シャドーハウスとは関係のない話題であること、そしてお知らせが遅くなり時機を逸してしまいましたがどうぞご容赦下さい。
昨年末、高知競馬に所属していた競走馬・マヒカルナが登録抹消されたとの知らせがありました。
マヒカルナは、一昨年5月に高知競馬場で個人協賛させて頂いた「『黒』十周年記念特別」レースに出走した競走馬の中で、最後の現役競走馬でした。
初出走から3年。
一応、中央競馬の登録資格は満たしているものの、馬齢と近走成績、そして現在まで新しい情報がないので現役引退した可能性が高いでしょう。
マヒカルナ、今までお疲れ様でした。
そして、これまで楽しませて下さった馬主の甲原晁氏・調教師の田中伸一氏には大変感謝しております。誠にありがとうございました。
さて。
地方所属。それも重賞も制していない競走馬が辿る今後の行く末を鑑みれば、一度は見聞きした競走馬といえども、引退してしまったからには気に留めないのが無難かとは思います。
(理由は書きません。また、競馬に詳しくない方は調べない方が良いです。)
しかし、競馬界隈の事情について知った上で、個人協賛レースを高知県競馬組合様にお願いしたのもまた事実です。
ですので、たとえ一度きりとはいえマヒカルナという競走馬を知ったのも、きっと他生の縁でしょう。
本記事では、これまで楽しませて頂いた恩を返すには至らないかも知れませんが、出走馬10頭を代表してマヒカルナの競走生活をご紹介するとともに、彼女らへのささやかな顕彰を込めて個人協賛レースについても振り返りたいと思います。
それでは長くなりますので、続きよりどうぞ。
昨年末、高知競馬に所属していた競走馬・マヒカルナが登録抹消されたとの知らせがありました。
マヒカルナは、一昨年5月に高知競馬場で個人協賛させて頂いた「『黒』十周年記念特別」レースに出走した競走馬の中で、最後の現役競走馬でした。
初出走から3年。
一応、中央競馬の登録資格は満たしているものの、馬齢と近走成績、そして現在まで新しい情報がないので現役引退した可能性が高いでしょう。
マヒカルナ、今までお疲れ様でした。
そして、これまで楽しませて下さった馬主の甲原晁氏・調教師の田中伸一氏には大変感謝しております。誠にありがとうございました。
さて。
地方所属。それも重賞も制していない競走馬が辿る今後の行く末を鑑みれば、一度は見聞きした競走馬といえども、引退してしまったからには気に留めないのが無難かとは思います。
(理由は書きません。また、競馬に詳しくない方は調べない方が良いです。)
しかし、競馬界隈の事情について知った上で、個人協賛レースを高知県競馬組合様にお願いしたのもまた事実です。
ですので、たとえ一度きりとはいえマヒカルナという競走馬を知ったのも、きっと他生の縁でしょう。
本記事では、これまで楽しませて頂いた恩を返すには至らないかも知れませんが、出走馬10頭を代表してマヒカルナの競走生活をご紹介するとともに、彼女らへのささやかな顕彰を込めて個人協賛レースについても振り返りたいと思います。
それでは長くなりますので、続きよりどうぞ。
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(高知競馬場パドックのマヒカルナ。2022.7.9撮影)
マヒカルナは平成29年1月25日に、父タートルボウル・母グァンタナメラの間の仔として、北海道安平町の追分ファームで誕生しました。母と同じ、黒鹿毛の牝馬です。
馬名のアルファベット表記はMagica Luna(マヒカ・ルナ)。スペイン語で「魔法の月」という意味です。この名で検索すると60年代のキューバの歌や似た名前のプロレスラーがヒットするので、ひょっとしたら直接の由来は違うのかも知れませんが、名前自体の意味としては直訳通りと解釈して良いと思います。何だかロマンチックな馬名ですね。
母の父はフジキセキです。フジキセキは2021年にヒットした「ウマ娘プリティーダービー」にも登場することから、その血を引くマヒカルナも度々SNS等で取り上げられることがありました。
因みに、平成29年(2017年)に誕生した“2020年世代”の代表として、無敗の三冠馬・コントレイルがいます。偉大な父を持つ彼はクラシック後に不調で苦しむものの、2021年のジャパンカップで有終の美を飾りました。三冠馬としては稀にみる、安定感のある名馬でした。
さて、生まれた年こそ同じでも、エリートコースを歩むコントレイルとマヒカルナでは当然行く道も違います。
しかも、運悪く彼女は「ボーンシスト」という骨の発育不良から発生する病気を持っていました。
そこで2018年10月に両大腿骨の手術が行われ、無事に手術は成功します。
そうしてマヒカルナは生まれ故郷を離れました。
彼女が預けられたのは、大井競馬場の調教師・田中正人氏の厩舎です。いよいよマヒカルナの競走生活の始まりです。
これより、彼女が勝利した3戦と個人的に思い入れの深い2戦、計5戦を解説と共にご紹介しましょう。
①新馬戦・大井競馬場(2019年12月3日 第3レース)
レース結果→netkeibaHP
YouTubeでは大井競馬場のレース動画が残っていないため、詳細はレース結果をご覧下さい。
デビュー戦でいきなり一番人気として期待を背負ったマヒカルナ。鞍上は奇しくも、彼女が生まれた年にデビューした藤田凌騎手でした。
そんな中割り当てられた2番という枠番が、マヒカルナに有利に作用します。
結果は、スタートから先頭を譲らない圧倒的な逃げ切り勝ちでした!
逃げ馬・マヒカルナの誕生です。
ツイッターでは、当時の調教師・田中正人氏が投稿した貴重なレース後の様子を見ることができます。
田中氏もボーンシストについて触れていますね。
ボーンシストは手術後の予後が見えづらく、調教の開始が遅れたり再手術が必要な場合もあるなど、難しい病気だそうです。それだけに新馬戦で1番人気、そして堂々の1着となった喜びはひとしおだったことでしょう。ツイッターからもその喜びが伝わってくるようです。
因みに、マヒカルナの新馬戦の翌々週に中山競馬場で行われたホープフルステークス(GI)ではコントレイルがデビューから3連勝を飾り、当年のJRA最優秀2歳牡馬に輝いています。
そして、第2戦もマヒカルナは1番人気となります。
ところが、期待叶わずディープメロディーの7着に終わると、その後も結果は振るわず掲示板(5着以内)に入るのも難しい状況が続きました。
2020年9月まで10戦を重ねて1勝9敗(1着1回、3着1回)
当時の様子を調べてみると、どうやらテンションが上がりやすい性格だったらしく、気性に問題があったとのことでした。また、他馬を気にするなどデリケートな面もあったそうです。
せめてもの救いは、三戦目の桃花賞で共に走ったアクアリーブルが南関東牝馬二冠、ネーロルチェンテがノースクイーンカップを制したことでしょうか。
結局「伸び代」を見せられない悔しい結果のまま、高知競馬場の田中伸一氏の厩舎に転厩となりました。
なお、大井での最終戦は9月25日でしたが、その翌々日に中京競馬場で開催された神戸新聞杯ではコントレイルが勝利しています。そして翌月、史上3頭目の無敗の三冠牡馬が誕生しました。
②「黒」10周年記念特別・高知競馬場(2021年5月23日 第6レース)
レース結果→netkeiba
2021年春、競馬界隈では困惑が広がっていました。
コントレイルが昨秋に続いて、4月の大阪杯でも敗北したためです。
無敗の三冠馬が連敗するのは初めての事でした。それどころか、三冠馬がクラシック直後に連敗するのでさえ前代未聞です。彼を取り巻く逆風は、初夏の宝塚記念を回避したことでより一層強くなっていきました。
時を同じくして、マヒカルナも苦しい戦いが続きます。
2020年11月の高知デビュー以降、年を跨ぎ半年間で12戦0勝。2着3回、3着2回、掲示板には5回と健闘するものの、いまいち勝ちきれないレースが続きました。
そんな中、2021年5月23日に彼女が出走したのが本レースです!
本ブログをお読みの方の中には、当時レースをご覧になった方もいらっしゃるかと思います。
(当時の様子については『個人協賛レース"高知競馬「黒」十周年記念特別”のお知らせ』『高知競馬の個人協賛レースの記念品を頂いた話』をご覧下さい)
丁度5月25日がソウマトウ先生作・黒の連載から10周年だったこともあり、何かお祝いしたいなあと思って協賛したレースでした。余談ですが、6月以降は本競馬場の協賛レースに希望者が殺到し予約困難となっていたので、タイミング的に助かったと思ったのが懐かしいです。(理由はこの日の第9レースを見れば分かります)
