今回の扉絵は、ケイトの部屋の一角が描かれています。

エミリコの肖像画が掛けられた壁際と机。机の上には人型のぬいぐるみがありますね。今更語るまでもないケイトの「大切なもの」です。

ということは、このスペースは第10話でケイトが「ここにあるものは私(ケイト)の大切なものなの!」と言っていた場所と同じということになります。


そんな場所に掲げられたエミリコの肖像画。これはつまるところ、ケイトにとってエミリコも「大切なもの」だということです。

ケイトがエミリコを大切に想うシーンは何度も描かれていますが、こうもさりげなく明示されると微笑ましいですね。ケイトにとってエミリコはベストパートナーなのです。

柱には「大切なものは、特別な場所に」とあるように、ケイトとエミリコが互いに「大切」「特別」だと思い合っていることがとてもよく伝わってきます。部屋に一角だけでこんなにも尊い光景が描かれるとは、何度見てもため息が出てきますね。


ところでこのエミリコの肖像画ですが、「どこかで見たことあるような……」と感じた方は相当なシャドーハウスマニアかと存じます。

実はこの肖像画、単行本第1巻の裏表紙と一緒なんですよね。

気になる方はポーランド語版を出版しているWaneko社の公式ツイッターアカウントが画像を公開しておりますのでそちらからご覧下さい。(Przed Wami obwoluta pierwszego tomu naszej czerwcowej nowości - Shadows House!)


ちなみに1巻発売当時のアニメイトの購入特典はこのエミリコが印刷されたSCFカードでした。

本当は本記事にてそのSCFカードを紹介したかったのですが、部屋のどこを探しても見つからず……。

ケイト嬢はちゃんと大切なものを特別な場所に置いてあるというのに我ながら情けないなあ。そろそろ部屋片づけしないと……。


まあ私の近況は置いときまして、本題にいきましょう。

これまでケイトは自身にとって「大切なもの」を守るために闘ってきたわけですが、そんな彼女の闘いは前回を境に大きく変わる気配を見せています。

なぜなら、扉絵にも描かれている「星」を与えられたからです。

ケイトの過去を振り返れば、自分という存在を問うための旅が、エミリコとの出会いによっていつの間にか「大切なもの」を守る抵抗の日々へと変わっていきました。

それが、とうとう自身を信頼してくれた仲間の期待を叶えるための闘いへと変貌しようとしているのです。劇中において、ケイトはそれを「使命」だと語りました。


ところが、そんな決意をあざ笑うかのように難題が降りかかります。

ケイトの決意はいきなり困難に阻まれました。
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冒頭に引き続き扉絵について語らせて頂きますが、此度ケイトの手に入れた「星つきの勲章」がぬいぐるみと一緒に置いてあるのって凄いことですよね。

なぜって、ケイトにとって「星つきの勲章」は単に大切なものだというだけでなく、エミリコによって与えられたと考えている証拠だと思うからです。要するに、ケイトは自身の力のみでなく、エミリコの助けがあったからこそ「星つきの勲章」を手に入れられたと認識しているのではないでしょうか?

でなければエミリコから貰った「大切なもの」(=ぬいぐるみ)と並べて置いている筈がありません。いや、そうに決まっています!尊いっ!


……と、まあ扉絵を見た瞬間に私はこう考えていたのですが、ケイト嬢がどんな考えで「星つきの勲章」を『大切なものスペース』(私が独断で名付けました)に置いたのかは彼女のみが知るところです。上記については私の想像(妄想)として捉えて頂けますと助かります。


ただ、少なくともケイトは「星つきの勲章」を重いものだと考えていることは間違いないでしょう。私物として濫用しようなどとはこれっぽちも考えていないのは明らかです。

現に、ケイトはエミリコから「似合っています」と褒められたものの、嬉しさや功名心といった感情を一つも出さずにこう言っています。


「みんなが私を選んでくれた」
「バーバラの想い」


みんながケイトに期待を寄せてリーダーにしてくれたという事実、そしてバーバラがどんなに困難に直面しても手放さなかった勲章をケイトに託したという重み。

その二つの願いをひしひしと感じているからこそ、手にした地位とは裏腹に、ケイトは自分に課せられた責任の重みをより実感したのでしょう。

これまでの「星つき」とはあくまでシャドーハウスの制度の一つであり、ケイトにとっては自身の悲願を叶えるためのステップでしかありませんでした。

しかし、「選挙」という方法によってこどもたちの支持を受け、その上で「星つき」に選ばれたということはそれに報いる責任がケイトにはあります。

そのことについて、ケイトは「使命」が増えたと語りました。

まさに、ケイトはこれから「使命と責任」を背負っていくのです。同期組や10班の班長としてリーダーシップを発揮してきたケイトが、これまでと比較して10倍もの人数をどう率いていくのか要注目であります。


