世界で最も有名な看護師と言えば、やはりナイチンゲールではないでしょうか。

看護師、というよりも一昔前の“看護婦”は「白衣の天使」などと称されていましたが、これはナイチンゲールが「クリミアの天使」と呼ばれていたことに起因しています。

看護婦=ナイチンゲール、というイメージがいかに一般的だったか分かりますね。献身的な活動で傷病者を見守った彼女の影響力は今もなお大きいです。


しかし、ナイチンゲールの功績は戦地における慈愛活動だけではありません。

というより、「当時の欧州における女性の社会進出の先駆者」「男性社会だった軍隊内での女性の地位向上」「衛生概念の普及」「“看護”という業務を医学専門性の高い職業にした」「看護業務の可視化のため統計学を用いてかつ実用性の高いものにした」「衛生学を基本とした病棟の提案」……

等々等々、戦地での直接的な看護業務を遥かに超えた実績を誇っています。もしナイチンゲールがいなかったとしたら、これらの業績はもう少し経ってから複数人の手によって成し遂げられていたことでしょう。そんな社会の大変革を一人の女性がもたらしたというのですから驚きです。


我が国の看護教育は西新橋にあった有志共立東京病院(現在の慈恵大学敷地内)から始まっており、その発祥の碑が建てられています。(先日行ってまいりました)
看護学校発祥の地

こちらの碑文には東京慈恵会医科大学の創始者・高木兼寛氏と米国のM・E・リード女史の名が刻まれておりますが、当地にあった看護教育所はナイチンゲール看護養成所を基に設立されたと言われています。

そう考えると、我が国においてもナイチンゲールの影響というのはやはり大きいと感じさせられますね。


ところで、ナイチンゲールにはもう一つの別称があります。

「ランプの貴婦人(the lady with the lamp)」です。

今から丁度170年前の2月8日、クリミア戦争の経過を知らせる新聞(タイムズ)にてこの名が掲載されました。こちらの呼び名をご存じの方も多いかと存じます。


奇しくも、その170年後の二日前。

シャドーハウスでは「白衣の天使」のメイン回が掲載されました。

では本題に入りましょう。

第212話の主役はエヴリン、そしてイヴです!!


※今回の記事には第212話までの内容のほか、原画展のネタバレが含まれます。ご注意下さい。
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救護班長・エヴリン。

今では星つきとして、そしてケイトの仲間として頼もしい存在になりましたね。

品行方正・規則順守というシャドーハウスにいそうでいない絶妙なキャラクター性、丁寧な口調でいながら強い意志を持つという個性、「第三の煤能力」と評される唯一無二の能力……

そんな彼女は読者から大人気です。加えて、作中でも彼女が人望を集めていると思われる描写は度々あります。

第207話「正義」ではエヴリンの内面について掘り下げられ、その際に彼女の持つある種の弱さが描かれもしましたが、それを経た上でさらにエヴリンに魅せられたというコメントもアプリでは見受けられました。

作中の世界でも、現実世界でも多くの人が惹かれる存在、それがエヴリンという少女なのです。


しかし、彼女が人気なのは従者の力も大きいでしょう。

その名はイヴ。

率直に言って美少女です。彼女は主人に先んじて第57話で初登場しましたが、その時点でイヴの美貌は注目されていました。

シャドーハウスの「こどもたち」(生き人形)は集められた過程もあって美少年・美少女の集団ですが、その中でもイヴは際立っています。作中において登場人物たちから「顔がいい」と評されているのはルウとイヴ、アンソニーくらいではないでしょうか。

第63話「集められる生き人形」では生き人形達を招集する様子が描かれるなど、彼女がしっかりした性格であることを伺わせる描写もありました。

エヴリンとイヴは、まさに絵に描いたような優等生と言えましょう。(実際に「絵に描いた」キャラクターですけどね)


ところが、そう思わせといて実際は違ったなんていうどんでん返しはシャドーハウスでは珍しくありません。

珍しくないというかもはや恒例ですね。今回のサブタイトルに登場したイヴも例外ではありませんでした。


「汚部屋」


なんともまあな個性、というか属性が彼女に付いてしまいました。

いやまあ、忙しい身分だし仕方ないかなあ……。

普段はしっかりとしている分どこかで手を抜いてないとキャパオーバーすること必至でしょうし、ましてや最近は煤珈琲だって飲んでいなかったわけですからね。イヴは自分自身が元からだらしない性格だと認識しているようですが、煤珈琲がなくなったことで疲労感を自覚し、それに伴いこうなったのもあるかと思います。

これまでの描写からは全く考えられなかったイヴの一面を見て、思わず彼女が親しみのある、なんだか身近な存在に思えて微笑ましくなりました。


しかし、イヴの思いがけない一面を見てひとつ思い出したことがありました。

それは何かと言いますと、一昨年開催されたシャドーハウス原画展に展示してあったイヴの設定についてです。

ネタバレになり申し訳ありませんが、あの時のイヴの初期設定にこんな記述があったんですよね。


「小さくて かわいい あいされキャラ」


小さくてかわいいあいされキャラ!?