さて、高知競馬はレースがYouTubeにて公開されていますので、せっかくなので掲載いたします。
パドック解説 3:19'13″~
メッセージ紹介 3:42'40"~
ファンファーレ 3:44'40"~
レーススタート 3:45'39"~
フクノソミュールが1番人気となったこのレース。
かつて地方重賞戦線で大活躍したアクロマティック、国内9競馬場で出走経験のあるコパノミラーレが名を連ね、コイツバメカツコには高知競馬初の生え抜き女性騎手・別府真衣騎手が手綱を取るなど、華やかな馬柱となりました。
(高知競馬組合様には感謝してもしきれません)
ところが、レース内容は1番人気のフクノソミュールが先頭で引っ張っていく展開になったものの、なんと最下位人気のソンリッサが直線で猛然と追い上げるという波乱のレースに!
最下位人気の馬があわや差し切り勝ち寸前とあって、3連単が10万馬券に化ける大荒れとなりました。
1着が1番人気のフクノソミュール、2着に奇しくも黒帽のソンリッサ、3着には2番人気のコパノミラーレが入線し、着順通りの結果に。(3番人気のサドンゲイルはなんとか5着)
そんな中マヒカルナは7着でした。1番枠という逃げ馬のマヒカルナにとって絶好の枠順だったものの、フクノソミュールの調子が良すぎて先頭を取れなかったのが惜しまれるところです。
なお、ソンリッサとともに上がり最速(最終直線での速さ)を記録したテレグライドは本競走が引退レースとなり、アクロマティックも1か月後に引退します。アクロマティックの引退レースではマヒカルナがそれを見守るかのように殿となっていました。
以降、2021年内にコパノミラーレ(8月)、ゴーアブロード(9月)、ラストプライドワン(佐賀転厩後の10月)、ソンリッサ(12月)が引退していきます。
特にソンリッサは本レースの走りが印象的で応援していただけに、引退はとても残念でした。
③ファイナルレース・高知競馬場(2021年8月8日 第7レース)
レース結果→netkeiba
マヒカルナの全3勝の中で最も印象深い勝利となったのが、本レースです。
高知競馬に転厩後勝ち星に恵まれなかったマヒカルナは、この日4度目の「ファイナルレース」に臨みました。
「ファイナルレース」について説明しますと、簡単に言うと高知競馬が独自に試みている「記者選抜レース」です。
ただ、記者選抜と言っても対象となるのは近況で勝利をあげられていない競走馬です。レース名に「一発逆転ファイナルレース」と名付けられているように、予想困難な競走馬同士で編成することで、馬券配当的に盛り上げようというのが趣旨なわけです。
予想するにはどの馬がくるかは分からない、鞍上で判断しようにも騎手のテクニックでどうにかなる馬ならばここにいないはず……、と競馬ファン泣かせのこのレース。
しかし、それにも関わらず8月8日のレースには豪華なメンバーが集まりました。
まずはサブライムカイザー。
中央競馬で3勝(連対6回、複勝圏内15回)、しかも障害競走も経験したことのある実力馬です。
次にエスペランサリュウ。
こちらも中央出身馬で、高知が生んだ天才・福永洋一氏の息子である福永祐一騎手を背に中央で勝利をあげています。(福永祐一騎手はコントレイルの主戦騎手)
最後は一番の注目、スワンボートです。
中央で3勝、しかも札幌記念(G2)に出走経験のある歴戦の競走馬です。
そして何よりも、名門オンワード牧場最後の現役競走馬として競馬ファンに愛された馬でした。
そんな実力馬が集まったファイナルレースですが、当日の高知県は前日に台風10号が通過し、翌日は台風9号の接近が予想される大荒れの状況でした。
最終競走となったファイナルレースはその影響をもろに受け、競馬場は大雨が叩き付けるという最悪のコンディション……
しかし、馬場の状態はなんと「良」!?
暗闇の中開催されたこのレースで、マヒカルナは競走生活最高の輝きを見せます。
パドック解説 6:30'50"~
ファンファーレ 6:50'49"~
レーススタート 6:51'55"~
2番人気のシシークラリスがスタートに失敗すると、12番人気のスピーディダブルと10番人気のチェリージャーマンが先行争いするという予想外の展開に!
そんな中、冷静だったのがマヒカルナでした。
第2コーナーでは先頭を走るスピーディダブルにピッタリとマークし、向こう正面で1番人気のエスペランサリュウが徐々に上がる構えを見せると、内から掬う様に先頭を奪います。
そして3コーナーでは先行組3頭が一団となって進むのかと思いきや、ここで鞍上・石本純也騎手が勝負に出ました。一気にスパートをかけたのです。
その頃、二番手にはあのスワンボートが上がってきます。マヒカルナとは違い、追込み型の脚質を持つスワンボートにとって第4コーナーでこの順位は絶好の好位置でした。恐らく、直線での力勝負に持ち込むつもりだったと思われます。
ところが、この日のマヒカルナには問題になりませんでした。
なんと逃げ馬にも関わらず、上がり最速でゴールを駆け抜けたのです!!
結果は2着のスワンボートに9馬身差をつける大差。実況の橋口アナウンサーをして、直線に入ったばかりだというのに「後続を千切りました」と言わしめる圧勝劇でした。
マヒカルナ、めでたく高知転厩後初勝利です。
因みにマヒカルナは7番人気、2着のスワンボートは9番人気。そして出遅れたものの3着に入ったシシークラリスは、2番人気として何とか意地を見せました。
まさにこれこそがファイナルレース!、とでもいうべき結果ですね。
なお、翌日の天候は晴れだったものの案の定不良馬場だったそうです。やっぱり……。
④C2-5・高知競馬場(2022年6月25日 第6レース)
レース結果→netkeiba
逃げ馬・マヒカルナが真骨頂を見せたのはこのレースだったと思います。
中央で勝利経験のあるユイノシワザ、2017年のツイントップ特別(浦和競馬場)で中央馬相手に勝利したアールケイワンが出走するなど、個性ある競走馬が出走した本レース。
前走では中団から伸びて4着だったのが評価され、3番人気で競走に臨みます。
ここで彼女は、新馬戦を彷彿とさせる走りを見せました。
パドック解説 3:19'15"~
ファンファーレ 3:40'08"~
レーススタート 3:40'37"~
スタートから、マヒカルナ・エンパワード・サノラカによる3頭の先頭争いが始まり、マヒカルナがトップに立つものの、エンパワード(2番人気)がマークするように2番手につけます。
注目の1番人気のトラストミーは、中団に付けて脚を温存し、得意の差し切りを窺う姿勢を見せました。
こうして、1番~3番人気がそれぞれ自分に有利なポジションにつく負けられない展開。
しかし、マヒカルナが終始2番手から2,3馬身差をつけると、向こう正面から徐々に上がってきたエリーストーム、直線で追い上げてきたグリムカレッジを振り切り、そのまま逃げ切ってゴールイン!!
一般的に、逃げ馬が有利とされる重(不良)馬場だったこの日。
一度も先頭を譲らないこの走りは、鞍上・塚本雄大騎手の戦法と、逃げ馬・マヒカルナの脚質がうまくかみ合い、双方息が合ったからこその勝利でした。
なお、翌日26日は盛岡競馬場でコントレイルの名を冠した「コントレイル特別」が開催され、阪神競馬場では同期の三冠牝馬・デアリングタクトが宝塚記念で3着に入る活躍を見せていました。
その前祝いといったらこじつけすぎでしょうか。
しかし、これがマヒカルナにとって最後の勝利となりました。
⑤小暑特別・高知競馬場(2022年7月9日 第9レース)
レース結果→netkeiba
この日、私・影野は高知に用事があったため、それならと高知競馬場に足を伸ばしました。
もちろん、マヒカルナに会うためです。
2022年に入ってからも、サドンゲイル・コイツバメカツコが4月に、フクノソミュールが佐賀に転厩後の6月に登録抹消と「『黒』十周年記念特別」の出走馬の引退が相次ぎ、とうとう現役競走馬はマヒカルナ一頭のみになってしまいました
特に、フクノソミュールは佐賀転厩後も暫くは掲示板入りしていましたので登録抹消には驚きました。
と同時に、早くしなければ協賛レースに出走した競走馬に会えなくなるかも知れないとも思いました。
そこで前日は池袋で「喜びの会」があったものの、丁度翌日に高知に行く予定があったので高知競馬場まで行ったのです。幸運にも、この日はマヒカルナの出走日でした。
【高知競馬場スタンド】

