのチームが生み出したのは、正攻法とはかけ離れた意表を突く裏技でした。
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第236話が掲載されたヤングジャンプ2026年16号は3月19日発売でしたが、この日は「ミュージックの日」だったそうです。

それに関連して、巻末の作者アンケートの問いは「作業中に聞きたくなる音楽は?」でした。

さて、そうとくれば気になるのはソウマトウ先生のお答えです。確か以前、似た質問があった時はラジオを聞いているなんて仰っていましたが、今回はどうなのだろうと見てみました。


ところが、その答えは「無音です。」というこれ以上ない簡潔なアンサーでした。


何と言いますか、逆に凄いですね。他の作者の方々が色々な音楽を挙げている中でこう書いてあるとむしろ個性的といえます。

因みにノーマルガールの家守真言先生も同じく「無音」だそうです。

静謐な部屋の中で、先生とアシスタントの方の筆の音だけが響く制作風景。

そんな現場でシャドーハウスが生み出されているのかと考えると、ファン心理としてはちょっとだけその景色を見たいなあなんて思ってしまいます。

まあ本当に行動に移したら迷惑千万なので想像するだけにしますが、そんな緊張感のある環境でシャドーハウスの物語が紡がれているのかなと思い馳せてしまいました。


さて、ところで「無音」というワードは今回の第236話にちょっとだけ絡んできます。

何かといいますと、冒頭の2ページに台詞はおろかオノマトペすら書かれていないからです。

シーンとしては、栄光の廊下で凄惨な現場を目撃したケイトが駆け出し叫び、ドロシーが放った流れ弾(煤の扇子)から星つきの面々やキングが何とか逃げ出す、という騒々しい場面なのですが、一連の動きは絵のみの描写となっています。


似たような描写で思い出すのは、確か第183話の冒頭もそうでしたね。

あの時はエミリコとキャンディが迷路から抜け出そうと奮闘していましたが、二人が扉を蹴飛ばす「バアンッ」というオノマトペを除いて全く台詞がありませんでした。

道を駆ける二人、扉を見つけて指示を出すキャンディ、背丈より高い階段を前に逡巡するキャンディ、板を見てアイディアが閃いたエミリコ、それを聞いて褒めるキャンディとまんざらでないエミリコ、協力して階段を上がっていき、そしてようやく頂上の吊り橋へと辿り着いたエミリコとキャンディ……

これほどの描写が、一切の台詞もなしに描かれていました。

これ以外にも無音の短いシーンは幾つか散見されるのですが、動きの激しい場面でこれほど長く無音で描かれているのは第183話と今回の冒頭だけだと思います。


そう考えるとちょっと珍しい此度の描写。

これからも同じような場面があるかどうか楽しみになってきました。


……ところが。

まさか同じエピソードの中で再び描かれようとは予想外でした。

ページを捲って14ページ目。

重鎮達の話し合いを抜けてすす列車へと向かうライアン、ジョゼフから手紙を受け取るケイト、それを見送るダグラスをはじめとする星つきメンバー、いつも間にか大人たちの棟の監視だけではなく移動手段まで開発していた研究班、救護班員の意思を汲み取って微笑むエヴリン。

シャドーハウスの魅力である“群像劇”、各方面各々のキャラクターの動きが凝縮されていたシーンを経て描かれたのは、なんとまさかまさかの「人間大砲」でした。



こんなの、今のご時世TVバラエティでさえ企画の通らないであろう手法ですよ!(「主砲」にかけた駄洒落じゃないです)

なんともまあ、こんなのを用いて大人たちの棟へ潜入しようというのですから大胆過ぎますね。

某国大使館に生身の人間が飛び降り侵入する事件があるこのご時世ですが(時事ネタ)、いやはや漫画とはいえ、そして堅牢な大人たちの棟への潜入手段とはいえ、こんな荒唐無稽ともいえるアグレッシブな装置を見られるとは驚き通り越して笑うしかありません。

慎重に事を運んでいたシャーリーとラムの隠密行動の成果が「人間大砲」と考えると、余計に笑いがこみあげてきました。


さて話を戻すと、ケイト派の面々が「人間大砲」(正確な名称は「飛行型瞬間移動装置」)(当然片道)で飛ばされている場面が、ものの見事に「無音」です。

しかしながらそれが却って迫真に満ちているのは、これもソウマトウ先生のテクニックの為せる業でしょうかね。

キャンディを筆頭に、割と余裕そうに見えるルウ・バービー・ルルの女性陣(マーチはやや緊張気味か)

それに対して結構必死な男子達(ショーンとリッキーは頑張ってる)

隣には主人達も描かれていますが、生き人形と同じ表情の対も、そうでない対もいるのではないかと想像が膨らみます。

「無音」であること、それがよりいきいきとした描写に繋がっているなあと頷かされました。(あと見返すとトマスが案外凛々しくて格好いい)


さて、ここまでざっくりとストーリーをなぞって書いていきましたが、一点だけ気になったところがあったので書いていきます。

それはジョゼフからの手紙を読んだケイトが、偉大なるおじい様へ向かおうと走り出した際にエミリコが声を掛けたシーンです。


ここでケイトは、一緒に行こうとするエミリコを制止しています。

今まで二人で行動してきたわけですから、エミリコとしては同行するのは当然と思ったのでしょうけども、ケイトはここで単独行動を選択しているんですよね。

このシーンを見て私は少し寂しさを感じたのですが、恐らくはもっと寂しさを感じたであろうエミリコが瞬時に堪えたのを見て余計切なくなりました。

特にケイトに撫でられるパンちゃんを見る表情がそれを物語っていますね。この時のエミリコの胸中はどうだったのか、それを想像するだけで胸が苦しいです。


ところでケイトがパンちゃんを撫でた後に駆け出しているシーンですが、読み間違えでなければパンちゃんはエミリコが持っているという解釈で合ってますでしょうか。

なぜこんな問いかけをしたかといいますと、ちょっとこの場面自信がないんですよね。

順当に考えれば、第209話でパンちゃんを使ってエミリコを呼び出していた時のように、今後ケイトがエミリコに何か知らせたい時はパンちゃんを操作するというのが一般的な解釈な気がします。

ただ一方で、エミリコが自分の大切なものを、自分の身代わりにケイトに託したようにも見えるんですよね。

直前にケイトは「何かあったら連絡するわ」と言っていますので、今後何かあればケイトがパンちゃんを介してエミリコに伝えるというのが自然な解釈な気もします。

そうだとしたらケイトがそれを忘れないように念押しとしてパンちゃんをケイトに見せたというのが一連の場面なわけですが、パンちゃんをケイトが、或いはエミリコが持っているという二通りの可能性があるかも知れないなあと考えています。


それともう一つ、今記事を書いていて気付きましたが、そういえば皆が「人間大砲」(飛行型瞬間移動装置)で飛ばされているページにエミリコが見当たりませんね。

まさかこどもたちの棟に残っている、とは考えにくいですが、これも可能性としてはある気がしてきました。

理由は定かではありませんが、これに関してももしかしたら何かストーリーに関わってくるかも知れませんね。


ただ、一つ願うならば、エミリコには単身で大人たちのいざこざには巻き込まれないで欲しいです。

シャドーハウスに到着し、すす列車を降りたエドワード・アイリーン・ジェラルド。そしてマリーローズとローズマリー。

彼ら彼女らを出迎えたのは殺気立つライアンでした。

絶対に、確実に嫌なことになる予感しかしません。

まずは大人たちの諍いは大人達だけで。

そう願いながら次回を待ちたいと思います。