先週発売のヤングジャンプは大きな注目を集めました。

大ヒット作【推しの子】が最終回を迎えたからです。

【推しの子】と言えば、昨年のアニメ化では社会現象級の旋風を巻き起こしていました。

特にyoasobi氏の手掛けた「アイドル」はアニメに関心のない層にも浸透し、CMなどで耳にすることも多かったです。アニメの大成功により、【推しの子】は一躍日本を代表する連載漫画へと駆け上がっていきました。


ただ、正確に言うと【推しの子】は連載当初から注目の的でした。

人気漫画家の赤坂アカ先生と横槍メンゴ先生がタッグを組むという話題性、これまでになかった物語設定、多くの魅力的なキャラクター達、そしてサスペンスやラブストーリーを織り交ぜたエピソード……

こういった多くの要素を含んだ【推しの子】は瞬く間に多くの読者を惹きつけ、2021年の「次にくるマンガ大賞」ではグランプリを獲得しています。

【推しの子】は「容姿やコネクションを生まれた時から持ち合わせていたら」「この芸能界(セカイ)へのチケットが初めからその手にあったなら」というナレーションから物語が始まりますが、大人気作家同士のタッグと世界的出版社の手によって生まれた【推しの子】は、まさしく誕生と同時に大ヒットが約束されていたと言っても過言ではなかったでしょう。

一つの作品をここまで大きなコンテンツへと育て上げた作者のお二人、そして多くの関係者の並大抵ならぬ努力に思い馳せ、まずは無事にフィナーレを迎えたことに安堵するとともに、お疲れ様でしたという言葉をお送りしたいと思います。


ところで、【推しの子】が連載を開始したのは2020年春ですが、実は掲載号のヤングジャンプ本誌持ってます!

ということで自慢ですが写真をどうぞ!
推しの子

巻頭カラーで輝くルビーとアイ。

もうこれだけでオーラが漂っていますね。こんなにも光が放たれた作品がヒットしないわけがありません。改めて読み返してみて、当時感じたワクワク感が思い出されました。


さて、なぜ私がこの本誌を購入していたかと言いますと、【推しの子】が大ヒットするということが分かっていたからではありません。理由はシャドーハウスの第62話が掲載されていたからです。

煽り文を見たことない方もいらっしゃると思いますので、どうぞこちらもご覧下さい。
62話

察しの方もおいででしょう。第62話と言えばエミリコとショーンの『屋根上デート回』です。あの煌めく見開きページの夜空を見て、これは本誌を買わねば後悔すると感じて購入しました。

それが今になってブログのネタになっているのですから何がどう転がるか分かりませんね。まあ、最近は巻頭カラーとかでない限り中々本誌買えてないですが。部屋掃除しなきゃ……


思い返せばこの頃のケイトは味方が少なく、パトリックやルイーズでさえまだ攻略できていませんでした。それこそ前話の第61話で「同期の絆」がやっと生まれたばかりです。お披露目から間もないケイトの前には険しい道が続いていました。

しかし。

ネタバレになりますので詳しく触れませんが、それが今話では様変わりしました。

第61話でようやく同期の心が開き、第62話でエミリコとショーンがたった二人で希望を胸に決意固めた時には想像もできなかった「絆」が、まさに今、ケイトを頼もしく囲んでいるのです。その中心に凛と佇む姿は「麗しの薔薇」そのものです。遂に、遂にここまで来ました。


ですが、覚えている方も多いでしょう。

煌めく夜空にときめいた第62話のラストが、漆黒の暗闇だったことを。

それは当時の救護班班長・スザンナの姿でした。一対で深夜のこどもたちの棟を歩く彼女達の姿は、それまでのエピソードを忘れてしまうくらい不気味なものでした。


そして今回。

希望に満ち溢れたエピソードを不穏な空気で締めくくったのは、またしても救護班長でした。

エヴリンの冷たい声が秘密基地に響きます。



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冒頭、「一堂に会して」のサブタイトルが記載されていますが、その真上のコマが見事にそれを体現していますね。

