先々週の土曜日、ドキュメンタリー映画「憧れを超えた侍たち 世界一への記録」が地上波にて放送されておりました。
これは今春に列島を沸かせたワールド・ベースボール・クラシックの日本代表(侍ジャパン)に密着した作品で、優勝後の社会現象を受けて映画館でも公開されていました。(公開期間中は忙しすぎて映画館に行けず)(そういえば令和時代になってから一度も映画館行ってないなあ)
私も時々野球観戦するので視聴したのですが、表には出てこなかった激闘の裏側でのやり取りや選手・首脳陣の素顔が見られてとても興味深かったです。贔屓球団の遊撃手がクローズアップされていると聞いてはいましたが、それ抜きにしても楽しむことが出来ました。大晦日にも紅白歌合戦の裏番組で特集があるそうなので時間があればそちらも見てみようと思います。
ところで、2023年大会の侍ジャパンのメンバーは「史上最強」と言われていました。
眺めてみれば、最年少完全試合の佐々木朗希投手、球界のエース・山本由伸投手、2009年優勝大会の胴上げ投手・ダルビッシュ有投手、前年にノーヒットノーランを達成した今永昇太投手と、ピッチャーだけでも錚々たる選手が集まりました。
野手も、世界一のショートストッパー・源田壮亮選手、令和初の三冠王・村上宗隆選手、トリプルスリーの山田哲人選手、レジェンドから背番号を受け継いだ甲斐拓也捕手と、こちらも球史に残る顔ぶれです。
また、メジャーリーグの日系2世のラーズヌートバ―選手が選出されたことは、将来の日本野球の発展や広がりを感じさせる大きな出来事でした。
ですが、何と言っても一番の注目は「二刀流」こと大谷翔平選手です。
先日の移籍報道では1000億円(!?)という超巨大契約で話題になっていましたね。押しも押されぬベースボールの第一人者です。(山本由伸投手の460億円も凄い)
メジャーリーグで大活躍する彼が、決勝でチームメイトかつMLB最強打者のトラウト選手を三振で切って取った瞬間は本大会のハイライトでもありました。今風に言えば、大谷選手は「持ってる男」です。来年以降の活躍も楽しみであります。
さて、ところで豪華メンバーが集まったWBCですが、これほどの選手達が一堂に会したのは指揮官の栗山英樹監督の人徳に尽きるでしょう。
大谷翔平選手は指揮官が誰でも参加するつもりだった、と会見で明かしていましたが、日本ハムファイターズ時代の監督だった栗山氏が代表監督に就任したことは無視できなかったと思います。そんな二人を「恩師」「師弟」と紹介するメディアも多々ありました。
そういえば、シャドーハウスを振り返ると「主従」という関係は沢山ありますが、あまり「師弟」というのは聞かないですね。
まあ当然と言えば当然で、館のシステム自体が「主従」ありきですし、謀略行き交う貴族社会なのですから当たり前です。エドワードとルイスなんかは良い例ですよね。自分より下の存在を目かけてあげたとしても手放しで慕うとは限りません。それこそ主従同士で疑心暗鬼に陥ることもありうるのは、単行本の15巻でも描かれていました。この館の中では「師弟関係」など望むべくもありません。
しかし、それはあくまでシャドーハウス内での話です。
もしも館の外で育まれた師弟関係があるとしたら、それは現実世界と変わらない関係が実っていることでしょう。
今回の第182話では、かつての「師弟」が信頼関係を取り戻し、そして肩を並べて困難に立ち向かい始めるエピソードが描かれました。
これは今春に列島を沸かせたワールド・ベースボール・クラシックの日本代表(侍ジャパン)に密着した作品で、優勝後の社会現象を受けて映画館でも公開されていました。(公開期間中は忙しすぎて映画館に行けず)(そういえば令和時代になってから一度も映画館行ってないなあ)
私も時々野球観戦するので視聴したのですが、表には出てこなかった激闘の裏側でのやり取りや選手・首脳陣の素顔が見られてとても興味深かったです。贔屓球団の遊撃手がクローズアップされていると聞いてはいましたが、それ抜きにしても楽しむことが出来ました。大晦日にも紅白歌合戦の裏番組で特集があるそうなので時間があればそちらも見てみようと思います。
ところで、2023年大会の侍ジャパンのメンバーは「史上最強」と言われていました。
