来客のない奇妙な館 ~シャドーハウス考察ブログ~

ヤングジャンプで連載中のソウマトウ先生作、“シャドーハウス”の考察ブログです。

第12話 汚しながら

今回のお話、連載中はあまり評価が高くありませんでした。

単行本の準備があったとはいえ、休載明けで前回の続きはどうなるんだろうと待ち構えていたところに今回のエピソードでしたから、なんだか肩透かしを受けたような気分になったという意見がネット上では散見されました。

かくいう私もその一人でして、コマいっぱいに描かれたエミリコの笑顔や、髪をなびかせながら嬉しそうに掃除するエミリコの躍動感に心奪われたものの、前回との落差に少し物足りなさを感じたものでした。

ところが発売された単行本1巻を読んだ時、このお話を第12話に持ってきたことに納得すると同時に、打って変わって好きなお話の一つとなりました。

詳細についてはあえて触れませんが、このお話があることで単行本第1巻が一つの作品として締まりのある完成品へと昇華されています。

まるでこれまでの11話がこの第12話のためにあったかのようです。

内容はケイトから出るすすをエミリコが掃除する、という単純極まりないお話ですが、考えてみればこれこそが二人の一番自然な関係なんですよね。

二人がつつがなく平穏な毎日を送る。
これ以上何を望むといえましょうか。

二人の元気な姿を見られる。

それだけで幸せではないかと、改めて思い知らされたお話でした。

第11話 お披露目前の二人

なにやら普段と違う面持ちのエミリコ。
扉絵に描かれたその姿は、彼女自身とはかけ離れた存在のように見えます。

それもそのはず、エミリコが来ている服はポートレイトという生き人形が“顔”として役目を果たすための装いです。

なのでこれはエミリコであってエミリコでない、曖昧模糊な奇妙な少女像です。

なんだか不穏な雰囲気で幕を開ける11話、内容もほんのりと怖い不思議なお話です。

 

なお、今回はいつもよりも大分多めにネタバレ要素が含まれていますので、まだ読んでいない方は飛ばすことをお奨めします。

 


 

 

事の発端は、窓掃除をしていたエミリコがポケットからパンちゃんを落としそうになったのが始まりです。

すかさずパンちゃんを掴むエミリコ、ところが体勢を崩し庭に落ちてしまいます。

空前の非常事態、恐らく部屋の外に出るのは固く禁じられているようですが、ケイトは意を決して外に出ます。

幸いにも生垣がクッションになったのか、意識はあるエミリコ。

目が覚めると同時にケイトも現場に到着し、無事合流できました。

ところがケイトにとってはこれで終わりではなく、誰にも見られないうちに部屋に戻ろうとエミリコを急かします。

しかし運悪く途中で別のシャドー家に遭遇してしまいました。

その傍らには同じ班の生き人形、ミアがいます。

 

それに気が付き元気に挨拶するエミリコ。

ついでにケイトにもミアを紹介しようとします。

が、既にやってしまったわと言わんばかりに固まるケイト。

 

相手のシャドー家の少女が訝しげにエミリコを見つめると、隣りのミアも同じ仕草で主人の真似をします。

そして改めてケイトに挨拶をするサラと名乗る少女。

寸分違わずミアも同じ格好をします。

 

これこそが、これまで何度も劇中で言及されてきた生き人形の本分、“顔”としての役割です。

 

はじめて目にすると、不気味以外の何物でもありません。

ましてや、これまで陽気にエミリコに接していたミアが豹変したかのように見えるのですから、なお一層異様さが引き立っています。

それを目の当たりにし、さすがのエミリコも青ざめてしまいました。

 

あざ笑うかのようにからかうサラ対して反論をするエミリコですが、サラのありがたい(?)忠告は止まず、とうとうエミリコを失敗作呼ばわりします。

 

そんなエミリコの手を取って無理矢理この場を立ち去ろうとするケイト。

が、そうはさせまいとミアと挟み撃ちにして行く手を阻むサラ。

 

さんざん小馬鹿にした挙句、ケイトとエミリコを出来損ないとまでこき下ろしておきながら、“偉大なるおじい様”という意味深な言葉と共に失態を告げ口しないから安心しなさいと一方的に立ち去るサラ達…。