左から、エミリコ、シャーリー、ラム、ルウ、ダグラス、ダグ、ジェレミ、ジェレマイア、ステラ、キャンディ、トマス。

クリストファー(=アンソニー)の洗脳を受けずに、または洗脳からいち早く脱したメンバーがケイトのもとに集まりました。

ここにルイーズやパトリック&リッキー、ジョン&ショーンといった、最初期に洗脳から解けた面々がいないのは寂しいですが、それは仕方ないでしょう。アンソニーがこどもたちの棟を牛耳っている今、これだけの人数が揃ったのですから贅沢は言えません。まずは態勢整えて、目指せ打倒アンソニーです。


ところが、そんな風に悠長に構えて読んでたら予想外の展開に驚かせられました。

ジェレミの解説で特製洗脳解毒薬「緩」が紹介されたと思ったら、なんとオリバー組とリディア組がいるではありませんか!?

さらに急性洗脳解毒薬「急」が登場したと思いきや、パトリック組が、ジョン組が姿を現します。ええっ!?

極めつけは、雄たけびを上げるジョンの次です。

そこにはキャンディの指導で洗脳が解けた新人たちが勢揃い!!なんですと!?なんですと!?


あまりの出来事に、ページを捲るたびに「えええ……?」と困惑するやら嬉しいやら。ケイトのことですから1か月間の間何もしてないとは思いませんでしたが、ここまでやってのけていたとは想像以上です。

今現在こどもたちの棟はアンソニーが掌握しているものの、その裏でケイトはこれまで味方にしてきたメンバーをがっちりと繋ぎ止めていました。

現状ケイトが置かれた立場はまだ苦しいですが、贔屓目に見てこどもたちの棟を巡る情勢はアンソニーとケイトの引き分けでしょう。家督争いの行く末は互いに一歩も引かぬまま、再び元のスタートラインへと戻りました。


ただ悲しきは、やはりニコラスが命を落としていたのが確定してしまったことでしょうか。

前回のエピソードにてエヴリン自らモノローグで語っていたため覚悟していましたが、これまで度々見てきたキャラクターの訃報は辛いものがあります。ケイトは秘密基地にいるメンバーの前でとうとう自らの出自を明かしましたが、これ以上の犠牲を出さないため一刻も早く動かねばならないとケイトは考えたのかも知れません。

勲章を叩きつけるケイトと、後に続く仲間たち。

これはアンソニーとの決別の儀に私には見えました。

勲章などという「形」に頼らずとも、今目の前にいる仲間たちとの見えない絆こそがケイトの武器だということです。そして、その「絆」にニコラスやマーガレットも含まれているのでしょう。いや、私に言われるまでもなくケイトはそう考えていると思います。


さて、今話はこれまでのシャドーハウスのおさらいといった趣のあるエピソードでしたが、当然ながらケイト達は読者のために情報交換しているわけではありません。

野暮ながら現実世界の観点から見れば、ソウマトウ先生や担当者様のご意向として読者向けの情報整理としての意味合いもあったかと存じますが、そんなご都合展開はシャドーハウスに似合いません。

一見「説明回」に思える本エピソードの全体像は、見開きにて明かされました。


味方達の中心に立つケイトとエミリコ。


そこに対峙するはエヴリンとイヴです。


そう、これまでの話はエヴリン組に向けられていたのです。

前回がエヴリン視点のエピソードだったとすれば、今回は周囲からエヴリン組に向けて語っていたということですね。たった2話で正反対といえる2方面からのエピソードを読むことができて、これに気付いた時とても興奮しました。やはりシャドーハウスは面白いです!


ところで、面白いと言えば話題を戻しますが、ジェレミが語るシャドーハウスの歴史は非常に興味深かったです。

全部に焦点を当てて書くと時間が足りなくなるので二点に絞りますが、まずはジェレマイアが持ってきた「ドールハウス」

これを見た時、私は「ジェレマイアがこれ作ったのかなあ」とか「アニメ1期のエンディングにこんなのあったなあ」なんて考えながら暢気に読んでいたのですが、実はこのドールハウスなるものはかつて実用性のある道具として使われていたそうです。

どんな風に使われていたのかといいますと、女の子に館の構造やテーブルマナーを学ばせるためだったとか。

ドールハウスの歴史については「日本ドールハウス協会」(こんな協会あるんだ!?)の「ドールハウスの歴史」に詳細が掲載されていますが、こんな用途があったんですね。

ヤンジャンコメント欄にあった識者の方の解説を読んで初めて調べてみたのですが、世の中まだまだ知らないことばかりです。

でもそうすると、ひょっとしたらソウマトウ先生も欧州の歴史に精通しておられますので意図的に描かれたのかも知れませんね。それを自然な流れで登場させる先生、かたやそれを瞬時に見抜く読者。どちらも凄い……!

