タイトルに「無二の存在」とありますが、ケイトとエミリコにとっては互いこそが「唯一無二」の存在であることは疑いないでしょう。

23度目のカラー扉となった今号のシャドーハウスは、ケイトとエミリコが背中を向け合ったイラストでした。(週刊ヤングジャンプの公式ツイッターから一部見られます→【カラー扉付】)

単行本第8巻と同じく、背中を預け合うことのできるケイトとエミリコの信頼関係は強固です。揺るぎありません。

ケイトとエミリコが多くの困難を共に乗り越えてきた証。まさにそれが表現された構図だと思います。


さて、振り返って自分はどうなんだろうと考えましたが、今のところ私にとっての「無二の存在」はシャドーハウスかなと考えています。

娯楽作品を「無二の存在」と言い切ってしまうのはいささか危ういかと思いますが、それでもぱっと浮かんだのはこの漫画でした。我ながら随分と入れ込んだものだなあと感心(呆れて?)しています。

まあ、それでも後悔はしないと確信していますからこれで良いかなというのが率直な思いです。人ぞれぞれ答えが違っていて当たり前でしょうからね。


今回のエピソードでは、ケイトとエミリコ以外のキャラクターも「無二の存在」がいることが描写されました。

ところが、とある人物に関しては予期しない形でそれが判明してしまいます。
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今回の記事では、サブタイトルの「無二の存在」をキーワードに記事を書いていこうと思います。

本エピソードでは次の三名の「無二の存在」が描かれました。


①ケイトにとってのエミリコ
②オリバーにとってのオリー
③パトリックにとってのエミリコ



①のケイトにとってのエミリコは、これは説明するまでもないでしょう。

シャドーハウス始まって以来、主人公たるケイトとエミリコは様々な試練を乗り越えた戦友です。それどころか、過去編では互いに大切なものを分け与えたかけがえのない相手です。

運命的な出会いを通じ、これまで育まれてきた絆は何人も邪魔できない領域に達しています。たとえフィクションとはいえ、ここまで強い結びつきを持ったペアも珍しいのではないでしょうか?

今回、ケイトは見開きページ(P.4,5)でこれまで見せたことのない怒りのポーズを取っていますが、彼女がここまで怒りを露わにしたのは、他ならぬエミリコに対してオリバー達が危害を加えようとしていたからです。

第4話でも煤を大量に出していたり、第57話では星つきに啖呵切っていたり、第68話ではローブ様に詰め寄るなど、これまでもケイトが怒っているシーンは多々ありました。しかし、これほどの怒気を放っているケイトは初めてです。

今回のケイトに近いシーンを挙げろと言われれば、第10話でエミリコが人形を濡らしてしまった直後の雰囲気が似ているかも知れません。

そう言えば、あの時ケイトが怒った理由は、エミリコが「大切なもの」を台無しにしてしまったからでした。(その後エミリコのファインプレーで修繕されますが)


これらを総合すると、ケイトにとっての逆鱗はエミリコといって良いでしょう。

当初はエミリコがケイトに寄せる敬愛が重いと感じたものですが、これまでの描写や今回の描写を踏まえると、ケイトからのエミリコへの親愛の方がとてつもなく大きいことが分かります。

まさしく、エミリコはケイトにとって何よりの無二の存在なのです。


次いで、②のオリバーにとってのオリーについて見ていきましょう。

オリーは第131話で、研究に犠牲はつきものとして一体化を許容する発言をしていました。

この時のオリーは一言で言ってしまえば“狂気”に尽きます。好奇心を満たすためなら命さえ要らないといった様相でした。

ただ、ケイトからオリーを失う可能性について問われたオリバーは、あの時僅かではありますが煤を出して沈黙していました。

結局、ケイトの説教を聞いたオリバーは「相手がいなくなっては元も子もない」とオリーを諭しますが、もしかしたら元々オリバーは一体化について何か思うところがあったのかも知れません。

第85話では、オリバーとオリーはドリップした珈琲を飲みながら「シャドーと“生き人形”が一緒に考えればよりよく偉大なるおじい様に貢献できる!」とグータッチしていました。

それを思えば、最初からオリバーはオリーを「顔」としてではなく対等な相手として見ていた可能性は高いです。

その上、オリバーはオリーから「オリバー様」ではなく「オリバー先生」と呼ばれることを受け入れていましたし、シャドーハウスのルールから逸脱することが常態化していたオリバー組の洗脳はさほど深くはなかったのではないでしょうか?

