好敵手。

こう書かれると『ライバル』と呼んでしまうのは、シャドーハウスがジャンプ漫画だからこそでしょうか。「『本気』と書いて『マジ』」「『運命』と書いて『さだめ』」とかと同じ類です。

そういえばシャドーハウスでは、お影様の台詞は『私(俺)』と書いて発言した人物の名前となっていますね。まあ、それとはまた別の話でしょうけども。


さて、漫画や創作物では主人公に対抗するキャラクターがいると盛り上がるものです。バトルものはもちろんのこと、恋愛ものやスポ根ものもそうですね。

かわぐちかいじ氏の漫画も社会派作品が多いですが、必ずと言って良いほど主人公と対になるキャラクターが登場しています。それどころか脇役同士でライバルになっているキャラクターもざらです。

なんだかんだで主人公が難敵に立ち向かうというのは、古今東西の物語で良く見受けられるスタンダートな要素です。平たく言うと鉄板ネタです。

今回のお話では、ケイトにまたもや厄介なキャラクターが登場しました。

しかし、シャドーハウスの場合はそれだけではありません。
そうやって読者の目を逸らしながら、別の局面で大きな動きをねじ込んできます。

第54話も例外ではありませんでした。

ラストのページを読んでからずっと、早く次が見たいという衝動と、続きを読みたくないという不安感が私の中でせめぎ合っています。


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―生き人形の朝は早い。


なんだか各分野のプロを追ったドキュメンタリーにでも出てきそうな柱の文句から、物語は始まります。

生き人形とは、もちろんエミリコ達のことです。
“お披露目”以降は部屋の外での仕事の頻度が増え、大掃除以外の日も班行動で用事をこなしていくそうです。

時間は朝五時から。確かに大変です。

駆け足で持ち場に向かうものの、ローズマリーは遅れてしまっています。
のんびり屋さんの彼女らしいといえば彼女らしいです。

そうして辿り着いたローズマリー班の管轄。
それは、埃まみれの物置でした。

思わず顔をしかめて咳き込むエミリコ。掃除しないのかと問う彼女に、ローズマリーもミアも時間がないからしょうがないといった様子です。
ミアに至っては、どうせローズマリー班の管轄の場所なんかそんな重要じゃないと遠回しに言いました。「ウフフ」と笑うローズマリーの表情はやや寂しげです。

バービーに見つかったら怒られそう、と語るエミリコに対しミアは「どうせ来ない」なんて言っていますが、もしやミアは第17話でこの状態の部屋をバービーに見せるつもりだったのでしょうか?

それはそれで大胆な性格をしてるなあと思います。思ったことをはっきり言う性格はサラに似てますね。

その流れで、星つきが管轄する場所もあるとエミリコに優しく教えるローズマリー。
でもエミリコはそれを知っています。ちょっとだけローズマリーが不憫に思えてきました。


もっとも、不憫と言うなら生き人形は全員不憫といえるかも知れません。

この時だって早起きして仕事に駆り出されていますし、何よりあの煤珈琲によって支配されているのですから少なくとも幸福ではないでしょう。

しかし当人たちには関係ありません。

エミリコの質問でリッキーに思いを馳せたルウも、ミアから珈琲の話が出た瞬間に意識がすっかり持ってかれてしまいました。麻薬と同等、と言っても過言ではない依存性です。

こんな場所で正常でいられるエミリコの強い意志に敬服します。
ケイトがいるとはいえ、今後の情勢に不安しかありません。

それを示すかのように、早速難敵が登場しました。

ソウマトウ先生が「性格の悪い」と名指しでコメントした人物達。
深夜の見廻りの前にラムの班にいたあの双子がとうとう登場しました。

ラムのことを思い出し、一瞬でエミリコの動悸が高鳴ります。

お互いにつまみ食いさせ合っているのが可愛らしい、という感想はとりあえず置いておきましょう。

それよりもここで重要な情報が出てきました。

ミアとの会話により、ベルと呼ばれる彼女達はスージーから特別扱いをされていることが分かりました。星つきからの特別扱いとなれば、図々しくなるのも納得です。
それにスージー以外の星つき全員に媚びを売り、班員をこき使っているので所属する二人の少女は大変そうです。ラムがいた時から全く変わっていません。

しかも班員だけではありません。
なんの意図があるのか分かりませんが、エミリコまで標的にされます。
箒の柄で足を引っかけ転ばせる片方のベル。嫌な性格を擬人化させたかのような存在です。

これ以上の面倒事はゴメンだと言わんばかりのミアを先頭に、ローズマリー班は現場から去っていきました。


場所は変わって、掃除道具置き場。
もうひと眠りしたいと語るミアを前に、エミリコはもう少しだけ勉強したいと申し出ました。

その言葉に衝撃を受けるミア。眠気モード全開のルウ。
もう付き合いきれないといったいった様子です。

そんな勉強熱心なエミリコに手を差し伸べたのは、班長のローズマリーでした。

普段おっとりしているようでも、年長さんなのでエミリコの勉強のお手伝い位は出来ます。
エミリコが読めない漢字などを優しく教えてくれました。

眠そうなローズマリーを気に掛けるエミリコ。しかし気にしないで良いと話すローズマリーは、いつもと同じまったりとした笑顔でした。優しいお姉さんが、近所の子供の勉強を見てあげているかのようです。

体を寄せて抱きしめるローズマリーに、エミリコも嬉しそうです。
心の中で「ローズマリーはぼんくらなんかじゃありませんよ」と視線を向けるエミリコの思いは、きっとローズマリーにも伝わっているでしょう。それに安心したのか分かりませんが、ローズマリーはエミリコに寄りかかりながら眠りにつきました。
う~ん、二人とも可愛い!!