ただ、今話をお読みの方は既にご存じかと思いますが、ケイトの星つき生活はいきなり困難に見舞われます。

前任者のバーバラが重篤な状態で発見されたからです。

サポートとなる他の3人の「星つき」を指名し、星つきの仕事について引継ぎをしようとした矢先にこの事態です。エヴリンから毅然として下さいと窘められても、流石のケイトも平静ではいられませんでした。煤を出して顔を覆うばかりです。


さて、一見厳しそうに見えるエヴリンの発言ですが、命を預かる救護班の務めを果たすにはこのくらい気を強く持たなくてはならないということでしょう。

それに、救護班長のスザンナはバーバラの容態に涙し、ギルバートは懲罰房にいる状況です。残った救護班員は自分とバートラムのみとあっては余計に気を張っていたとしてもおかしくありません。それもあって、動揺するケイトに一言申したのかも知れませんね。

でも、そんな冷静沈着なエヴリンが第143話では「どうして…!」と動揺していたわけですから、当時の彼女の焦りが分かろうというものです。今回のエヴリンの姿を見たことで、エヴリンという少女についてより深く知りたくなってきました。


ただ、細かく見ていくとエヴリンの発言には、救護班特有の芯の強さだけではなく別の意図もあったことに気が付きました。実は、この時のケイトとエミリコにはいくつか問題行動があったからです。

一つ目はケイトが「バービー」と呼んだこと、もう一つはエヴリンがケイトに「貴女の“生き人形”を貸してもらえますか?」と聞いた際にエミリコが「勿論です!」と即答した点です。

これ、どちらもシャドーハウスのルールではアウトです。

今回の第154話では所々で「バーバラの生き人形」「別室で修理中です」といったエヴリンの発言があり、これを見て“生き人形”の設定について改めて思い出した、という感想がSNSで見受けられました。

私もエヴリンの発言を見てシャドーハウスの初期の頃を思い出したのですが、確かに洗脳から解けていないシャドーにとって“生き人形”は作り物なんですよね。シャドーハウス的にはエヴリンの発言の方が真っ当なのです。

ですが、ケイトはバーバラの“生き人形”を名前で呼ぶし、ケイトの“生き人形”はポートレイトを着ているのに勝手に発言する……。

エヴリンからすれば、リーダーが初日から気を抜いていると思ったことでしょう。そう考えるとケイトに「毅然としてください」と言った理由も分かろうというものです。もしもサラだったら「勝手に『顔』が動いて!」「緩みすぎにも程があるわ!」と怒ることは確実ですね。(第90話参照)


しかし、エヴリンの発言が仮にそんなケイトの様子を指摘したものだとしたら少し怖くなってきました。

第90話の時は、倒れたエミリコを助けるために動いたルウとベルを見て、ケイトは洗脳が薄れていると勘づいていました。

すると、今回のケイトとエミリコを見てエヴリンも何らかの違和感を覚えていた可能性もあると思います。よくよく考えてみますと、救護班はすす病の治療も行っているので、その際に洗脳が解けた“生き人形”を見たこともあるでしょうしね。

だからといってエヴリンが珈琲のことや洗脳について知っているとは言い切れませんが、過去の治療の中で『そういえばすす病の治療後に“村”とか“人間”とか言いだした生き人形がいたわね』とか『文献で見た人間の構造と“生き人形”ってそっくりだったわ』と思い返したとしたら、エヴリンも何らかの真実に辿り着いている可能性は否定できません。

何だかそう考えていくと、「バーバラの生き人形」と言っている時と違い、エミリコについて「貴女の“生き人形”」と言っている時は生き人形という台詞に『“ ”』が付いているのも何らかの伏線に思えてきました。
(単行本収録の際に修正されるかも知れませんが)

考えすぎかもしれませんが、こどもたちの棟№1美少女の彼女の内面がますます気になってきますね。今後、エヴリンの掘り下げがあれば是非とも読んでみたいものです。


エヴリンに関連して、今回のお話で見逃せないのはケイトの「最初の仕事」でしょうか。

前記事でも触れましたが星つきの人数は4名で固定されているようです。よって、残りの3名をどう決めるかが重要であります。

エミリコは開口一番「…ジョン様?」なんて言っていますが、煤を出しているのを見るとケイト的には問題外と感じているようです。

最も多くのこどもたちから「星つき」に相応しいと認められたケイトが、果たして誰を「星つき」に相応しいと考えているのか。

その選抜メンバーによって今後のケイトの戦略が見えてきそうですね。
(同期組で固めるのか、サラやパトリックといった無能力者を抜擢するのか、年長者や実力者をバランスよく揃えるのか、秘密を共有しているオリバーやジョンを加えるのか、etc)