 

前回のお話で貴族然としていたケイトと成長の片鱗を見せたエミリコでしたが、この日ばかりはコテンパンにしてやられたかのように見えました。

 

ところが自分は出来損ないなのかと落ち込むエミリコに対し、大切なものを守ろうとしたのだから成長しているわと讃えるケイト。

その言葉にエミリコはもっと成長したいとケイトに訴えかけます。

 

膝こそすりむきはしましたが、互いの心の傷はもう癒えています。

 

この出来事をバネに、今後二人がどう成長していくのか。

シャドーハウスの世界観と共に、エミリコとケイトのこれからに興味は尽きません。

第10話 落ちない汚れ

“天真爛漫、純真、前向き…”

これがエミリコの魅力です。


ただ、それと引き換えに、


“おっちょこちょい、天然、不器用…”

という側面もあります。

 

そんなエミリコが失敗を乗り越え、新たな一面を見せたのが今回のお話です。

 

本を探しているケイトに、これではないかと机に置いてある本を渡そうとするエミリコ。

ところがその拍子に、花瓶を倒し本が濡れそうになってしまいます。

慌てて傍らにあったぬいぐるみを犠牲に間一髪で本が濡れるのを切り抜け、エミリコは一安心。

が、何とか本を守ったかに見えたエミリコにケイトは激怒します。

 

その犠牲にしたぬいぐるみはケイトのお気に入り、大切なものでした。

これまで一度もエミリコの失敗を怒鳴りつけることのなかったケイトのことですから、よほど大事なものだったのでしょう。

エミリコの弁明を聞くことなくお風呂に入ってしまいます。

 

さすがに今回は大失敗をしてしまったと落ち込むエミリコ。

そんなエミリコに今度は落ちない汚れが立ち塞がります。

 

部屋に戻って掃除のマニュアルを見ようにも文字の読めないエミリコ。

寝坊してケイトとお勉強できなかったあの日のことが悔やまれます。

 

ところが、しょげるエミリコにある文面が目に留まります。

それは生き人形の掟についてのお約束…

 

エミリコは気を持ち直すと、なんと濡れてしまったぬいぐるみをきれいに直してしまいました。

 

こんな特技があったのかと読んでいる読者もびっくり。

ケイトも元通りになったぬいぐるみを見て感心しきり。

 

なんと、先程怒鳴った非礼をエミリコに詫びました。

自身が至らなかったと思えば素直に非を認め、相手が過ちの責任を果たしたのであればそれをきちんと受け入れる…

 

もはや貴族の真似事ではなく、貴族そのものと言って差し支えありませんね。

まるで連綿と受け継がれてきた名門貴族の血を引いているかのようです。

エミリコがケイトの鏡ならば、ケイトは貴族の鏡と呼んでも過言ではないでしょう。

 

こう書くと、何をそんなに大袈裟な、と思う方もいるかと思いますが、何かと人は身分が高くなるにつれてこんな簡単なことができなくなるのが相場です。いや、身分の高い低いに拘らず、大多数の人間の本質とも言えます

 

それをこうやって自然と態度に出すことのできるケイトは、既に立派なフロイライン(ドイツ語で令嬢の意)の一員です。

 

さて、ついついケイトへの賛辞を書き連ねてしまいましたが、逆に言えばケイトにこんな振る舞いをさせたエミリコも十分凄いことをやってのけたと思います。

 

というか今回の話の要点はそれでしょう。

しかも別の布で自分のぬいぐるみまで作っていますし。(なぜか分からないけど鳥を模したデザイン、名前は“パンちゃん”)

更に、ケイトの怒りが静まったのと連動するかのように、落ちなかった汚れがバッサリ落ちました。
相変わらず謎の多いすすです。

 

それまで大きな挫折という失敗のなかったエミリコですが、今回のお話で大きく成長した様子がはっきりと描写されました。

 

節目となった第10話は、受け身がちだったエミリコが初めて己を前面に出した、ターニングポイントとして欠かせないエピソードです。

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