第57話が収められた週刊ヤングジャンプ13号のソウマトウ先生のコメントを、皆様はご覧になったでしょうか?

ソウマトウ先生も初めて明かしたというその内容は、なんと過去に劇画漫画の先駆者・さいとうたかを氏のアシスタントをしていたという衝撃の告白でした!!

さいとうたかを氏といえば、ゴルゴ13や鬼平犯科帳など超硬派な作風で知られる大御所ですが、あまりに意外な事実に暫し唖然としてしまいました。

確かに氏は漫画制作にプロダクション形式を取り入れたことで有名ですし、アシスタントの中にはその後各分野でプロになった方も多いです。
しかし、まさかソウマトウ先生もその一員だったとは驚きです。
どこで誰が繋がっているか分からないものですね。

さいとうたかを氏の代表作といえばゴルゴ13が筆頭に挙げられますが、この作品では当然ながら軍事的要素が良く出てきます。読んだことのない方は、大抵古い食堂の本棚に置いてあるので読んでみて下さい。えらく緻密に描かれた機器類に、ソウマトウ先生の作品との共通点を見出すことができるかと思います。


さて、軍事的要素から無理矢理繋げるわけではないですが、第55話から続いた第二次亡霊騒動(便宜的にこう名付けます)でこどもたちの棟が受けた被害は、実は軍事的観点から見ると計り知れない規模の損害だったことが分かりました。

今回の記事ではいつもと少し違う角度から、如何に現在のこどもたちの棟が危機的状況であるかを解説していきたいと思います。

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一般的に『全滅』という単語は、ある集団が‟全て”何らかの損害を負い機能不全に陥った状態を指します。
ところが軍事的には、作戦部隊の“3割”の人員が被害を受けると『全滅』と判定されます。

こういったことを書くとよく言われるのが、「あと七割も残っているのになぜ?」という疑問です。
非常によく分かります。私も昔はそう思っていました。


この理由については、かいつまんで言うと『全ての人員≠実戦部隊』ではないためです。

通常の軍隊では継続して作戦を遂行するため、部隊ごとに救護員(衛生兵)など後方支援する人員がいます。その後方支援する人員が2割程度だとすると、3割の被害を受けた場合、実戦部隊の約40%が戦力として数えられなくなる訳です。これでは満足に戦うことなどできません。


もっとも、こう書いても「じゃあ残りの60%で戦えばいいじゃん」とよく言われるので、もう少し詳しく説明しましょう。

60%の実戦部隊員。
一見、そこそこの戦力な気がします。

しかし残念ながら、その全員を戦力として数えることはできません。
理由は簡単で、負傷者を収容する人員も必要だからです。衛生兵がわざわざ最前線に出ていくわけにはいかないですからね。そんなことをして医療の専門家たる衛生兵がいなくなってしまったら、その時点で戦闘は継続できなくなります。

実際に、負傷者の救護に人員を割かせるために、あえて致命傷を与えない兵器もあったりします。


更に、損害を受けた人員の階級も考慮しなくてはいけません。
大抵軍隊というのはいくつかの小隊に分かれて行動しますが、3割の中に小隊長などの指揮官クラスが全員含まれていたら、その時点で兵士は動けなくなります。かといって、指揮官と兵隊がバランスよく損害を受けたとしても、先程述べた通り負傷者の収容やらなんやらで結局半分の人員しか残存していません。

よって以上のことから、軍隊においては作戦部隊の3割が損害を受けると『全滅』と判定されるわけです。

“3割の被害”といえども、単純な数字以上のダメージを負っているということがお分り頂けたかと思います。


さて、長くなりましたがシャドーハウスに話を戻しましょう。

此度の亡霊騒動においては、第57話でイヴから報告がありましたね。

その内訳は、
・重傷者2名、軽傷者12名
・研究班、救護班、ダグ班、ベル班以外は何らかの損害
でした。

シャドーハウスの生き人形は班編成で動いていますので、丁度先程の軍隊の話がそのまま当てはめられますね。それでは、生き人形達がどれほどの人的被害を受けたのかを検証していきましょう。


まず、そもそも生き人形は何人いるのかが問題ですね。ここでは複数の場面を見た結果、約50人としたいと思います。

この50人の根拠は二つあります。

一つは、第8話の大広間の見開きページ。一画面の中で最も多くの生き人形が描かれたシーンです。

ここには約40人の生き人形がいます。全員子供のような容姿ですので、全てこどもたちの棟の生き人形と見て間違いはないでしょう。しかもこの中に救護班や星つきはいなさそうなので、大体50人弱と推測できます。

二つ目が、第53話の大広間…ではなく、ミアが班編成が変わったのでエミリコに確認するように言ったシーンです。ここでエミリコが班に空きがあると指摘したコマがあるのですが、黒板の左端に何やら数字みたいなものが書かれています。
シャドーハウスで使用されている文字がどのようなものか分かりませんが、強引に一番上の数字が一桁で、残りの数字が二桁で書かれていると仮定しましょう。

そうすると、元々の班数は「12」。そして1班は4人で編成されていることから、もともとの生き人形は少なくとも48人はいたと考えられます。

おおっ、先程の大広間のシーンとほぼ一緒です!