個人的には前回も書きましたが、エヴリン・オリバー・ジョンといったメンバーで見てみたいです。(実力者・秘密の共有・同期で丁度いい感じですし)


しかし、しかし。

今はそんなことを考えている場合ではありません。前リーダーが危急存亡の秋を迎えているのですから。

「第三の能力」を持つエヴリンでさえ処置できない事態に直面し、ケイトはエミリコに語り掛けた「誰一人欠けることなく大人と戦うこと」の難しさを否応なく叩きつけられました。ただでさえリーダーとしてプレッシャーが掛かる中で、早くもケイトの理想は閉ざされようとしています。


そして、そんな彼女に忍び寄る謎の影。

ケイトの目の前に“顔の見えない人形”が姿を現しました。

この顔の見えない人形はまるで意志を持っているかのように立っています。ということは、何らかの意図があってケイトと接触しようとしているに違いありません。

普通のこどもたちならば、わざわざ顔の見えない人形の服を着る必要はありませんから、その中身は絞られるでしょう。


ラムか、アンソニーか、エドワードをはじめとする大人か、マリーローズ&ローズマリーのいずれかです。


ですが、バーバラが倒れ、エミリコが離れ、同期もいない中でケイトが一人きりになるという、彼女にとって最も弱いタイミングを狙いすましたことを鑑みれば、恐らくアンソニーの可能性が高いのではないでしょうか?

振り返れば、今までのケイトはどんな困難な局面でも強く振舞っていました。

お披露目のダンスの時も、制限時間が近づいて不合格が現実味を帯びた時も、バーバラ達から亡霊事件の濡れ衣を着せられそうになった時も、イザベルミラベルから嫌がらせを受けた時も、ダグラス班から班員をからかわれた時も、星つきの居住棟への潜入に失敗しそうになった時も、ギルバートから勧誘された時も、彼女は毅然さと気高さと冷静さを失わずにいました。


しかし、そんなケイトが心折れたと思われる出来事が二度ありました。

一度目はエミリコに名前を付ける直前に、ぬいぐるみを払い落とされた時です。当時のケイトは豹変した友を目の当たりにして、恐怖のあまり立つこともままなりませんでした。

二度目はジョンとギルバートの決闘直後に、エヴリンからジョンの右腕は使い物にならないと宣告された時です。それを聞いたケイトは顔を覆って絶句していました。

気丈さが印象強いケイトですが、やはりそこは年相応の少女です。エミリコがいない時や仲間が傷つきそうな時は、彼女とて冷静ではいられないのです。


ただ、もしも最後に現れた顔の見えない人形がアンソニーだとしたら、ケイトが打つ手を失くした絶好のタイミングで登場したことに納得です。

同時に、ケイトを“生徒”にするためにここまでするのかと、計算通りに進んでいるのをただ見ていたのかと問い詰めたくなります。

なにせバーバラとエドワードを引き合わせたのはアンソニーとルイスなわけですから、バーバラが倒れることまで計算に入れて、ケイトを孤立させるべく誘導したと考えられるからです。

これらの推測が合っていたとすれば、アンソニーという人物の狡猾さに改めて驚愕を覚えます。彼のその執念の原動力がどこにあるのか全く理解できません。不可思議です。


しかし、どうせならケイトにはその計算を上回って欲しいと思います。かつての仲間が傷つくのを黙って見ているような男の門下を潜るようなケイトは見たくありません。

もっとも、推測に推測を重ねていますので、アンソニーがここまで想定していたのかは分かりませんし、そもそも最後の顔の見えない人形がアンソニーと確定しているわけではないですが……。


でもいずれにせよ、バーバラを救うために残された時間は一日しかありません。

できればパトリックがまたロサ・ガリカ・オフィキナリスを持って来て助けてくれればと思いますし、それがバーバラに効いて欲しいと願わずにはいられません。

しかし、果たしてそれだけでバーバラの心の傷が癒されるかは難しいと思いますし、正直全くの八方塞がりです。


前指導者の危機に揺れるこどもたちの棟。

ケイトの前に立つのは、敵か味方か。光か闇か。

その"人形"は顔だけでなく、意図すら全く見えません。