ここのところ暑い日が続いていますね。

先週は関東甲信越と東北地方で梅雨が明け、全国に夏が到来しました。きっと今年も、例年と同じく40℃に迫る猛暑日が続くことでしょう。熱中症には注意したいですね。


ところで、温度を表す「あつい」という言葉には「暑い」と「熱い」の二通りの漢字があります。

この使い分けについて、「暑い」は空気中の高温、「熱い」は物体の高温を示すと思っていたのですが、詳細を調べるとどうやら違うそうです。

厳密に言うと「暑い」は気温のみを指し、太陽光や蒸気や湿気といったものの温度は「熱い」と書くのが正しいからだそうです。こうなるともう、違いは文脈や場の状況から判断するしかなさそうですね。一つ勉強になりました。


さて。

なぜこんな初等教育の話をし始めたのかと言いますと、第170話のあるシーンでケイトが「熱っつ…」と呟き手で顔をシーンがあったからです。

この場面を見た時、一瞬「暑い」の間違いではないかと思ったのですが、思い込みは良くないと調べたらそんなことはありませんでした。この時のケイトの周りでは「顔の見えない人形」がせわしなく働き、室内には蒸気や煙が充満していたからです。

恐らくケイトはそれについてぼやいていたのでしょう。こんなちっぽけな言い回しでも、あの時のケイトの気分が良く伝わってきました。


それでは、前置きはここまでにして本題に移りましょう。

ケイトが思わず「熱い」と零すほどの室内。これほどまでに「顔の見えない人形」が動いているのは、彼ら彼女らが大量の食材を調理し運んでいるからです。

その数、ほぼ50人前。

こどもたちの棟の夕食は一同に会して摂るのが普通らしいですが(第61話と第126話参照)、今回描かれたのはそれとは違います。

ケイトが陣頭指揮を執って準備しているのは、お披露目合格後のパーティーです。

あのパーティーについては第44話で描かれていますね。シャドーハウスの主人公交代劇が鮮やかに繰り広げられた名エピソードです。この回を以て、物語の主軸はエミリコからケイトへと移りました。(そしてまた戻ったり戻らなかったり)


しかし、主人公たるケイトですが作中では違います。「新・お披露目」では新人五対が主役に決まっているからです。エドワード風に言えば、主演は新人五対で、演出はエドワードといったところでしょうか。観覧者はもちろん偉大なるおじい様と重鎮達です。

そんな「舞台」の「裏方」となったケイト。

今回の第170話では、あの華やかなパーティーの「舞台裏」が描かれました。
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今回のエピソードは「舞台裏」が描かれていると言いましたが、俯瞰して読んでみると「新・お披露目編」では新星つき体制の人間模様も語られるのかなと感じました。

つまり、新人達のお披露目と「ルイーズとルウ奪還作戦」という二大テーマが描かれる裏で、星つきメンバー達の掘り下げがあるのではないかという推測です。

現在星つきのケイト・オリバー・エヴリン・ダグラスの4対の内、ケイトに関しては第10巻で彼女の過去について語られました。オリバーも、無能力者狩りのエピソードにてキャラの掘り下げがなされています。

そして、第168話ではダグラスの過去エピソードが判明したわけですが、今回はそのダグラスとエヴリンとのやり取りが描かれたことで、エヴリンという少女がどんなシャドーなのかが少しずつ分かってきました。


片や不真面目な実力者男子のダグラス。

片や真面目な実力者女子のエヴリン。


こう書いてみると見事に対照的です。シャドーハウスに連れられてこなかったら、まず交わることのない二人(二対)だったことでしょう。

ですが、今話で尺が割かれた彼ら彼女らの会話を見ていると不思議と良い組み合わせだなとも感じます。というより、主従同士を除くとこれだけ長い時間シャドー同士の会話が続いたのって稀ではないでしょうか?(大抵誰かが割って入ったり、大人数でのやり取りなどが多いため)

