婚姻制度について記事を書こうとした動機ですが、「サラの婚姻の相手って誰だろう?」ということを解き明かすための考察がきっかけでした。

なので『まあ記事1本でまとめられるや』と甘い気持ちで始めたのですが、完全にやられました。
全然1本ではまとまらない……。


そもそも悪い癖で「『婚姻』とは何ぞや?」という部分から調べ始めたのがいけなかったのですが、作中での台詞が「婚約」から「婚姻の申請」と変わっていたのは誤算でしたし、それについて解析していたらそれだけで1本分の文章量となってしまいました。

先を見通さずに手を付けるべきではないですね、反省。


さて、私の愚痴は置いておきまして本題に移ります。


一見意味のないように見える「婚姻の申請制度」


このシステムの意義について考察していきます。
今回もネタバレ等含みますのでご注意下さい。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



さて、本題に移る前に前記事の終わりの方をおさらいします。

現在までに登場した大人キャラクター達は

・3階の重鎮(ジョゼフ・ソフィ・ドロシー・ライアン)
・試験官3人組(エドワード・アイリーン・ジェラルド)
・トマス
※偉大なるおじい様は除外

以上の8名が該当します。
しかし、彼らのやり取りを見ているといずれも婚姻関係とは思えません。


よって、なぜ「婚姻」も「婚姻の申請制度」もシャドーハウスに存在するのか意味不明です。
いくら「貴族のまねごと」をするのがシャドーとはいえ、無意味な制度を残置する理由が見当たりません。

そこで、あの制度には何らかの狙いがあるのではないか、という結論で前記事を終えました。
つまりパートナー同士の交際を公認する以外の目的があるということです。


因みに、以前書いた【第66話感想】禁じられた恋 ~マーガレット策士編~という記事では、

婚姻の申請をする=大人になる覚悟がある
↓
館に貢献する気概があると見做される
↓
やる気を認められて出世しやすい


と解釈しました。
身も蓋もないですが、会社組織でも結婚した方が出世も昇給もしやすいのと一緒です。その組織に身を捧げる(あるいは環境を変えにくい)者を厚遇するのはよくある話ですから、それと似たようなものではないかと思ったのです。


ただ冷静に考えると、それってそんなに大事なことなのかと疑問です。

そもそもパートナー同士が相性良くても、一体化するのは自身の生き人形なのだからあまり重要な気がしません。シャドーハウスに現実社会の会社組織を当て嵌める事自体がナンセンスでしょう。

となると、なぜ「婚姻の申請制度」なんてあるのかよく分からなくなってきました。図書室の本に書いてあるほどの制度ですから全く意味を成さない筈がないのですが……。



ところが、ここまで考えたところでサラの助言が役に立ちました。

サラは第66話で、「この制度の重要な部分はね…必ず大人になる覚悟よ」と言っています。
やはり重要なのは「覚悟」のようです。とにかくこどもたちの棟ではそう認識されているのでしょう。

しかし私が注目したのはこの次の台詞でした。


「しっかり選ばないとね 処分されない相手を」


サラはその理由について、婚姻を申請したにも関わらず片方が処分されたら恥だと語っています。だからこそ急ぎすぎは良くないとパトリックを諭していたのです。


ただこの「しっかりと選ばないとね」という台詞を大人から見た場合、違う一面が見えてきます。

それは、大人にとって“お呼ばれ”の判断基準になる可能性が高いということです。


エドワードは第71話で「大人が『こどもたちの棟』へ直接関与できない」と言っており、アイリーンも星つきの報告書を見ることができるのは管理者のみと返しています。

また、ショーンも第63話で「館は2つに分断されている 情報までも…」と推測しています。

つまり、こどもたちの棟で起きていることは大人が知りようがないのです。実際にこれまでの“お呼ばれ”が星つきの報告書を基に決められていたことは、第85話のバーバラとベンジャミンの会話から伺えます。(現在の星つき制度になる前にトマスがどうやって“お呼ばれ”を決定していたのかは分かりませんが…)

そしてマリーローズの“お呼ばれ”はエドワードの独断でしたが、これもエドワードとマリーローズが過去に面識があったからこそであって、情報が皆無だったわけではありません。
結局、星つき経由のデータでしか大人は判断できないのです。


しかし「婚姻の申請制度」があれば違ってきます。

なぜなら、先程のサラの発言を大人側から見れば、星つき以外のシャドーから見た優秀な人物が申請される仕組みだからです。


サラの台詞を鑑みると、婚姻の申請は迂闊にはできません。それは何度も述べた通り、相手が処分されたら後ろ指差されるからです。

ということは、婚姻を申請するにあたって当事者達は、念には念を入れて判断することでしょう。それこそ直前になってやめた例だってある筈です。

しかしそうやって慎重になって申請に至ったということは、大人から見れば質の高い情報となり得ます。なぜなら、少しでも大人になれそうもない者を相手として申請することはほぼないからです。

つまり、星つきの報告書という偏ったデータを「婚姻の申請制度」によってカバーできるのです。


さて、ではまとめましょう。
なぜシャドーハウスに「婚姻の申請制度」があるのかについて、こどもたちの棟とおじいさまと共にある棟のそれぞれのメリットを挙げてみました。


<こどもたちの棟のメリット>
・出世の近道である(と信じさせられている)
・自身達にプレッシャーをかけることで切磋琢磨する。


<おじいさまと共にある棟のメリット>(管理者のメリット)
・星つき以外から見た優秀な人材を把握できる。



概ねこんなところではないでしょうか。

ひょっとしたら、これまで申請をしたのに星つきに却下された例もあるかも知れませんが、その場合も星つきは管理者に報告ぐらいはするでしょう。そうすると管理者はそれを皮切りに「なぜ却下した?」「お前たちから見てこの二人の関係はどうなんだ?」と聞くことができますし、こどもたちの棟の様子を詮索することが可能になります。

今後ジョンがケイトとの婚姻を申請したのに却下されて、それを星つきの報告書で見たエドワードが「泳がせておけばいいものを…。これでケイトに警戒されるじゃないか」と舌打ちするシーンが見られるかも知れませんね。


遡ること58話前。
唐突にジョンからもたらされた「婚約」と「婚姻の申請制度」が、ここまで物語に関わってくるとは当時思いもしませんでした。

まだ婚姻の申請制度の本質は判明しておりませんが、あの名言(迷言)が重要な意味を持っていたように、これからも作中に登場する何気ない台詞が読者を翻弄してくれることでしょうね。