さすがソウマトウ先生、さすがシャドーハウスファンです!最高!(※自分自身は除く)


あともう一点気になったのは、ドールハウスを開けながらジェレミが語った「16歳のこども…アルフレッド様は」の部分です。

アルフレッドの独白が語られた第198話で彼の姿も描かれていましたが、まさか16歳とは思ってもみませんでした。

シャドーハウスのモデルが19世紀の英国だとしたら、16歳なら成人として結婚していてもおかしくない年齢ですがそれでも若いです。その歳で戦争の混乱や身内の悲劇に見舞われたら、そりゃ理想とかおままごととか言われようが「誰でも歓迎される」そんな理想郷を作りたくなるのも無理ありません。

回想にてアルフレッドは、自身の夢物語をキャサリンは「面白がってくれた」と語っていますが、彼女も同じく16歳だったのでしょうか。それならそうした夢想を語り合っていても不自然ではないですね。(因みに英国では1885年の結婚同意年齢は16歳だったそうです。もっとも実際に結婚するには21歳までは父親の同意が必要だったとのことですが)

すると、そこから計算するとアルフレッドが亡くなったのは70半ばとなります。

まあ、言い方は悪いですが劣悪な環境下では先も長くない年齢ですね。しかもジョゼフの娘にアンソニー産ませたのは還暦前後です。えええ……(ちょっと困惑)

なんか色々考えるとアンソニーの「最も恥ずべき存在だよ」というアルフレッドへの評が妥当に思えてきましたなあ。アンソニーに同意するのは癪ですが、色々考えるとリアルな状況が見えてきて滅入ってきました(そうした妙にリアルな人間の醜態もシャドーハウスの見所ですが)(あとアルフレッド擁護するわけではないですがきっとジョゼフは良い兄貴分だったんだろうなあと想像)


ただ、16歳は成人だと言っておきながら翻すようですが、ジェレミがアルフレッドの説明で「こども」と言っているのが気に掛かります。しかも吹き出し内の「こども」の脇には点が打ってあって強調されているので否が応でも目立ちます。

これ、単純に読みにくいから点が打ってあるとかそういう理由ではない気がします。なんと言いますか、うまく言えないんですがシャドーハウスという館が「こどもたち」という存在に重きをおいていたりとか、それこそかつてのミラーハウスが「こどもたち」の理想郷だったりとか、そんな過去があったのではないかなとふと思ってしまいました(ネバーランドみたいな)

まあ、この点に関しては私の思い過ごしかも知れませんのでこの辺りにしておきます。また考察がまとまったら書きたいなと思います。(ツイッターですら最近低浮上なのにこういうこと言う)


そろそろ今エピソードの話題に戻りましょう。

見開きにて期待のまなざしを向けるケイトの仲間たち。

その先にはこどもたちの棟において、ケイトに次ぐ支持を受けているエヴリン組がいました。
(第153話のランドール「エヴリンもあるかと思っていましたよ」より)

今ここにいるケイトの仲間はケイト含めて13対。ルイーズも含めればルウと共に14対。さらにはダグラスの求心力があれば風紀班も含めて17対がケイトの味方とみていいでしょうか。

しかし、それでもこどもたちの棟で優勢を占めるには足りません。それどころかここでエヴリンに見限られたら、ケイトは仲間ともども窮地に陥ってしまいます。


「ルール違反者は報告します」


この“ルール違反者”は棟のルールを破るケイトのことなのか、はたまた人間としてのルールを踏みにじるアンソニーのことなのか……

こどもたちの棟の運命を左右する救護班長の決断。命運はエヴリンの手に委ねられました。