当日は割と閑散としておりました。スタンドは出入り自由です。
なお、3階には来賓室や特別観覧席があり、協賛レース出資者はそちらでレースを見ることができるそうです。くう~、あの時現地に行けてればそっちで見たかった……!!
【コース】

高知競馬場はTVでお馴染みの芝ではなく、1周1100mのダート(砂)コースです。
スタンドとコースからはやや距離があるものの、立ち見ならかなり近くで走っている馬たちを見ることができます。実際に目の前を10頭もの馬が走っていると凄い迫力!
【施設内の様子】


昔は競馬場というとダークな雰囲気でしたが、近年改修が順次行われているそうでこんな感じの綺麗な空間でした。ちょうどこの年の4月にリニューアルオープンしたとのことで雰囲気も明るかったです。
【売店の蕎麦】

小腹がすいたので少し遅い昼食。他には串物やおでん、あとは屋外の露店にはアイスクリンがありました。
【アイスクリン】

「『アイスクリン』じゃなくて『アイスクリーム』じゃないの?」と思う方もいらっしゃるかも知れませんが、誤記ではなく実在する高知名物デザートです。
詳細は検索頂ければ分かる通り、牛乳の代わりに脱脂粉乳を用いたシャーベット状の氷菓を指します。この日は夕方に売店が閉まってしまったため残念ながら食べられなかったのですが、高知県内ではポピュラーなお菓子です。
ということで写真は2019年に桂浜で買った時のもの。爽やかで美味しい!
(夏に高知の観光地に行けば大抵売ってますので、土佐観光の折にはぜひともご賞味あれ)
さて、競馬といえばもちろん賭け事です。これらの収益によって地方競馬は運営され自治体に還元されています。因みにそのお陰で入場も無料でした!(※今年の5月から入場料は100円となっております)
そこで私も買ってみました。データとかそんなの関係なく、応援も込めてマヒカルナに単勝2000円。
【単勝馬券】

他にも少々馬単や連単も買いました。
ところが、前レースで勝利しているにも関わらず、どの競馬新聞を見てもマヒカルナは低評価でした。当日の出走メンバーやコンディションもあるとはいえなぜなのか。納得いかずパドックへと向かうと、その理由が分かりました
【パドックの様子】


こちらが高知競馬場のパドックです。ここでレース前の出走馬を目の前で見ることができます。この時の馬の様子や馬体を見て、馬券師の方々はどの馬が勝つかを予想するのです。
そして待っていると、いよいよマヒカルナが現れました。
【パドック内のマヒカルナの様子】



しかし、マヒカルナの様子を見ているとどうにも落ち着きがありません。厩務員が何とか宥めようとするものの、あっちでソワソワ、こっちでもソワソワ……。
他の出走馬が既に騎手を乗せているというのに、マヒカルナだけ随分と時間が掛かってしまいました。恐らく、大井にいた頃と同じくデリケートな気性が出てしまったのでしょう。流石にこれでは心配になります。馬券発売締め切り時点で、とうとうマヒカルナは最終人気となってしまいました。
ですが、例えこの場で一人しかいなくても私だけはマヒカルナを信じようと、スタンド最前列で彼女を見守ります。そうしてレースが始まりました。
パドック解説 5:01'40"~
ファンファーレ 5:20'38"~
レーススタート 5:21'21"~
ところでレースとは関係ないのですが、実は第5レースのパドック解説の際に影野が映ってたりします。身バレ恥ずかしいので言いませんけども……。
さて、レース内容ですがご覧の通りの結果でした。
【レース結果】