イヴのビジュアルでこんな設定あったらもはや無敵のキャラです!

今の設定でさえ大人気なのにこんなキャラ付けまであったら恐いものなしでしょう。学園漫画だったらクラスの人気者です。これはこれでシャドーハウスで見て見たかったなあと思いました。(シャドーハウスの世界観でこういったキャラクターが存在し得るかという議論は置いといて)


ただ、今回のエピソードを読んで驚いた部分もありました。

それはイヴとラムが過去に面識があったという描写です。

言葉を選んで述べさせていただきますと、やや唐突感があったんですよね。

確かに、ラムがミラーサイドの外れに住んでいたこと、“ラミー”の件からも分かる通り何らかのハンディキャップを持っていると思われる描写があったこと、これらは過去のエピソードから容易に想像できました。

また、イヴが元々医療関係者がいる家庭で育ったことも納得できます。そうした医者に対する憧れがエヴリンに反映されたのは間違いないでしょう。それは今回のイヴの台詞からも明らかです。

しかしながら、そこからイヴとラムが顔なじみだったとは想像できませんでした。思わず過去のエピソードを確認してしまいました。

このイヴとラムが顔なじみだった件ですが、申し訳ありませんがその伏線となったと思われる描写はまだ見つかっておりません。もし見つかりましたらその際は記事にしようと思います。


ただ、そのことについて調べる過程でちょっと面白いと思ったのが、過去エピソードと今回の第212話を照らし合わせると、昔のイヴとそっくりな人物がいたことが判明したことです。


その人物とはエミリコです。


今回のエピソードではイヴとラムの過去の交流が描かれています。

例えば、イヴが病院に来たラムに対して「初めまして私はエヴリン」とにっこり挨拶しているシーンや、恥ずかしそうに顔を隠すラムに対してイヴがラミーに声を掛けるシーン、いつの間にか二人が打ち解けているシーン等々……

これらのシーンと、単行本2巻で描かれているエミリコとラムの描写がそっくりなんですよね。

例えば、第18話で深夜の見回りをするときの自己紹介で「こんばんは私はエミリコです」と言っているシーンや、第23話のお披露目の間でエミリコが「ラミーちゃん!」と声を掛けるシーン、第24話でラムがエミリコにこそっとお礼を言うシーン等々……


ここで思い出していただきたいのが、イヴの初期設定です。

「小さくてかわいいあいされキャラ」

これってよく考えると、そもそもエミリコに当てはまりませんかね……?

そういえば原画展の別の展示にて、バービーには「口が悪い」「洗脳が解けている子」という初期設定があったものの、それが別のキャラに移ったというソウマトウ先生のコメントがありました。

その別のキャラとはキャンディです。バービーの運動神経の良さはその名残と私は考えています。


となると、イヴに元々あった設定についても、それがどのような形で変遷したかは先生のみぞ知るところではありますが、エミリコの性格にも影響したのかななんて思いました。

それもあってイヴとエミリコに上記のような共通点があり、それを結んだのがラムなのかなと。


今回のエピソードにて、ラムは苦悩に満ちた過去の自分に対して「イヴが小さな船で漕ぎ着け手を差し伸べてくれた」と述べています。

それもまた、第95話のラムの手紙にあった「深夜の見回りで2人に会えて」「私は前向きになれたんだよ」に重なるものを感じます。

こう考えると、今回のエピソードはイヴがメインのエピソードではありますが、同時にラムの成長譚の集大成ともいえるエピソードなのかも知れません。


ジョンとパトリックによる珍道中(?)によって様々なキャラクターが深堀されつつある昨今のシャドーハウス。彼らの活躍によってこれからも多くのキャラクター達の新たな一面が見られるに違いありません。

「最終章」といえども、この作品に登場する個性的なキャラクター達のことがもっと知りたく、そしてもっと長く見たいとそう強く思わせられる第212話でした。