いきなりネタバレになりますが、今回はソウマトウ先生や編集部ツイッターでも取り上げられていますので、思い切って書かせて頂きます。

ようやく……、ようやくケイトとエミリコが再会しました!!

実に長かったです。
少し前に “作中ではまだ一日も経っていない” という考察記事を書きましたが、現実世界ではなんと4月18日公開の第25話以来、約5か月ぶりの再会です。

あの頃、時代はまだ平成でした。
まさしく、時代を越えてとうとう、ケイトとエミリコは再会したのです!

この事実を前にして、心動かされない読者はまずいないでしょう。
多分単行本を読み返してみても、もう一度この高揚感を味わうことは難しいのではないかと思います。
連載中の本作をリアルタイムで読むことのできている幸運に、ただただ感謝しています。

特に、ソウマトウ先生が力を入れて描いたという、見開きでケイトとエミリコが語り合うシーンは必見です。

これまでの出来事を次から次へと、これでも足りないとばかりに話しかけるエミリコ。
反対に、短いセンテンスで相槌を打ち、時にはエミリコを気に掛けながらそれを聞くケイト。

なんだか家に帰ってきた子供が、今日あった一日の出来事を一生懸命母親に伝えようとしている、そんな温かい親子の会話を想起させます。

第21話や第24話の感想でも書きましたが、ケイトのエミリコに対する姿勢は、まるで母親のようです。

今回も「心細かったわね」とか「なんでもかんでも集めないの」という台詞や、エミリコのお手製エプロンに気付いて褒めてあげるなど、ケイトは本当にエミリコが愛おしいのだなと思わずにいられませんでした。
しかも、ウサギ型の木があったと話すエミリコに、「トピアリーね」と正しい名称を教えてあげている点も見逃せません。
こういった細かい部分も、親子の会話のようなリアリティを出す大きな要因になっているのでしょう。

楽しそうに微笑み合う二人の姿。
どうかこの笑顔がいつまでも続くことを、ひたすら願うばかりです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


さて、二人が再会してめでたしめでたし、で終わらないのがシャドーハウスという物語です。

というよりも、扉絵や見開きでケイトとエミリコが語り合うシーンを見て私が感じたのは、二人の再会の喜びではありませんでした。

語りたい事が山ほどあるとばかりに、たくさんの台詞で埋め尽くされた見開き。

この台詞の多さを見た時、二人が離れ離れになっていた時間の長さを、否が応でも思い知らされてしまいました。同時に、本当にエミリコは寂しくて寂しくて仕方がなかったんだと思うと、その胸中を思うがあまりに、とても切なくなりました。

思えば、ラムやショーンと庭園迷路を歩いている間も、エミリコは片時もケイトのことを忘れていなかった筈です。
ですが、彼女達に心配は掛けまいとエミリコは、ずっと気丈に振る舞っていたのではないでしょうか。

本当は、ケイトに一刻も会いたい、すぐにでも助けなくてはと一心に考えていたエミリコ。
しかしその思いを押し殺し、ラムやショーン、ジョンと行動を共にしていたと考えると、エミリコの意志の強さに敬服せざるを得ません。

第35話で、ラムと別れた後にエミリコは、胸に手を当てて息を整えていました。これはそれまで押しとどめていた、ケイトへの様々な感情を整理していたのかも知れません。

そして、迷路を駆け抜けながらケイトの名前を絶叫していたあのシーン。
まさしく、エミリコのケイトへの想いが一気に溢れ出した瞬間でした。

だからこそ、今彼女達が触れ合うことも許されない状況がもどかしく感じられます。

ケイトの檻の周りを囲むのは、幾重もの茨の罠です。
そして、そこからケイトを救出する文字通りのキーは、広場にあった鍵の束でした。

なんとエドワードは、ケイトとエミリコにだけ、クリアできない試験を与えていたのです。
本来であれば、偏りがあってはならない筈の“お披露目”。
しかし、“3階の方々”の関心はもう、ケイトとエミリコが落第することしか頭にありません。

恐らく、ドロシーが広場へと向かう入口を塞がせたのは、鍵を取りに戻ってきたエミリコの絶望した顔を見たかったのだと思います。あるいは、エミリコが他の生き人形と協力しているのを見て、他の生き人形達に鍵を取りに行かせるのを阻止する狙いがあったとも考えられます。
いずれにせよ、ライアンに気持ち悪いと言える立場ではないでしょう。

そして、エドワードが最初ターゲットにしていたのはシャーリーとラムだと思いますが、途中から二つの理由でケイトとエミリコに変更したのだと推測できます。

一つは、エミリコによってシャーリーとラムがやる気を出してしまい、予定が狂ったこと。
もう一つは、エミリコは絶対に最後まで諦めないからです。

ライアンは初登場の際、優秀な新人よりも華々しく落ちるのが見たい、と話していました。
そして、窓の外に目を凝らす重鎮達の反応を見る限りですと、ソフィーや彼をたしなめていたジョゼフも同じ考えのようです。

つまり、“お披露目”のクライマックスを劇的に演出するため、反応の薄いシャーリーとラムではなくケイトとエミリコの方が良いと判断したに違いありません。

袋に入っていた小さい鋏で、どうにかケイトを助けようと試みるエミリコ。
その懸命な姿さえ、今では重鎮達やエドワードの格好の嘲笑の的でしかありません。


ここで形勢を逆転する奇跡を願うのは虫のいい話かもしれません。
しかし反面、奇跡を成功に繋げられるのは、怠りなく努力してチャンスを逃さなかった者にだけ許された特権でもあります。

自身が傷つくのをいとわず、主人のために困難に立ち向かうエミリコ。
彼女には十分その資格があると思います。

その影が差し出す手は、敵か味方か。

エミリコの流す血の赤が、命の危険を知らせる警告の赤となるのか、かつての生活のような夕陽の安らぎの赤になるのかを知るのは、ケイトが気付いた不明瞭なシルエットだけです。