眺めてみれば、最年少完全試合の佐々木朗希投手、球界のエース・山本由伸投手、2009年優勝大会の胴上げ投手・ダルビッシュ有投手、前年にノーヒットノーランを達成した今永昇太投手と、ピッチャーだけでも錚々たる選手が集まりました。
野手も、世界一のショートストッパー・源田壮亮選手、令和初の三冠王・村上宗隆選手、トリプルスリーの山田哲人選手、レジェンドから背番号を受け継いだ甲斐拓也捕手と、こちらも球史に残る顔ぶれです。
また、メジャーリーグの日系2世のラーズヌートバ―選手が選出されたことは、将来の日本野球の発展や広がりを感じさせる大きな出来事でした。
ですが、何と言っても一番の注目は「二刀流」こと大谷翔平選手です。
先日の移籍報道では1000億円(!?)という超巨大契約で話題になっていましたね。押しも押されぬベースボールの第一人者です。(山本由伸投手の460億円も凄い)
メジャーリーグで大活躍する彼が、決勝でチームメイトかつMLB最強打者のトラウト選手を三振で切って取った瞬間は本大会のハイライトでもありました。今風に言えば、大谷選手は「持ってる男」です。来年以降の活躍も楽しみであります。
さて、ところで豪華メンバーが集まったWBCですが、これほどの選手達が一堂に会したのは指揮官の栗山英樹監督の人徳に尽きるでしょう。
大谷翔平選手は指揮官が誰でも参加するつもりだった、と会見で明かしていましたが、日本ハムファイターズ時代の監督だった栗山氏が代表監督に就任したことは無視できなかったと思います。そんな二人を「恩師」「師弟」と紹介するメディアも多々ありました。
そういえば、シャドーハウスを振り返ると「主従」という関係は沢山ありますが、あまり「師弟」というのは聞かないですね。
まあ当然と言えば当然で、館のシステム自体が「主従」ありきですし、謀略行き交う貴族社会なのですから当たり前です。エドワードとルイスなんかは良い例ですよね。自分より下の存在を目かけてあげたとしても手放しで慕うとは限りません。それこそ主従同士で疑心暗鬼に陥ることもありうるのは、単行本の15巻でも描かれていました。この館の中では「師弟関係」など望むべくもありません。
しかし、それはあくまでシャドーハウス内での話です。
もしも館の外で育まれた師弟関係があるとしたら、それは現実世界と変わらない関係が実っていることでしょう。
今回の第182話では、かつての「師弟」が信頼関係を取り戻し、そして肩を並べて困難に立ち向かい始めるエピソードが描かれました。
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最近出番のなかった我らが主人公・エミリコですが、年の終わりに大仕事をやってのけてくれましたね!
何と言っても今話の注目は、あれだけ疑心暗鬼だったキャンディを味方につけたことです。
前回ラストでボソッと「師匠」と零してしまったエミリコ。今話冒頭のエミリコの表情を見るからに、これは意図に反する言動だったようです。
しかし、こんな逆風をものともしないのがエミリコという少女です。ショーンが「エミリコは自然に人の心を動かせる…!」(第96話)と言ったように、今回も見事にキャンディの心を溶かしてみせました。
それにしても、キャンディ視点の過去のエミリコを見ると、あながちサーカス時代のエミリコは今とあまり変わらないように見えますね。
「えっ、そう?」と思われたら申し訳ないのですが、少なくとも私にはそう感じられました。
例えば、頑張り屋なところは今もそうです。
キャンディの回想によれば、エミリコはサーカスでの雑用(洗濯とか)をこなす傍らで綱渡りを練習していたようですが、こうした部分はケイトに文字を教えて貰っていた時(第4話)や日々学んだことをノートに綴る(第13話)といった、地道な努力を苦にしないというエミリコの姿勢は昔からのものだったことが分かります。
また、今の境遇から抜け出すために自らの頭で考え、アクションを起こすという点も見逃せません。
普通はエミリコのように幼い頃から不遇な環境下だと、大抵は諦めや世の中に対する不明によってズルズルいきそうなものです。
ところが、彼女はそうではありませんでした。
エミリコが洗濯中に綱渡りをするシーンの直前、キャンディがサーカス団を仕切っている様子が描かれていますが、恐らくエミリコは現況を脱するためにキャンディのような花形になることを目指したのではないでしょうか?