ケイトは作中で「頭をぶつけただけで全ての記憶が戻るかしら…」と思案していますが、洗脳から解けるための土壌がオリバーとオリーには備わっていたと考えれば、矛盾はない筈です。

それらの過程を通じて、此度オリバーは相棒たるオリーの大切さを自覚できたということでしょう。

オリバーにとってオリーが「無二の存在」であることを再認識することができてホッとしました。これにはケイトとエミリコでなくても笑顔になりますね。


ただ、一つ懸念があるとすればオリー自身がどう考えているのか分からないという点でしょうか。

ケイトがオリバーのもとを訪ねてから、オリー自身の発言がないので彼がどう考えているのかが完全には読めません。すると、オリーはまだ危険な思想を持ったままなんじゃないかとも解釈できるんですよね。

それに、シャドーの原型は生き人形です。ということは、オリーがオリバーよりも過激な考えを持っていてもおかしくないですし、常日頃ものを考え続けるという研究班の班長という役職を踏まえれば、オリーの洗脳は薄かったとも考えられます。

ならば、悪い意味でオリバーはオリーの影響を受けなかった可能性もあります。オリバーの態度だけでオリーの心の中まで解釈するのは慎重になるべきでしょう。

ケイトの「頭をぶつけただけで全ての記憶が戻るかしら…」という台詞は、オリーはまだ“全ての”記憶を取り戻していないという意味と、オリーが頭を打つ以外に、または頭を打つ前から洗脳が解けていたかもしれないという、複数の意味合いに見えます。

最悪、オリバーには反映されなかった狂気がオリーには潜んでいると警戒した方が得策かと思われます。

まあ、でもきっと考えすぎでしょう。ひとまずは、これが私の考え過ぎであることを祈っています。


最後は、③のパトリックにとってのエミリコについて見ていきましょう。

……さて、これに関してはどう考えたものでしょうか。

パトリックとエミリコの関係を振り返ると、特筆されるのは第30話と第66話です。


第30話は、お披露目で箱に閉じ込められたパトリックをエミリコが励ましたエピソードです。

あの時エミリコは、悲観に暮れるパトリックを嘲笑するでもなく、憐れむでもなく、上辺での同情でもなく、生き人形としての立場を守りながら、彼の自尊心を傷つけることなく語り掛けていました。

あれほどの気遣いを計算ではなく、真心を込めてパトリックに接したエミリコの姿は驚嘆の一言に尽きます。誇張ではなく天使か女神のようでした。

エミリコが渡したラッパスイセンを「花?だから見えないって言ったろ」とパトリックは呟くものの、ついにリッキーと合流したパトリックの手にはラッパスイセンが握られたままでした。

パトリックは、間違いなくあの時エミリコに救われていたのです。その証拠に彼は、第41話で「借りがあるんだ」とリッキーに頭を下げていました。


更に二人の関係が大きくクローズアップされたのが、単行本6巻に収録されている第66話です。(こう書くと悪魔の数字みたい)

パトリックの心が分裂したエピソード、と書けばすぐに思い出して頂けるでしょうか。

詳細に調べたわけではないので不正確かも知れませんが、このエピソードはかなりの人気があります。

公開直後は多くの方がSNSで反応していましたし、未だにファンになったばかりの方がこのエピソードについてツイートすることも珍しくありません。数週遅れで公開・発刊されている海外でも、暫く経ってから66話を読んで情緒かき乱される様子が散見されました。

あの時、パトリックがエミリコへの恋心を自覚した瞬間は、シャドーハウスでもトップクラスの名シーンかと思われます。そのことによって、この二人の関係は大いに注目されることとなりました。
(これ以前から注視している方もいましたが、注目度が高くなったのは確実にこのエピソードからです)

