「おつかい」と書くと可愛らしいですが、実は元々の意味はもっと堅苦しかったりします。

題名の「お遣い」という字を見れば分かる通り、この言葉は「使者」を表しているからです。

例えば、「遣隋使」「遣唐使」もそうですね。小学生の頃に習って今も覚えている方も多いと思います。


神道では、祭祀の際に天皇から「勅使」という遣いが現地に赴く神社を「勅祭社」と呼び、他の神社とは一線を画す存在です。また、キリスト教では神の遣いのことを「御使い」、すなわち「天使」と呼び神聖視しています。
石清水八幡宮
(上画像は勅祭社の一つ・京都市の石清水八幡宮)

このように、宗教上において「お遣い」は重要な使命を課されています。音だけを聞くと子供のお買い物を連想しますが、そんな生易しいものでは決してないのです。


もっとも、考えてみれば当然ですね。「お遣い」を出す立場といえば、高貴な存在と決まっています。そうでないなら、当該者が直接現地に行けば良いからです。

現実世界でも、大企業の社長が毎回取引先との打ち合わせに出ることはほとんどありません。それと同じです。


さて、そうするとシャドーハウスにおける「お遣い」の意味も分かろうというものです。

劇中でエドワードは「“お遣い”もまた重要な儀式」と語っていました。

ケイトが少しずつ目的を達成する中、エドワード達も順調に“3階”への階段を上っていきます。
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物語は、サラの部屋のシーンから始まりました。

久々のケイトとエミリコ以外のこどもたちの登場。

しかし、すすバトの到来を目にしたサラとミアに緊張が走りました。

なぜなら第98話のラストで「確実な証拠」を掴むとエドワードに伝えていたのに、何も成果がなかったからです。

あの日サラは、ダグラスと共にウェストウイングのバルコニーで待ち伏せをしていましたが、それをケイトに見破られたことで空振りに終わりました。それどころか、イザベル・ミラベルと一緒にベンジャミンに連行されるという大失態です。

それもあってか、サラはエドワードの返信を見るのが恐いと言い、ミアに披見を押し付けました。


ところが、エドワードからの言伝を見たミアは驚きます。

テーブルに書かれたメッセージには、なんとエドワードからの労いの言葉が並んでいたからです。

ミアは笑顔で、エドワードの「素晴らしい成果」という言葉を主人に告げました。ミアのこんな表情は本当に久しぶりです。

サラはそれを聞くと、ミアを押しのけて食いつくようにテーブルの文字を読み始めました。

エドワードの返信を要約すると、

①偽物の珈琲が配られたことが分かったので反乱分子がいることが確定した。
②その結果エドワードとしては反乱分子がいるという前提で対応できる。
③ケイトが怪しい会合を開こうとしていることが判明したのは収穫。
④次回の指示はこどもたちの棟で直接行う。
⑤頼りにしている。

といった内容です。

これを読んだサラは、胸の前で手を合わせると「なんという寛大なお言葉!」と喜びました。今度の指示はこどもたちの棟でエドワードが直接行うということもあってか、いつ会えるのかとそわそわし始めます。ケイトからすれば愉快な状況ではないですが、サラとミアの明るい姿を見られて、少しだけホッとしました。

ただ、これまでのエピソードでも度々描かれてきましたが、サラは優秀とは言い難いシャドーです。バーバラからも班長の器でないとたしなめられていましたし、実際に班長の座をケイトに奪われています。

また、サラからすれば自身を出し抜いたケイトこそが許せない存在ですが、残念ながらすす能力が覚醒していない彼女がケイトに敵うはずがありません。サラはエドワードの視察時にすす能力を目撃していますが、今回のエピソードを見る限りでは未だにすす能力は覚醒してはいないようです。

サラには悪いですが、満足に自分の煤を扱えないシャドーが果たして期待されているのかと言えば、まずないと思います。これは館の力関係から見たれっきとした事実です。


そして、その答えは次ページではっきり示されました。

「ゴミ以下の報告だった」と切り捨てるアイリーン。
プライドの高さを無能力が故の「引け目」だと冷酷に分析するジェラルド。

これは、サラからの報告を目にした二人の感想です。

エドワードがすすバトに託した伝言は、第89話と同じく「甘言」であり、ただのうわべだったのです。

「もともと期待はしていない」

それがエドワードの本音でした。結局のところサラは操り人形であり、ミアはそれに振り回されているだけだったのです。

ではエドワードの狙いは何かというと、第86話で言っていた「内側から壊せばいい……!!」いう一言に集約されるでしょう。

ジェラルドはそれについて「順調に事が運んでいますね」と不吉な発言をします。一体何が順調なのかと不安になってきました。全く油断のならない三人です。


さて、こどもたちの棟に関する話はそこそこに、アイリーンは「で…本題は?」と切り出しました。
ここまでの会話は、どうやら本題ではなかったようです。

では何が本題だったのか。

こどもたちの棟の動向よりも優先される話題。

それは「お遣い」という重要な指令が三人に課されたことです。

エドワードの表情、そしてアイリーンとジェラルドの反応を見れば、いかに重大なミッションなのかが伺えます。エドワードも、館の外に出られるこの仕事は「お披露目」「お呼ばれ」に続く館の重要な儀式だと述べました。