残念ながら掲示板入りすらならず。
最下位人気ながら7着に入ることができたのは善戦ともいえなくないですが、しかし負けは負けです。悔しかったです。
でも同時に、マヒカルナのレースを間近で見ることができて良かった、というホッとした気持ちにもなりました。
【レース後のマヒカルナ】

レースが終わり出走馬が帰っていきます。
彼ら彼女らの健闘に拍手をし、そしてマヒカルナの雄姿を収めるためカメラを向けました。その最後の写真が上の画像です。
レンズ越しにまた会おうねと声を掛け、その時こそは勝って欲しいなあなんて考えていたものの、或いはもしかしたらこれが……、と悪い予感も頭をよぎりました。
その予感は的中し、これがマヒカルナを現地で見た最後の姿になりました。
この競走以降は8戦0勝、複勝圏内に2回、掲示板入り3回と結果は振るわず、12月10日の第5R「えひめまどんな特別」を以て競走馬登録が抹消されました。
最終戦は10頭中7番人気で、着順は9位。
引導を渡したのは、かつての東京ダービーの覇者でありGI勝利をも期待されたヒカリオーソという超大物でした。また、このレースでは競走生活晩年に数度顔合わせしたエリーストームも名を連ねています。重賞を制していない地方競走馬の最後の花道としては余りある、華やかな馬柱でした。
その後の彼女の行方については、関係者でない私にはもう知る術はありません。恐らく今後も表舞台に出ることはないでしょう
奇しくもこの月のJRAカレンダーには、前年秋のラストランを勝利で締め括った「同期」のコントレイルが、花形ホースとして紙面を飾っていました。
思えば、私が競馬を深く見るきっかけになったのは2012年の天皇賞秋でした。
当時の私は競馬について、本場欧州では貴族のスポーツと見做されていると頭では知っていたものの、単なるギャンブルという認識でしかありませんでした。賭け事という、競馬の数ある側面の一つしか見ていなかったのです。
しかし、勝利したミルコ・デムーロ騎手の最敬礼を見た時その偏見は裏返りました。
エイシンフラッシュの隣でローマの騎士のように、天皇皇后両陛下に最大の敬意を示したデムーロ騎手。
彼のその姿を目にしたことで、競馬とはなんと気品のあるスポーツなのだろうと感銘を受けました。我が国の競馬でこういう光景が見られるとは思いませんでした。
ただ、それさえもまだ偏見に満ちた見解でした。
2012年の天皇賞秋が終わってから競馬について調べてみると、我が国における競馬の歴史が長いこと、その中で多くのドラマが彩られたこと、国際的にも日本の競馬の評価が高いこと、欧州では形骸化してしまったクラシックレースが今も格の高い競走形態として残っているなど、初めて知る事ばかりでした。
競馬が洗練されたスポーツ文化であることを知らなかったことに、ただただ恥じ入るばかりです。かつて、オグリキャップがあれだけの社会現象になったのも当然だと頷かされました。もしもあの時エイシンフラッシュの末脚が炸裂していなかったら、デムーロ騎手の規約に背いた敬礼がなければ、今こうして本記事を書くこともなかったことでしょう。本当に大きな出来事でした。
しかし、調べれば調べるほど後悔することもありました。
競馬(或いは他のスポーツでも)好きな方なら共感いただけるかと思いますが、過去の名勝負をリアルタイムで観られないのがなんとも惜しいのです。
特に私の競馬に対する認識が変わった2012年の秋、その丁度一年前にオルフェーヴルが中央クラシック三冠を達成しましたが、もう一年早く競馬を好きになっていれば大偉業を目にすることができたのにと後悔しきりでした。
それだけに、2020年にコントレイルが三冠を達成した時はとても嬉しかったです。もう三冠馬は生まれないんじゃないか、目にすることはできないのではないかと思っていたのに、史上3頭目の無敗の三冠馬の誕生です。夢中にならない筈がありませんでした。
競走生活中も今も、成し遂げた成果とは裏腹の評価しか与えられていない彼ですが、紛れもない歴代の名馬です。成績が物足りないという向きもあることは存じていますが、間違いなく時代を代表する競走馬です。
ハンディキャップを、災害を、厄災を乗り越えて走り続けたコントレイルと彼の陣営。
昭和の皇帝シンボリルドルフ、平成の英雄ディープインパクト、令和の希望コントレイル。
そう並び称される日が来ることを固く信じています。
さて、コントレイルの方へと話が逸れてしまい申し訳ありませんが、マヒカルナの話へ戻りましょう。
2020年に上記の快挙を見た私が、翌年に「黒」が10周年を迎えるにあたって協賛レースをお願いしようと思い立ったのは自然の成り行きでした。そしてそれをするなら、自分にとって所縁のある高知県しかありませんでした。そうして2年前の「『黒』十周年特別」は開催されました。何もかもが懐かしいです。
ただ、そんな軽い気持ちで申し込んだ協賛レースで地方競馬に触れたことで、より一層競馬の奥深さを知りました。
それは、どんな競走馬も多くの関係者の思いが詰まっており、個々の物語があることです。
そんなの当り前じゃないかと思われるかも知れません。今思えば当然すぎます。
しかし、自分が関わった協賛レースの競走馬を調べていく内に沸き上がったのは、そんな当たり前のことでした。
地方で走り続ける馬、重賞を制していない馬、勝ち星に恵まれない馬……
中央競馬のように華やかでない、スポットライトの当たらない彼ら彼女らにも隠されたドラマがある。勉強していく中でそうした事実を思い知らされました。今もまだ、競馬の奥深さに気付かされる毎日です。
本記事を書いたのは、そんな日の当たらない競走馬にも様々な物語があることを残しておきたかったからです。今回の記事にて、マヒカルナという競走馬がいたことを少しでも知っていただけたらそれに勝ることはありません。
もちろん、これまで今まで述べたことが綺麗事だけしかないのは自覚しています。しかし競馬という多くの側面を持つ巨大なスポーツの中で、地方競馬について勉強する機会が得られたことは人生において大きな出会いでした。
澄み渡る青空の下で飛行機雲の名を受けて、勝利を手にし続けたコントレイル。
夕闇の中で数少ない勝利をあげた、月の名を持つ競走馬・マヒカルナ。
同期とはいえ、このニ頭は何もかもが正反対です。
ですが、大袈裟と言われようとも私の認識を変えたという点で、マヒカルナはエイシンフラッシュとコントレイルと共に思い出に残る競走馬です。
奇しくも、今年の天皇賞秋は天皇皇后両陛下がご臨席なさるという報道がありました。あれからもう10年以上経つのかと驚きましたが、時の流れとはそんなものなのかも知れません。人の記憶とはあてになりません。
ですので、私自身が記憶にとどめるため最後に「『黒』十周年記念特別」の出走馬を列記して記事を終えたいと思います。
「『黒』十周年記念特別」出走馬
馬名(馬番)順位(最終出走日)
テレグライド(5番)4着(2021.5.23)
アクロマティック(10番)8着(2021.6.26)
コパノミラーレ(3番)3着(2021.8.8)
ゴーアブロード(4番)6着(2021.9.12)
ラストプライドワン(7番)9着(2021.10.30)
ソンリッサ(2番)2着(2021.12.11)
コイツバメカツコ(9番)10着(2022.4.9)
サドンゲイル(6番)5着(2022.4.16)
フクノソミュール(8番)1着(2022.6.26)
マヒカルナ(1番)7着(2022.12.10)
なお、各馬に関係する競走馬ではマヒカルナの最終レースで1着だったヒカリオーソが現役です。また、「『黒』十周年記念特別」の出走馬が先着したことのある重賞馬にフリタイムがいます。恐らくその縛りの中で今も現役なのはフリタイムのみかと思われます。この2頭にはこれからも無事に頑張って欲しいです。(中央馬はディープボンドをはじめとして、コントレイルと同期の現役競走馬応援しています!)
振り返れば、協賛レースとはいえ全人馬が無事に競走を終えられたのは高知競馬関係者皆々様のお陰です。改めて感謝致します。
それでは、長くなりましたが本記事はこの辺りで終えたいと思います。ここまでお読み下さりどうもありがとうございました。
これにて、「『黒』十周年記念特別」が終わりましたことをここに宣言します!