此度、そんな多くの視線が注がれるパトリックとエミリコの接触が描かれたのですから、当然ながら今話も多くの注目を集めました。恥ずかしながら私も、終盤の数ページだけだというのに、初読了後は前半のことがすっかり頭から抜けてしまいました。


しかし、インパクトのあるラストでしたが、あのパトリックから出てきたハート型の煤については意見が割れているようです。

ざっと感想を眺めてみると、

・自身の考えていることを煤の形で伝える能力
・オリバーの嘘発見器と同じような能力
・相手の心を見透かす能力
・精神系の何らかの能力

といったコメントが多かったです。

中には、ジェレマイア達が付けている耳栓と併せて、対エドワードに適した能力ではないかと考察されている方もいらっしゃいました。
つまり、エドワードの音響攻撃を耳栓で防ぎながら、仲間たちに煤で情報を伝えて迎撃するということです。

そうなると星つきと同期組の共闘が見られるかもしれないということですね。おおー、想像するだけで熱い展開です!


私の考えとしては、パトリックの想像したことが煤の形になって発現することから、マリーローズやアイリーンに近い能力ではないかなと想像しています。

マリーローズは煤から亡霊を作っていましたし、アイリーンは自身の煤ですすバトを作っています。

同期組の能力と並べてみれば、

ケイト→操作系
ジョン→攻撃系
ルイーズ→精神系
シャーリー→変身系
パトリック→創造系

となり、丁度良いのではないでしょうか?

ただ、ケイトも煤で翼を作っていることから能力的にやや被るのが難点でしょうか。というか、これではケイトの下位互換になり兼ねないですね。

ですが、これがすす能力でなければパトリックの思考が常に表出する事態になってしまいますし、いずれにせよ煤をコントロールする方向にストーリーは進んでいくと推測されます。

次回、まだ二人きりの夜が続くとのことですから、エミリコがどんな風にパトリックと接するのか楽しみに待つことにしましょう。


それにしても、ここにきて再びパトリックとエミリコの関係に焦点が当てられるとは想定外でした。

パトリックのエミリコへの恋心はいつか決着が付けられることは理解してはいますが、せめて星つきと仲良し作戦が終了してからだと思っていたので、同期組との共同作戦中にこのストーリーが進展したのは良い意味で驚きです。


思えば第66話では、マーガレットから温室に来るよう誘われた際に花を貰った後、パトリックはエミリコへの恋心を自覚していました。パトリックの心は既に、お披露目で花を持って来てくれた少女に奪われたままだったからです。

あの時エミリコは、パトリックに何も要求することはなく、ただただ暗闇の中に楽しみを与えていました。

そして今話では、マーガレットが助けて欲しいと訴えた時と同じようなシチュエーションだったのに、エミリコの手を取ったパトリックからハート形の煤が出現しました。箱越しとはいえ、お披露目で手を合わせてくれた少女の温もりを覚えていたからなのかも知れません。

当時のエミリコは、パトリックに見返りもなしに、癒しを届けていました。


本エピソードを読んだ直後は第66話との共通点を思い出し、改めてマーガレットに憐れみを覚えましたが、こう考えてみるとエミリコのパトリックへの行動は全てが無私でした。

シャドーハウスの価値観の中で育ってきた当初のパトリックにとって、エミリコの言行動は恋心を寄せるのに十分過ぎたことがここから分かります。そして、そんなエミリコに恋愛感情を抱いたパトリックは、やはり純粋な心を持った少年なのでしょう。


主従の枠組みを超えて、シャドーと生き人形が会話をしているシーンは数えるほどしかありません。

今思い出せるだけでも、第11話(サラとエミリコ)、お披露目中(同期内)、第44話(スザンナとエミリコ)、第58話(ケイトとミア)、同期会中(同期内)、第60話と第130話(オリバーとエミリコ)、第129話(シャーリーとエミリコ)くらいでしょうか。
(明確な描写はありませんが、56話のバービーはベンジャミン・スザンナと会話していたと思います。)

ましてや、互いの主従が不在の中で二人きりで会うなど例がない事態です。


シャドーとしてではなく、生き人形としてではなく、等身大の少年少女の二人がどんな会話をするのか。

シャドーハウスにとって未知のコンタクトが始まるかと思うと、なんだか緊張してきました。