午前7時。
部屋に戻ったエミリコは、掃除やケイトのお世話などに大忙しです。

ケイトはそれを見て、この多忙さも生き人形がものを考えないようにするための策だと推測しました。
事実、情報交換をしているのにエミリコに睡魔が襲います。

すかさず、エミリコのことを気遣いソファで仮眠するよう命じるケイト。
毛布を掛けてあげるその姿に優しさが滲み出ています。
先程とは違い、今度はエミリコが眠りにつきました。


午前8時半。
稽古ごとのため、ケイトの外出準備です。
これでは昼寝とそう変わらないですね。本当に生き人形は大変です。

まずは手始めに、ダンスホールでマリーローズの手ほどきを受けるケイト。
情報収集も忘れません。踊りながら、前リーダーのクリストファーについて聞き出そうとします。

踊りながら秘密のやり取りとは、本当にサスペンス映画みたいですね。
さりげなく警告するマリーローズも男前です。(こんなこと言われて彼女が嬉しいかは分かりませんけども…)

この警告は、前のページでケイトが言っていた「星つきの推薦」に関わってくるのではないかと思います。とにかく「クリストファー」という名前は禁句だということです。

ここでマリーローズは、クリストファーのことを「彼」と言っています。
少年のシャドーだったということでしょうか?
新たな謎が増えましたが、残念ながら会話はここまででした。

そして更に残念だったのが、ローズマリーとエミリコのダンスが画面から切れていたことです。
おおぅ、もっと二人の様子が見たかった…!


その後もケイトは中庭のお散歩にお茶会と大忙しです。シャドーの生活も大変ですね。ケイトに合わせて歩くエミリコの顎は上がってしまっています。

一通りの稽古を終え、ケイトは余裕があるからと今度は修練の間へ行こうと思い立ちました。
エミリコと同じく熱心です。こんなところは主従共に似ています。

途中、煤能力でルウを操るルイーズを適当に褒めた後、ケイトは修練の間へと向かいました。

修練の間は、能力者だけが入ることを許された空間です。即ち、ここにいるシャドーは全員何らかの煤能力を持ってることになります。それを見極めようと、ケイトは重い扉を開けエミリコと共に入っていきました。


ところが、そこに待ち構えていたのは最も会いたくない2対でした。

ベルと呼ばれていた双子生き人形の主人・イザベルとミラベルです。ただでさえ生き人形同士も似ているのに、シャドーの双子では全く判別がつきません。

そして期待に違わず、イザベルとミラベルは性格もそっくりでした。

つまりここには、嫌な性格の人物が4人。見ている分には画として映えますが、実際対峙するケイト達にしてみれば堪ったものではないでしょう。

ケイトが自己紹介した瞬間、双子の悪意がエミリコを襲います。


急に犬の真似をしだしたエミリコ。
第31話でショーンから「エミリコは犬だよな」と言われていましたが、それとこれとは全く違います。

わざわざ公衆の面前で生き人形を笑いものにするという、良心の欠片もない行為。間違いなく、目の前のイザベルとミラベルによる煤能力のせいです。

最初こそ今後のためにぐっとこらえるケイトでしたが、エミリコの悲痛な顔を見ると心が変わりました。
双子が歩き始めたのを見止めると、今度はケイトの煤能力で双子を転ばせます。

同じタイミングで呪縛から解放されるエミリコ。やっぱり犯人はこの双子でした!

この後クールに去っていくケイト嬢がこれまた格好良いです。
犬真似だけではなく、冒頭のエミリコが転んだ際の報復も無事完了です。

暫くして、星つきを目指しているなら報復すべきでなかったと落ち込むケイトをエミリコは励ましました。これで星つきへの道が険しくなろうとも、ケイトには大切なパートナーがいます。

エミリコの笑顔を、無事守ったケイト。
ケイトはこれからのために、もっと仲間を増やさなければと改めて決意したことと思います。

見つめ合いながら廊下を歩く二人に、恐いものなど何もない筈です。


ただこの館は、二人だけの世界ではありません。
先程も書いた通り、早く仲間を集める必要があります。

ジョンとショーンは洗脳から解くことに成功しました。
しかし他のペアは少なからず難点があります。

典型的なシャドー的思想を持つサラとルイーズ。
煤能力が開花していないパトリック。
仲間にするには、この3人は不安が残ります。

また、星つきの4対やイザベル・ミラベルは論外です。

そうなると一番仲間にしやすそうなのはマリーローズとローズマリーのペアです。

翌日、喜びの会を目前にしてエミリコはローズマリーをどうにか説得できないかと思案します。


ところが、時間になっても肝心のローズマリーの姿が見えません。

ミアは呑気に、どこで道草食っているのかしらと周囲を見渡しますが、それでもローズマリーの姿は見えません。

募る不安。

それはふらつくローズマリーの姿で確信へと変わりました。

呻き声をあげながら、煤まみれの手をこわばせて広間に入ってきたローズマリー。
後ろ姿しか見えていませんが、緊急事態なのは明白です。


一体、彼女の身に何が起こったというのか。
顔が見えないその描写に、見返せば見返すほどに不安は膨らむばかりです。


そういえば、こどもたちの棟には星つき以外にローズマリーより年長の生き人形はいません。

こどもと言える年齢ではないローズマリーですが、ひょっとするとお呼ばれしていない一定年齢以上の生き人形は、何らかの形で存在を抹消されてしまうのではという悪い想像が次から次へと浮かんできてしまいます。


どうかエミリコには、あの時と同じようにローズマリーを救い出して欲しいです。

そして、抱きしめられた時に心の中で言っていた「ぼんくらなんかじゃない」という台詞を、今度は直接ローズマリーに言ってあげて欲しいです。

脳裏をかすめた悪い予感が、全て杞憂であることを願うばかりです。