あらすじの前に、ちょっと時事ネタについて触れたいと思います。

最近何かと世間を賑わしている新型肺炎。
未だ収束する気配すら見せず感染は広がる一方となっております。問題は山積しているもののまったく先が見通せない状況を見て、気を揉む方も多いことでしょう。

専門外なので医療や政治の対応についてあれこれ言うつもりはありませんが、とにかく早い終息と患者の回復を願っています。


さて、危険な感染症というとよく耳にする言葉に“パンデミック”という用語があります。
厚労省のHPでは「感染症の世界的な大流行」(新型インフルエンザ対策行動計画の参考資料より)というざっくりとした説明しかありませんが、ようするに『広範囲で大多数が特定の感染症に罹り(感染または発症)、それが拡大している状態』のことを指すようです。
調べれば調べるほど明確な定義が分からず、おまけに危機的状況ではないのにWHOがパンデミック宣言をした事例(2009年の新型インフルエンザでの誤報)もあることから、『WHOが‟パンデミック”だと宣言したら、それがパンデミックである』といういささか乱暴な結論しか導き出せませんでした。

ところで、このパンデミックに似た言葉に“アウトブレイク”という用語があります。
国立病院機構によれば「一定期間内に同一病棟や同一医療機関といった一定の場所で発生した院内感染の集積が通常よりも高い状態のことである」とのことです。厚労省のHPでも、アウトブレイクという言葉は主に院内感染の対策に関する文章の中で散見されますので、医療機関内での感染症流行を重視した単語のようです。
もっとも『一定の場所』と書いてあるので、閉鎖空間内におけるハイレベルな感染症の流行と捉えれば良いのかなと思いました。

また、それと関連し“スーパースプレッダー”という用語もあります。
東京都感染症情報センターによれば、「多くの人への感染拡大の感染源となった患者」を指すとのことです。此度の新型肺炎でもニュースになったので聞き覚えのある方も多いかと思います。

…久々に前置きが長くなりましたね。
なぜこんなことを冒頭で取り上げたのかと言いますと、今回の第55話では「アウトブレイク」「スーパースプレッダー」という単語を想起せずにはいられない大騒動が発生したからです。

これまでとは違う館の恐ろしさが、またもや生き人形を襲いました。


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扉絵はいきなり、凄惨なローズマリーの顔から始まります。

頬は黒く煤け、口から漏れ続ける呻き声。目の端には涙を浮かべている、到底直視できない表情です。
そして瞳は、これまで何度も描写されてきたあの黒く濁ったものでした。

間違いなく、すす病の症状です。
広間の生き人形達はその姿を見るや否やざわめき立ちました。

ただ、ミアの反応を見る限りでは『またローズマリーがすす病になった』ぐらいの認識だったかと思います。事実、皆驚いているものの、この時はまだローズマリーの様子を注視しているだけでした。

しかしローズマリーの服が膨らんだのを見て、星つきのベンはすぐさまその異状さに気が付きました。

突如出現した、大量のこびりつき。このこびりつきたちがローズマリーの服の下から出てきたのか、はたまた違うのかどうかは、あまりに恐い想像になるので考えないことにします。いずれにせよローズマリーの奇態の原因は、何匹いるか分からないこのこびりつきたちでした。


あまりに予想外の出来事に、喜びの会を控えていた大広間は一転パニックに陥ります。

ローズマリーを発端として、次々とすす病に侵される生き人形達…

エミリコも抵抗を試みるものの、此度のこびりつきは密度が高かったようで簡単には退治できませんでした。前回の勉強を、全く嬉しくない形で復習することとなります。

その後、すす病に罹った少年生き人形に襲われるものの、間一髪でショーンに助けられるなど生き人形達は苦戦に立たされます。


今回の苦戦の一つの要因は、突発的な出来事だったことが挙げられます。
対応が遅れる間に多くの生き人形がすす病に侵されてしまいました。

ただもう一つ見逃してはならないのは、バービーがこの時不在だったことです。

指揮系統の麻痺による敗北は、歴史を見れば珍しくありません。むしろその状況で勝利した例はほんの一握りです。今回も、一応はスージーが緊急的に最高位として指揮を執りましたが、奮闘の甲斐なく被害を拡大させてしまいました。

水の使用の可否をスージーに尋ねるベンは、さながら前線で対応する警察官が、銃使用の是非を本部に尋ねている様子と似ています。
そしてその返事が滞る様子も、まるで我が国の過去の事例と似ているような…

しかしベンは一味違いました。
最初にローズマリーの異状を看破したのも、直前に暴れる生き人形を取り押さえるよう命じたのも彼でした。ベンは、緊急時に適切な対応を取ることができる生き人形だったのです。

しかも、彼はそれだけではありませんでした。

次の場面では、おっかなびっくり棒でこびりつきを叩くリッキーがいました。

ところが、そんなんじゃ日が暮れちまうとばかりにパンチで瞬殺したのは、屈強なベンでした。

さすがです。この戦闘力こそが、星つきの所以かも知れません。

それを見て、エミリコも果敢にこびりつきに立ち向かいます。

棒で叩くだけでは駄目だったことから、高いところからジャンプしてこびりつきを叩きのめすことに成功しました!
位置エネルギーを応用したエミリコの機転にはあっぱれです。


しかし、生き人形の奮闘も空しく事態は悪化する一方でした。

途中、ダグによって必要のない盾にされてミアがすす病になってしまいます。
おまけにスージーはパニックのせいか分かりませんが、事態への対処の前になぜか珈琲の安全確保を優先する有様です。

珍しく焦った様子のベル姉妹によって珈琲が運ばれたあと、最大の危機が発生しました。


亡霊の出現です。


これにはもう、どうしようもない生き人形達。

ですが、それを嬉々として待ち構えていた生き人形が現れます。

あの発明家シャドー・オリバーの生き人形のオリーです。

なんと、第42話で出てきたすす回収機が自走型として登場したのです!

実戦使用できる絶好の機会にテンション上がり気味のオリー。
眼鏡・弱気・ドジ・グラマーという属性詰めまくりな助手、ナンシーと共に機械を初稼働させます。


結局のところ、パニックシーンに出てくる巨大機械のお約束である、全然使えないというオチに終わるすす回収機。


しかしそんな生き人形の危機に立ち上がったのは、我らが主人公・エミリコでした。


しっかりとポーズを決め、慄然とホースを構えるエミリコ。
きっとエミリコであれば大丈夫でしょう。

爽快な展開の後に絶望的な描写がなされるのがシャドーハウスという作品ですので、いささかこの後の展開に不安が残ります。

果たしてエミリコはどこまで仲間を助けることができるのか。

こどもたちの棟の命運は、エミリコに託されました。