この12班の中に星つきや救護班といった役割が含まれているのかは分かりませんが、仮に含まれていないとしたら以下のようになると思います。


・星つき 4名(スザンナ、オリバー含む)
・救護班 4名(スザンナ含む)
・研究班 4名(オリバー含む)
・他10班  40名
・(2班) 「お呼ばれ」や壊れたため現在はなし

→合計 50名 ※スザンナ、オリバーが重複しているため

とまあ、こんな感じではないでしょうか?

少なくなった2班分の8人については、ミアがひと班は「壊れちゃったのよ」と言っていたので4名、“お呼ばれ”で2名、そしてラムの1名で計7名がこどもたちの棟からいなくなったことが分かります。
残り1名は元々いなかったか、あるいは補充枠として空席だったということかも知れません。


ではいつものことながら前置きが非常に長くなりましたが、こどもたちの棟の損害について計算した結果が以下の通りです。


負傷者12名 / こどもたち50名 = 0.24


被害率は24%です。これでしたら、まだギリギリ立て直せる感じでしょうか。

ですが、考慮しなくてはならないのがその内訳です。

これについてはただの推測になりますが、第56話を読んでいると亡霊の被害を受けた生き人形は、最前線で勇猛に闘っていた生き人形がいることが分かります。
またローズマリーのように、班長クラスで負傷した者もいることでしょう。

つまり、指揮やこびりつきに対処できるベテラン生き人形の被害が大きかった可能性が非常に高いです。

更にイヴは被害報告の中で「全員無事だった班は救護班・研究班・ダグ班・ベル班のみです」と言っていますが、ベルは第58話ですす管送りにされているので、結局は無事の頭数には入れられません。

ああっ、せっかく無傷だった班の、しかも班長クラスをわざわざ厳罰にしてしまうとはっ…!?


しかもベル達が罰を受けている時のお目付け役として、ギルともう一人の救護班員を張り付けています。そしてイヴはというと、過日の亡霊騒動の負傷者の救護に付きっきりです。

こうなると、少なくとも16名の生き人形がすぐに動ける状態ではないことになります。
先程の計算式に当てはめると、此度の亡霊騒動では32%の生き人形が通常業務に携われないことが判明しました。

以上の結果をもとに、これまでの考察をまとめましょう。


・負傷者は24%を超える。
・その中にはベテランクラスが多いと思われる。
・無事だった者も処罰のため、すぐには現場復帰できない。
・実質無傷の班は、研究班とダグ班のみ。
・日常業務にすぐに対応できるのは、全体の7割以下。


むむっ、こうやって俯瞰して眺めてみるとかなりの被害ですね…。
バーバラが隠蔽に走ったのもよく分かります。軍隊であれば軍事裁判は避けられないでしょう。
星つき全員が同調したのも理解できます。


ただ、処罰を優先するがために被害を拡大し人員を割いたのは悪手だと思います。
優秀な人材をホロコースト政策に送り込み、結果戦争の遂行に支障をきたしたナチスドイツとそっくりです。自らの首を絞めつける所業でしょう。

なぜなら、この先のことを考えた場合、現在のこどもたちの棟はかなり脆弱な状態だからです。


被害は甚大、救護班は負傷者に付きっきり、ほぼ全部の班が機能停止、研究班の秘密兵器は改良が必要、星つきは事態を取り繕うのに必死……。


仮に今回の亡霊騒動が人為的だった場合、犯人はこのチャンスを逃さない筈です。
むしろ、そのために起こした騒動だったとも考えられます。

ある匿名掲示板にて、この亡霊騒動を“陽動”と書き込んでいた方がいましたがあり得ない話ではないでしょう。
第2、第3と波状攻撃を受けた場合、今のこどもたちの棟では対応不可能と言わざるを得ません。


私は第56話のあらすじにて「バーバラのダメージコントロールは完璧」と書きましたが、評価を改めたいと思います。

バーバラが本当にしなければいけなかったこと。
それは、『こどもたちの棟の再編成』です!

その上で次の亡霊騒動に十分警戒しながら、犯人探しに着手するべきだったのではないでしょうか?


誠に残念ながら、彼女にそれを進言できる人物はいませんでした。

オーベルシュタイン(銀河英雄伝説に登場する優秀な参謀)みたいな優秀な参謀がいれば的確なアドバイスも望めたでしょうが、今となっては手遅れです。


こうなってしまったからには、犯人が今回の亡霊騒動だけで力を使い果たしていること、あるいはそこまで頭の回る人物でない幸運をひたすら祈るしかありません。


空前の危機的状況にあるこどもたちの棟。

エミリコでなくとも、「こどもちの棟で何が起きているのでしょうか?」と心配になってきます。