ただ、そんなチャンスが巡ってきたというのにエドワードは浮かない顔です。お披露目の時は試験官の仕事をイキイキと遂行していたのに、その時とは違い険しい顔つきです。

しかし、それもそのはずです。

なぜなら、先ほど挙げた「お披露目」「お呼ばれ」と同様に、「お遣い」も日程が固定されているからです。エドワード達の都合のいい日に行くことはできないのです。

ということは、こどもたちの棟で珈琲が支給されていない状況のまま留守にしてしまうことを意味します。今回の「お遣い」は島中の視察とあってすぐに帰ってくることはできません。エドワードは、その空白期間をどうすれば良いのか悩んでいたのです。


ところが、その割にはエドワードは既に手を打っていました。実は、留守を任せるに相応しい「手駒」を得ていたからです。

その人物とは、ルイスというシャドーです。

話によると、彼はエドワードがこどもたちの棟の管理人になってから初めて一体化に成功した「こども」だそうです。もしかしたら第71話でジェラルドが言っていた「2対のうち1対」のシャドーかも知れません。彼はエドワードの部屋をノックすると、はきはきした様子で挨拶しました。

一体化に成功したということは、ルイスも洗脳され切っているということです。つまり、シャドーハウスに忠実なシャドーです。エドワードから“大人”になった感想を問われると、偉大なるおじい様の名を持ち出して最高だと語りました。


そして、こどもたちの棟の時代の話になると、より一層元気よく感謝の言葉を口にしました。

「最高の世代」

エドワード達に育てられたことで、立派な“大人”になることができたと語ったのです。

エドワード達が星つきだった頃といえば、こどもたちの棟の黄金期です。その中心にはクリストファーがいました。しかし一体化に失敗したクリストファーのことを脇に置くと、エドワード・アイリーン・ジェラルドの名を挙げて、3対も一体化に成功した「最高の世代」は素晴らしいと称賛しました。

サラが未だに「あの頃はみんな楽しかった」と語るように、当時のこどもたちにとって前リーダーの時代は鮮やかな記憶に彩られているのです。


ところが、「最高の世代」という言葉を耳にした途端、エドワードの顔色が曇りました。後ろで聞いているアイリーンも同様です。ここでは見えませんが、ジェラルドもきっと同じだったことでしょう。

直後に、こどもたちの棟の管理権限を一時的に委譲されたルイスは知る由もありませんでしたが、3人に対して「最高の世代」という“代名詞”は禁句でした。


ルイスが退室すると、エドワードの判断についてアイリーンとジェラルドは賛同しました。

確かに、よく考えればこの采配は妙手です。普通は大人になったばかりのシャドーに要職を任せるのは問題ですが、エドワードの代理とすればこれ以上の適任はないからです。

エドワードもそう考えていたようで、トマス派が大半を占める他の大人よりも、新しくおじい様と共にある棟にやって来たルイスの方が扱いやすいと語ります。その上、まだ明かされていませんが、すす能力も申し分ないようです。

となれば、むしろ指名しない方がおかしいでしょう。平たく言えば、企業の採用活動における新卒至上主義みたいなものです。

そんなエドワードの期待を一身に背負って、意気揚々とルイスは引き上げていったわけです。

この意気が良い方向に作用するのか、それとも空回りしてケイトに逆襲されるのか。色んな意味で活躍しそうなキャラクターが増えて、これから先も楽しみです。


そして、エドワード達も気勢を上げます。

三人に火をつけたのは、先程のルイスの「最高の世代」という発言でした。

実は、「最高の世代」という称号は、所詮クリストファーの代名詞でしかないとエドワード達は毛嫌っていたのです。

アイリーンに至っては、はっきりと嫌悪感を露にしました。

しかし三人からすれば、既にクリストファーは亡き存在です。過去に囚われるわけにはいきません。今できることは、目の前のステップを一つずつ上がっていくことです。

ケイト達のお披露目中、第36話でエドワードは「突き進むべきなのだ」と言っていました。

その言葉通り、今回も「共に進むぞ3階へ道を…!」と決意を新たにします。


暫くして、とうとうその日がやってきました。

同じ柄のスーツの並ぶクローゼットから一張羅を羽織るエドワード。
小鳥を肩に乗せて窓辺に佇むアイリーン。
深夜の見回りのショーンを彷彿とさせる荷物持ちのジェラルド。

いよいよ「お遣い」に出発です。


道中、汽車に揺られる三人は、思い思いに外の風景を眺めていました。
まるで何かに思い馳せているかのようです。

エドワードはこどもたちの棟についてでしょうか?
アイリーンはトマス一派についてでしょうか?
ジェラルドはクリストファーについてでしょうか?

もしも番外編があれば、この時の彼らの声を聞いてみたいものです。


やがて、汽車は麓に到着しました。
辿り着いたのは見覚えのあるあのホームです。

周りに何もない、しかし描かれてはいないものの、地面に黒い杭が打ち付けられた駅。

それはショーン達の故郷・ミラーサイドでした。


そして、そうとくればあの怪しげな人物の登場です。

まるで旧知の仲であるかのようにエドワード達を迎えたのは、ショーン達から「校長先生」と呼ばれていた人物でした。

人間ならば、貴族であるシャドー家の一員には敬語を使うはずです。

ということは、やはりこの「校長先生」はシャドーか、それに準ずる存在だということでしょう。

ケイトがモーフを見つけた時に浮かんだ「一体この村は…何をやっているの!?」という疑問。

その真相は、テイラーという人物が握っているのかも知れません。