(高知競馬場パドックのマヒカルナ。2022.7.9撮影)
マヒカルナは平成29年1月25日に、父タートルボウル・母グァンタナメラの間の仔として、北海道安平町の追分ファームで誕生しました。母と同じ、黒鹿毛の牝馬です。
馬名のアルファベット表記はMagica Luna(マヒカ・ルナ)。スペイン語で「魔法の月」という意味です。この名で検索すると60年代のキューバの歌や似た名前のプロレスラーがヒットするので、ひょっとしたら直接の由来は違うのかも知れませんが、名前自体の意味としては直訳通りと解釈して良いと思います。何だかロマンチックな馬名ですね。
母の父はフジキセキです。フジキセキは2021年にヒットした「ウマ娘プリティーダービー」にも登場することから、その血を引くマヒカルナも度々SNS等で取り上げられることがありました。
因みに、平成29年(2017年)に誕生した“2020年世代”の代表として、無敗の三冠馬・コントレイルがいます。偉大な父を持つ彼はクラシック後に不調で苦しむものの、2021年のジャパンカップで有終の美を飾りました。三冠馬としては稀にみる、安定感のある名馬でした。
さて、生まれた年こそ同じでも、エリートコースを歩むコントレイルとマヒカルナでは当然行く道も違います。
しかも、運悪く彼女は「ボーンシスト」という骨の発育不良から発生する病気を持っていました。
そこで2018年10月に両大腿骨の手術が行われ、無事に手術は成功します。
そうしてマヒカルナは生まれ故郷を離れました。
彼女が預けられたのは、大井競馬場の調教師・田中正人氏の厩舎です。いよいよマヒカルナの競走生活の始まりです。
これより、彼女が勝利した3戦と個人的に思い入れの深い2戦、計5戦を解説と共にご紹介しましょう。
①新馬戦・大井競馬場(2019年12月3日 第3レース)
レース結果→netkeibaHP
YouTubeでは大井競馬場のレース動画が残っていないため、詳細はレース結果をご覧下さい。
デビュー戦でいきなり一番人気として期待を背負ったマヒカルナ。鞍上は奇しくも、彼女が生まれた年にデビューした藤田凌騎手でした。
そんな中割り当てられた2番という枠番が、マヒカルナに有利に作用します。
結果は、スタートから先頭を譲らない圧倒的な逃げ切り勝ちでした!
逃げ馬・マヒカルナの誕生です。
ツイッターでは、当時の調教師・田中正人氏が投稿した貴重なレース後の様子を見ることができます。
今開催1発目いきなりマヒカルナが新馬戦を勝ってくれました。
— 大井 田中正人厩舎 (@m_tanaka_stable) December 3, 2019
この馬はボーンシストだったのですが手術して入厩後は影響も見せず思う通りに調整できました。
当初から身体の使い方がうまく期待していたので結果が出て嬉しいです。
まだまだ伸び代がありそうで楽しみです。
ありがとうございました‼️ pic.twitter.com/MhPd3YFI3P
田中氏もボーンシストについて触れていますね。
ボーンシストは手術後の予後が見えづらく、調教の開始が遅れたり再手術が必要な場合もあるなど、難しい病気だそうです。それだけに新馬戦で1番人気、そして堂々の1着となった喜びはひとしおだったことでしょう。ツイッターからもその喜びが伝わってくるようです。
因みに、マヒカルナの新馬戦の翌々週に中山競馬場で行われたホープフルステークス(GI)ではコントレイルがデビューから3連勝を飾り、当年のJRA最優秀2歳牡馬に輝いています。
そして、第2戦もマヒカルナは1番人気となります。
ところが、期待叶わずディープメロディーの7着に終わると、その後も結果は振るわず掲示板(5着以内)に入るのも難しい状況が続きました。
2020年9月まで10戦を重ねて1勝9敗(1着1回、3着1回)
当時の様子を調べてみると、どうやらテンションが上がりやすい性格だったらしく、気性に問題があったとのことでした。また、他馬を気にするなどデリケートな面もあったそうです。
せめてもの救いは、三戦目の桃花賞で共に走ったアクアリーブルが南関東牝馬二冠、ネーロルチェンテがノースクイーンカップを制したことでしょうか。
結局「伸び代」を見せられない悔しい結果のまま、高知競馬場の田中伸一氏の厩舎に転厩となりました。
なお、大井での最終戦は9月25日でしたが、その翌々日に中京競馬場で開催された神戸新聞杯ではコントレイルが勝利しています。そして翌月、史上3頭目の無敗の三冠牡馬が誕生しました。
②「黒」10周年記念特別・高知競馬場(2021年5月23日 第6レース)
レース結果→netkeiba
2021年春、競馬界隈では困惑が広がっていました。
コントレイルが昨秋に続いて、4月の大阪杯でも敗北したためです。
無敗の三冠馬が連敗するのは初めての事でした。それどころか、三冠馬がクラシック直後に連敗するのでさえ前代未聞です。彼を取り巻く逆風は、初夏の宝塚記念を回避したことでより一層強くなっていきました。
時を同じくして、マヒカルナも苦しい戦いが続きます。
2020年11月の高知デビュー以降、年を跨ぎ半年間で12戦0勝。2着3回、3着2回、掲示板には5回と健闘するものの、いまいち勝ちきれないレースが続きました。
そんな中、2021年5月23日に彼女が出走したのが本レースです!
本ブログをお読みの方の中には、当時レースをご覧になった方もいらっしゃるかと思います。
(当時の様子については『個人協賛レース"高知競馬「黒」十周年記念特別”のお知らせ』『高知競馬の個人協賛レースの記念品を頂いた話』をご覧下さい)
丁度5月25日がソウマトウ先生作・黒の連載から10周年だったこともあり、何かお祝いしたいなあと思って協賛したレースでした。余談ですが、6月以降は本競馬場の協賛レースに希望者が殺到し予約困難となっていたので、タイミング的に助かったと思ったのが懐かしいです。(理由はこの日の第9レースを見れば分かります)
さて、高知競馬はレースがYouTubeにて公開されていますので、せっかくなので掲載いたします。
パドック解説 3:19'13″~
メッセージ紹介 3:42'40"~
ファンファーレ 3:44'40"~
レーススタート 3:45'39"~
フクノソミュールが1番人気となったこのレース。
かつて地方重賞戦線で大活躍したアクロマティック、国内9競馬場で出走経験のあるコパノミラーレが名を連ね、コイツバメカツコには高知競馬初の生え抜き女性騎手・別府真衣騎手が手綱を取るなど、華やかな馬柱となりました。
(高知競馬組合様には感謝してもしきれません)
ところが、レース内容は1番人気のフクノソミュールが先頭で引っ張っていく展開になったものの、なんと最下位人気のソンリッサが直線で猛然と追い上げるという波乱のレースに!
最下位人気の馬があわや差し切り勝ち寸前とあって、3連単が10万馬券に化ける大荒れとなりました。
1着が1番人気のフクノソミュール、2着に奇しくも黒帽のソンリッサ、3着には2番人気のコパノミラーレが入線し、着順通りの結果に。(3番人気のサドンゲイルはなんとか5着)