それに、会話が長く続くということは相性が良いからだとも言えます。会話の内容を見ていると、どちらも相手をよく観察しているのが伺えますね。ダグラスはエヴリンを「エリート」と揶揄するものの、まあダグラス自身も数少ない「班長」の肩書を持っているわけですからある意味対等に近いと捉えて良いと思います。それが双方引かない、珍しい会話シーンになった理由かも知れません。


さて、ところでちょっと気になったのが、ダグラスがフィンの話題を振った時のエヴリンの反応です。彼女は少し間を置いた後「処分された者の話をしてはいけません」と返しましたが、心なしか少し動揺したように見えます。

これは彼女の洗脳が薄れていることの表れか、優秀であるが故にダグラスの発言を看過できなかったためか、或いはフィンと何らかの関係があった(エヴリンはダグラスより一つ上の世代なので同期だった可能性もあり)、などの理由が考えられますが、それらについてはいずれも手掛かりはない状況です。ひとまずは今後の描写に期待したいと思います。


ただフィンに関しては今後というより近々で言及されるかも知れませんね。

なぜなら、フィンを処分に追いやった張本人・キングが早速登場したからです。

ダグラス曰く「全てが最悪」だったという元班長。一体化した「大人」としてその姿を見せました。しかもケイトが裏工作をしようとしている中で「検問」をするというのですからタイミング的にも最悪です。いやはや抜け目がありません。

キングを目にしたダグラスは顔面蒼白となり陰に隠れています。また、イヴの様子だとエヴリンにも緊張が走っているようです。エヴリンもまた、キングに対して良くない印象を持っているのでしょう。それこそ先程のダグラスの会話から推測するに、フィン絡みで何か知っていることがあるのかも知れません。二人(二対)からすれば会いたくない人物に会ってしまったという心境に違いありません。


ところで、この「検問」はやはりエドワードの指示によるものでしょうかね。ケイトを「反乱分子」と疑う彼ならこれくらいしそうです。トマスは既に失脚していますし、1・2階の権力を掌握したエドワードなら造作もない命令です。それもあってキングに命じて警戒を強めたのでしょう。

「始まる前から問題起こさないでよねダグラス…」と心の中でぼやいていたケイトですが、ダグラス関係なくいきなりピンチに見舞われました。できればすす珈琲すり替え作戦の時のように、シャーリーが助けてくれれば安心なのですが……。


しかしその反面、よくよく考えてみると少々気になるところもあります。

キングの行動にエドワードが関わっている可能性はほぼ100%かと思いますが、そういえばキングってエドワードよりも先輩なんですよね。第167話のダグラスは「うちの班長はクリストファーよりも先輩だったし」と回想していますので、クリストファーの同期だったエドワードはキングの後輩となります。(但し、当時の描写ではクリストファーは既に星つきになっていますので「大人」になった順番は不明ですが)

そうすると、果たしてエドワードの指示を大人しく聞くのかなという疑問も湧きます。

ダグラスはこども時代のキングについて「外面がよかった」と語っていますので実力者であるエドワードに従っている可能性が高そうですが、逆にエドワードに対し、気に食わない“若造”(byトマス)と思っていてもおかしくない気もします。とすればこの「検問」はキングの独断で行った、なんていう推測も成り立つのではないでしょうか。それどころか、この時点でルイスを介してアンソニー(クリストファー)と繋がっているとも考えられますし、突然始まったこの「検問」が誰の発案なのかによってケイトの運命も大きく変わる気配がしそうですね。

個人的には、キングが暇つぶしに気まぐれでやってみただけで、エドワードが『これではケイトに余計な警戒心を与えただけではないか、私の完璧な計画がっ……(怒)』ってお披露目開幕早々歯ぎしりする展開が見たいので、キングには相変わらず「最悪」でいて欲しいかなと思っています。


さて、話が前後してしまいますが、ダグラスとエヴリンの会話にて見逃せなかった場面があります。

それはダグラスがギルバートの名前を持ち出したシーンです。

ダグラスがフィンの名を口にした際、すかさず「処分された者の話をしてはいけません」と述べたエヴリンでしたが、ダグラスから「それが正しさばかりを求めるお前にギルバートが本音を言えなかった理由か」と返されると虚を突かれたのか沈黙しました。