そんな中マヒカルナは7着でした。1番枠という逃げ馬のマヒカルナにとって絶好の枠順だったものの、フクノソミュールの調子が良すぎて先頭を取れなかったのが惜しまれるところです。
なお、ソンリッサとともに上がり最速(最終直線での速さ)を記録したテレグライドは本競走が引退レースとなり、アクロマティックも1か月後に引退します。アクロマティックの引退レースではマヒカルナがそれを見守るかのように殿となっていました。
以降、2021年内にコパノミラーレ(8月)、ゴーアブロード(9月)、ラストプライドワン(佐賀転厩後の10月)、ソンリッサ(12月)が引退していきます。
特にソンリッサは本レースの走りが印象的で応援していただけに、引退はとても残念でした。
③ファイナルレース・高知競馬場(2021年8月8日 第7レース)
レース結果→netkeiba
マヒカルナの全3勝の中で最も印象深い勝利となったのが、本レースです。
高知競馬に転厩後勝ち星に恵まれなかったマヒカルナは、この日4度目の「ファイナルレース」に臨みました。
「ファイナルレース」について説明しますと、簡単に言うと高知競馬が独自に試みている「記者選抜レース」です。
ただ、記者選抜と言っても対象となるのは近況で勝利をあげられていない競走馬です。レース名に「一発逆転ファイナルレース」と名付けられているように、予想困難な競走馬同士で編成することで、馬券配当的に盛り上げようというのが趣旨なわけです。
予想するにはどの馬がくるかは分からない、鞍上で判断しようにも騎手のテクニックでどうにかなる馬ならばここにいないはず……、と競馬ファン泣かせのこのレース。
しかし、それにも関わらず8月8日のレースには豪華なメンバーが集まりました。
まずはサブライムカイザー。
中央競馬で3勝(連対6回、複勝圏内15回)、しかも障害競走も経験したことのある実力馬です。
次にエスペランサリュウ。
こちらも中央出身馬で、高知が生んだ天才・福永洋一氏の息子である福永祐一騎手を背に中央で勝利をあげています。(福永祐一騎手はコントレイルの主戦騎手)
最後は一番の注目、スワンボートです。
中央で3勝、しかも札幌記念(G2)に出走経験のある歴戦の競走馬です。
そして何よりも、名門オンワード牧場最後の現役競走馬として競馬ファンに愛された馬でした。
そんな実力馬が集まったファイナルレースですが、当日の高知県は前日に台風10号が通過し、翌日は台風9号の接近が予想される大荒れの状況でした。
最終競走となったファイナルレースはその影響をもろに受け、競馬場は大雨が叩き付けるという最悪のコンディション……
しかし、馬場の状態はなんと「良」!?
暗闇の中開催されたこのレースで、マヒカルナは競走生活最高の輝きを見せます。
パドック解説 6:30'50"~
ファンファーレ 6:50'49"~
レーススタート 6:51'55"~
2番人気のシシークラリスがスタートに失敗すると、12番人気のスピーディダブルと10番人気のチェリージャーマンが先行争いするという予想外の展開に!
そんな中、冷静だったのがマヒカルナでした。
第2コーナーでは先頭を走るスピーディダブルにピッタリとマークし、向こう正面で1番人気のエスペランサリュウが徐々に上がる構えを見せると、内から掬う様に先頭を奪います。
そして3コーナーでは先行組3頭が一団となって進むのかと思いきや、ここで鞍上・石本純也騎手が勝負に出ました。一気にスパートをかけたのです。
その頃、二番手にはあのスワンボートが上がってきます。マヒカルナとは違い、追込み型の脚質を持つスワンボートにとって第4コーナーでこの順位は絶好の好位置でした。恐らく、直線での力勝負に持ち込むつもりだったと思われます。
ところが、この日のマヒカルナには問題になりませんでした。
なんと逃げ馬にも関わらず、上がり最速でゴールを駆け抜けたのです!!
結果は2着のスワンボートに9馬身差をつける大差。実況の橋口アナウンサーをして、直線に入ったばかりだというのに「後続を千切りました」と言わしめる圧勝劇でした。
マヒカルナ、めでたく高知転厩後初勝利です。
因みにマヒカルナは7番人気、2着のスワンボートは9番人気。そして出遅れたものの3着に入ったシシークラリスは、2番人気として何とか意地を見せました。
まさにこれこそがファイナルレース!、とでもいうべき結果ですね。
なお、翌日の天候は晴れだったものの案の定不良馬場だったそうです。やっぱり……。
④C2-5・高知競馬場(2022年6月25日 第6レース)
レース結果→netkeiba
逃げ馬・マヒカルナが真骨頂を見せたのはこのレースだったと思います。
中央で勝利経験のあるユイノシワザ、2017年のツイントップ特別(浦和競馬場)で中央馬相手に勝利したアールケイワンが出走するなど、個性ある競走馬が出走した本レース。
前走では中団から伸びて4着だったのが評価され、3番人気で競走に臨みます。
ここで彼女は、新馬戦を彷彿とさせる走りを見せました。
パドック解説 3:19'15"~
ファンファーレ 3:40'08"~
レーススタート 3:40'37"~
スタートから、マヒカルナ・エンパワード・サノラカによる3頭の先頭争いが始まり、マヒカルナがトップに立つものの、エンパワード(2番人気)がマークするように2番手につけます。
注目の1番人気のトラストミーは、中団に付けて脚を温存し、得意の差し切りを窺う姿勢を見せました。
こうして、1番~3番人気がそれぞれ自分に有利なポジションにつく負けられない展開。
しかし、マヒカルナが終始2番手から2,3馬身差をつけると、向こう正面から徐々に上がってきたエリーストーム、直線で追い上げてきたグリムカレッジを振り切り、そのまま逃げ切ってゴールイン!!
一般的に、逃げ馬が有利とされる重(不良)馬場だったこの日。
一度も先頭を譲らないこの走りは、鞍上・塚本雄大騎手の戦法と、逃げ馬・マヒカルナの脚質がうまくかみ合い、双方息が合ったからこその勝利でした。
なお、翌日26日は盛岡競馬場でコントレイルの名を冠した「コントレイル特別」が開催され、阪神競馬場では同期の三冠牝馬・デアリングタクトが宝塚記念で3着に入る活躍を見せていました。
その前祝いといったらこじつけすぎでしょうか。
しかし、これがマヒカルナにとって最後の勝利となりました。
⑤小暑特別・高知競馬場(2022年7月9日 第9レース)
レース結果→netkeiba
この日、私・影野は高知に用事があったため、それならと高知競馬場に足を伸ばしました。
もちろん、マヒカルナに会うためです。
2022年に入ってからも、サドンゲイル・コイツバメカツコが4月に、フクノソミュールが佐賀に転厩後の6月に登録抹消と「『黒』十周年記念特別」の出走馬の引退が相次ぎ、とうとう現役競走馬はマヒカルナ一頭のみになってしまいました
特に、フクノソミュールは佐賀転厩後も暫くは掲示板入りしていましたので登録抹消には驚きました。
と同時に、早くしなければ協賛レースに出走した競走馬に会えなくなるかも知れないとも思いました。
そこで前日は池袋で「喜びの会」があったものの、丁度翌日に高知に行く予定があったので高知競馬場まで行ったのです。幸運にも、この日はマヒカルナの出走日でした。
【高知競馬場スタンド】

当日は割と閑散としておりました。スタンドは出入り自由です。
なお、3階には来賓室や特別観覧席があり、協賛レース出資者はそちらでレースを見ることができるそうです。くう~、あの時現地に行けてればそっちで見たかった……!!
【コース】

高知競馬場はTVでお馴染みの芝ではなく、1周1100mのダート(砂)コースです。
スタンドとコースからはやや距離があるものの、立ち見ならかなり近くで走っている馬たちを見ることができます。実際に目の前を10頭もの馬が走っていると凄い迫力!
【施設内の様子】


昔は競馬場というとダークな雰囲気でしたが、近年改修が順次行われているそうでこんな感じの綺麗な空間でした。ちょうどこの年の4月にリニューアルオープンしたとのことで雰囲気も明るかったです。
【売店の蕎麦】

小腹がすいたので少し遅い昼食。他には串物やおでん、あとは屋外の露店にはアイスクリンがありました。
【アイスクリン】

「『アイスクリン』じゃなくて『アイスクリーム』じゃないの?」と思う方もいらっしゃるかも知れませんが、誤記ではなく実在する高知名物デザートです。
詳細は検索頂ければ分かる通り、牛乳の代わりに脱脂粉乳を用いたシャーベット状の氷菓を指します。この日は夕方に売店が閉まってしまったため残念ながら食べられなかったのですが、高知県内ではポピュラーなお菓子です。
ということで写真は2019年に桂浜で買った時のもの。爽やかで美味しい!
(夏に高知の観光地に行けば大抵売ってますので、土佐観光の折にはぜひともご賞味あれ)
さて、競馬といえばもちろん賭け事です。これらの収益によって地方競馬は運営され自治体に還元されています。因みにそのお陰で入場も無料でした!(※今年の5月から入場料は100円となっております)
そこで私も買ってみました。データとかそんなの関係なく、応援も込めてマヒカルナに単勝2000円。
【単勝馬券】

他にも少々馬単や連単も買いました。
ところが、前レースで勝利しているにも関わらず、どの競馬新聞を見てもマヒカルナは低評価でした。当日の出走メンバーやコンディションもあるとはいえなぜなのか。納得いかずパドックへと向かうと、その理由が分かりました
【パドックの様子】


こちらが高知競馬場のパドックです。ここでレース前の出走馬を目の前で見ることができます。この時の馬の様子や馬体を見て、馬券師の方々はどの馬が勝つかを予想するのです。
そして待っていると、いよいよマヒカルナが現れました。
【パドック内のマヒカルナの様子】



しかし、マヒカルナの様子を見ているとどうにも落ち着きがありません。厩務員が何とか宥めようとするものの、あっちでソワソワ、こっちでもソワソワ……。
他の出走馬が既に騎手を乗せているというのに、マヒカルナだけ随分と時間が掛かってしまいました。恐らく、大井にいた頃と同じくデリケートな気性が出てしまったのでしょう。流石にこれでは心配になります。馬券発売締め切り時点で、とうとうマヒカルナは最終人気となってしまいました。
ですが、例えこの場で一人しかいなくても私だけはマヒカルナを信じようと、スタンド最前列で彼女を見守ります。そうしてレースが始まりました。
パドック解説 5:01'40"~
ファンファーレ 5:20'38"~
レーススタート 5:21'21"~
ところでレースとは関係ないのですが、実は第5レースのパドック解説の際に影野が映ってたりします。身バレ恥ずかしいので言いませんけども……。
さて、レース内容ですがご覧の通りの結果でした。
【レース結果】

残念ながら掲示板入りすらならず。
最下位人気ながら7着に入ることができたのは善戦ともいえなくないですが、しかし負けは負けです。悔しかったです。
でも同時に、マヒカルナのレースを間近で見ることができて良かった、というホッとした気持ちにもなりました。
【レース後のマヒカルナ】