この件に関してエヴリンの胸中を想像すると、ダグラスの指摘は彼女にとって恐らく予想外だったのではないかと感じます。

第146話でエヴリンはギルバートの病床を見舞っていますが、その時のギルバートとの会話は以下のようなものだったからです。

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「私(エヴリン)たちは貴方を救護班の仲間だと思っていました…!」

「…スザンナは違っただろう」

「それは違います」

(略)

「…今自分の気持ちがわかったよ」

「スザンナへの対抗意識から来るものだったんだな」

「皆にもすまなかったと伝えておいてくれ…」

「言葉にしないとお互いの気持ちはわからないものですね」
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かなり省略しているので間の会話は単行本にて確認頂きたいのですが、上で見ても分かるようにこの時のギルバートはスザンナにしか言及していません。エヴリンから『仲間だと思っていた』と問い詰められた時も、自分の内心を省みて本心を理解した時も、ずっと会話の主軸はスザンナとギルバートの関係のみでした。

それは最後の「皆にもすまなかったと伝えておいてくれ」という台詞からも読み取れます。これは自身とスザンナの関係がこじれていたことに対し、巻き込んでしまった周囲のメンバーに対して「すまなかった」と言っているのです。要するに、ギルバートの抱えていた苦悩は全てスザンナに拠るものだったというわけです。


ですが、そうするとこれを聞いていたエヴリンも額面通りに受け取ったことでしょう。当然です、実際にギルバートはスザンナにしか言及していないわけですから。

しかしギルバートからすれば、やはり本当のことを言えなかったという時点でエヴリンにも思うところがあったのではないでしょうか(バートラムにも)。というか涙流す美少女を前にして、その相手の落ち度をぶちまるのは中々気が引けるものです。「…スザンナは違っただろう」と零す直前にギルバートは一瞬沈黙していますが、この戸惑いは言葉を選んでいたのではないかと今更ながらに思います。


さて、ここまで考えたところでダグラスとエヴリンの会話に戻りますが、「貴方の班員もです」とダグラスの仲間の話題を持ち出したエヴリンが、よりによってそのダグラスからギルバートという「仲間」のことを指摘されて言葉を失ったのは実に皮肉です。多分、エヴリンもダグラスの台詞を聞いてようやくギルバートとの関係について考えたのだと思います。

「言葉にしないとお互いの気持ちはわからないものですね」

もしかしたらあの時放った自身の言葉の意味に、エヴリンは今更ながら気付かされたのかも知れません。


ただ、私はここでエヴリンを責めたいわけではありません。むしろ、彼女が星つきになってケイトやダグラスやオリバーと関わることで今後の物語がもっと面白くなるのではないかと思っております。

なぜならケイトもダグラスもオリバーも、「仲間」を非常に大切にするそんなキャラクターだからです。

ケイトはローブ様編を通じて仲間がいるという強さを知り、オリバーは発明や研究を共にし理解できる仲間がいるということに喜びを感じ、ダグラスは過去の悲しみを乗り越えて仲間との時間を大切にしています。

そんな彼ら彼女らと一緒に働き、時間を共にすることでエヴリンという一人の少女シャドーがどう成長し変わっていくのか非常に楽しみです。そして、その流れの中でイヴ個人についても触れられることがあればとても嬉しいです。

今はまだケイトとやや距離を置いているエヴリンではありますが、意外なことにダグラスは既に彼女を「仲間」だと意識しているのが台詞から伺えます。(「大切な気持ちを仲間と共有するくらいいだろ」のシーン)

エヴリンにとってみれば、イレギュラーなケイトや変人なオリバーや不真面目なダグラスと歩を合わせるなんてことは想像もしていなかったに違いありません。しかしその分、彼女の隠された魅力や掘り下げが今後描かれるのではないかと期待もしてしまいます。

新人達のお披露目と「ルイーズとルウ奪還作戦」がこれからのストーリーの大きな二筋ではありますが、その中で繰り広げられる「舞台裏」からもますます目が離せそうにありません。