レースが終わり出走馬が帰っていきます。
彼ら彼女らの健闘に拍手をし、そしてマヒカルナの雄姿を収めるためカメラを向けました。その最後の写真が上の画像です。
レンズ越しにまた会おうねと声を掛け、その時こそは勝って欲しいなあなんて考えていたものの、或いはもしかしたらこれが……、と悪い予感も頭をよぎりました。
その予感は的中し、これがマヒカルナを現地で見た最後の姿になりました。
この競走以降は8戦0勝、複勝圏内に2回、掲示板入り3回と結果は振るわず、12月10日の第5R「えひめまどんな特別」を以て競走馬登録が抹消されました。
最終戦は10頭中7番人気で、着順は9位。
引導を渡したのは、かつての東京ダービーの覇者でありGI勝利をも期待されたヒカリオーソという超大物でした。また、このレースでは競走生活晩年に数度顔合わせしたエリーストームも名を連ねています。重賞を制していない地方競走馬の最後の花道としては余りある、華やかな馬柱でした。
その後の彼女の行方については、関係者でない私にはもう知る術はありません。恐らく今後も表舞台に出ることはないでしょう
奇しくもこの月のJRAカレンダーには、前年秋のラストランを勝利で締め括った「同期」のコントレイルが、花形ホースとして紙面を飾っていました。
思えば、私が競馬を深く見るきっかけになったのは2012年の天皇賞秋でした。
当時の私は競馬について、本場欧州では貴族のスポーツと見做されていると頭では知っていたものの、単なるギャンブルという認識でしかありませんでした。賭け事という、競馬の数ある側面の一つしか見ていなかったのです。
しかし、勝利したミルコ・デムーロ騎手の最敬礼を見た時その偏見は裏返りました。
エイシンフラッシュの隣でローマの騎士のように、天皇皇后両陛下に最大の敬意を示したデムーロ騎手。
彼のその姿を目にしたことで、競馬とはなんと気品のあるスポーツなのだろうと感銘を受けました。我が国の競馬でこういう光景が見られるとは思いませんでした。
ただ、それさえもまだ偏見に満ちた見解でした。
2012年の天皇賞秋が終わってから競馬について調べてみると、我が国における競馬の歴史が長いこと、その中で多くのドラマが彩られたこと、国際的にも日本の競馬の評価が高いこと、欧州では形骸化してしまったクラシックレースが今も格の高い競走形態として残っているなど、初めて知る事ばかりでした。
競馬が洗練されたスポーツ文化であることを知らなかったことに、ただただ恥じ入るばかりです。かつて、オグリキャップがあれだけの社会現象になったのも当然だと頷かされました。もしもあの時エイシンフラッシュの末脚が炸裂していなかったら、デムーロ騎手の規約に背いた敬礼がなければ、今こうして本記事を書くこともなかったことでしょう。本当に大きな出来事でした。
しかし、調べれば調べるほど後悔することもありました。
競馬(或いは他のスポーツでも)好きな方なら共感いただけるかと思いますが、過去の名勝負をリアルタイムで観られないのがなんとも惜しいのです。
特に私の競馬に対する認識が変わった2012年の秋、その丁度一年前にオルフェーヴルが中央クラシック三冠を達成しましたが、もう一年早く競馬を好きになっていれば大偉業を目にすることができたのにと後悔しきりでした。
それだけに、2020年にコントレイルが三冠を達成した時はとても嬉しかったです。もう三冠馬は生まれないんじゃないか、目にすることはできないのではないかと思っていたのに、史上3頭目の無敗の三冠馬の誕生です。夢中にならない筈がありませんでした。
競走生活中も今も、成し遂げた成果とは裏腹の評価しか与えられていない彼ですが、紛れもない歴代の名馬です。成績が物足りないという向きもあることは存じていますが、間違いなく時代を代表する競走馬です。
ハンディキャップを、災害を、厄災を乗り越えて走り続けたコントレイルと彼の陣営。
昭和の皇帝シンボリルドルフ、平成の英雄ディープインパクト、令和の希望コントレイル。
そう並び称される日が来ることを固く信じています。
さて、コントレイルの方へと話が逸れてしまい申し訳ありませんが、マヒカルナの話へ戻りましょう。
2020年に上記の快挙を見た私が、翌年に「黒」が10周年を迎えるにあたって協賛レースをお願いしようと思い立ったのは自然の成り行きでした。そしてそれをするなら、自分にとって所縁のある高知県しかありませんでした。そうして2年前の「『黒』十周年特別」は開催されました。何もかもが懐かしいです。
ただ、そんな軽い気持ちで申し込んだ協賛レースで地方競馬に触れたことで、より一層競馬の奥深さを知りました。
それは、どんな競走馬も多くの関係者の思いが詰まっており、個々の物語があることです。
そんなの当り前じゃないかと思われるかも知れません。今思えば当然すぎます。
しかし、自分が関わった協賛レースの競走馬を調べていく内に沸き上がったのは、そんな当たり前のことでした。
地方で走り続ける馬、重賞を制していない馬、勝ち星に恵まれない馬……
中央競馬のように華やかでない、スポットライトの当たらない彼ら彼女らにも隠されたドラマがある。勉強していく中でそうした事実を思い知らされました。今もまだ、競馬の奥深さに気付かされる毎日です。
本記事を書いたのは、そんな日の当たらない競走馬にも様々な物語があることを残しておきたかったからです。今回の記事にて、マヒカルナという競走馬がいたことを少しでも知っていただけたらそれに勝ることはありません。
もちろん、これまで今まで述べたことが綺麗事だけしかないのは自覚しています。しかし競馬という多くの側面を持つ巨大なスポーツの中で、地方競馬について勉強する機会が得られたことは人生において大きな出会いでした。
澄み渡る青空の下で飛行機雲の名を受けて、勝利を手にし続けたコントレイル。
夕闇の中で数少ない勝利をあげた、月の名を持つ競走馬・マヒカルナ。
同期とはいえ、このニ頭は何もかもが正反対です。
ですが、大袈裟と言われようとも私の認識を変えたという点で、マヒカルナはエイシンフラッシュとコントレイルと共に思い出に残る競走馬です。
奇しくも、今年の天皇賞秋は天皇皇后両陛下がご臨席なさるという報道がありました。あれからもう10年以上経つのかと驚きましたが、時の流れとはそんなものなのかも知れません。人の記憶とはあてになりません。
ですので、私自身が記憶にとどめるため最後に「『黒』十周年記念特別」の出走馬を列記して記事を終えたいと思います。
「『黒』十周年記念特別」出走馬
馬名(馬番)順位(最終出走日)
テレグライド(5番)4着(2021.5.23)
アクロマティック(10番)8着(2021.6.26)
コパノミラーレ(3番)3着(2021.8.8)
ゴーアブロード(4番)6着(2021.9.12)
ラストプライドワン(7番)9着(2021.10.30)
ソンリッサ(2番)2着(2021.12.11)
コイツバメカツコ(9番)10着(2022.4.9)
サドンゲイル(6番)5着(2022.4.16)
フクノソミュール(8番)1着(2022.6.26)
マヒカルナ(1番)7着(2022.12.10)
なお、各馬に関係する競走馬ではマヒカルナの最終レースで1着だったヒカリオーソが現役です。また、「『黒』十周年記念特別」の出走馬が先着したことのある重賞馬にフリタイムがいます。恐らくその縛りの中で今も現役なのはフリタイムのみかと思われます。この2頭にはこれからも無事に頑張って欲しいです。(中央馬はディープボンドをはじめとして、コントレイルと同期の現役競走馬応援しています!)
振り返れば、協賛レースとはいえ全人馬が無事に競走を終えられたのは高知競馬関係者皆々様のお陰です。改めて感謝致します。
それでは、長くなりましたが本記事はこの辺りで終えたいと思います。ここまでお読み下さりどうもありがとうございました。
これにて、「『黒』十周年記念特別」が終わりましたことをここに宣言します!