「雑用」から解放されて出世するために技術を身に着ける、そのためにはキャンディのようになるしかない……
そうエミリコが考えたのは想像に難しくないからです。
思えば、過去エピソードでもそうしたエミリコの貪欲さを示すエピソードは幾つかあります。
まず挙げられるのはお披露目前夜に「星つき」を目指すと明言したシーンです。(第22話)
この日のエミリコは自分の考えを整理するために「考えないノート」を使っていましたが、その過程の中でシャドーハウスについてもっと知りたいと考えた結果、「星つき」を目指すことに思い至ります。
通常の生き人形であれば普通はそんなこと思いつかないでしょう。ましてやエミリコはケイトという「新人」の生き人形なのです。ケイトが「星つき」を目指すとはっきり言ったのは第53話の時ですから、エミリコは30話以上前から主人に先んじて高みを見据えていたわけです。
こう考えると、エミリコは『自分の置かれた環境を俯瞰する』『自分の現況を把握する』『自分が何をしたいか明確にする』『より良い方向に進むための目標を定める』『そのために必要な行動を起こす』というステップをちゃんと踏んでいるのが分かります。これを無意識に実践していたエミリコは何だかんだで地頭が良いかも知れませんね。
ただこれ。ここまで書いて気づいたのですが、現在の私たちが社会人として必要なスキルそのままですね……
経営者でもサラリーマンでも自営業でも専業主婦でもそうですが、上記に挙げた『自分の置かれた環境を俯瞰する』『自分の現況を把握する』『自分が何をしたいか明確にする』『より良い方向に進むための目標を定める』『そのために必要な行動を起こす』は意識するしないに関わらず重要なことです。
ビジネス書の中には、こんな普遍的なことを如何にも成功のために必要な秘策という風に長々と書いた本も見受けられますが、それだけ基本的な事柄なのです。
しかし、それだけで成功を掴めるほど世の中単純ではありません。こうして慎重に事を進めたとしてもタイミングを逃しては元も子もありません。
ですがエミリコ場合、やる時はやるという思いきりの良さも特徴の一つです。
これに該当するのはエミリコがサーカスから抜け出したエピソードです。
あの時エミリコはサーカスで失敗したことで団長からクビを言い渡されましたが、ショーン達の手ほどきを受けて「選別会」へと臨みます。
当時のエミリコは普通ならそのまま路頭に迷う可能性の方が高かったでしょう。ところがショーン達からシャドーハウスのことを聞くとすぐにシャドーハウスへ行きたいと言い、ショーン達の助けを借りて遂には「選別会」の参加にこぎ着けます。
サーカスで身に着けた身軽さを発揮して校長の部屋へ侵入し、持ち前の勉強熱心さでなんとか「ケイト」という字を名簿に記入し、何が何でも運命を変えようともがき、そしてシャドーハウスへと向かう道筋を立てたのです。
シャドーハウスへ行くことが幸福かどうかはさておき、エミリコの自らの不遇を克服し、未来へと進んでいこうとするバイタリティの強さには全く驚かせられますね。
ソウマトウ先生は以前、pixivFANBOXの記事で「ソウマトウが好きなもの(描くもの)ってずっと『世界を変えられない者が自分に向き合い生きていく日常』なのでシャドーハウスで初めて世界を変えたいと思う主人公になった」(全体公開記事「黒の日」)と語っておられましたが、まさにエミリコはそれを体現したキャラクターといえましょう。
そう、これこそが、これこそがエミリコの真骨頂なのです!流石我らが主人公!!
いやはやしかし。それにしても、こうした「現状の打破」を自然に行うエミリコの優秀さといったらないですね。
今話の途中でキャンディはエミリコについて「何がどうなったら今の立ち位置に…?」と疑問を呈していますが、これまでのエミリコを見てきた読者からすればエミリコがここまでのし上がってきたのは当然すぎる結果です。エミリコくらいのスキルを持っていれば現代日本でも成功するのは確実でしょう。やはり我らの主人公です!
ただ、ここまで長く語っておいて難ですが、個人の努力だけでどうにかなるほど世の中甘くありません。いくら冷静に現況を分析し、緻密な計画を立て、慎重に行動に移し、大胆に事を成す度胸があったとしても限界があるからです。
キャンディの上での発言は恐らくそれを加味したものだと私は考えています。
彼女ほど人生経験があると思われる少女が困惑しているのは、エミリコの実力を認めているものの、それだけで「星つき」に上り詰められたのは何故だという疑問が拭えなかったのでしょう。
しかし、そんなキャンディの疑念を払拭するシーンがここで鮮やかに描かれます。
腹話術でキャンディに語り掛けるエミリコ。
それだけなら、洗脳が既に解けているというキャンディへのメッセージでしかなかったかも知れません。
ですがここでのエミリコの瞳はあくまで真っ直ぐで、そして輝いていました。
これは洗脳に侵された濁った瞳ではなく、どこまでも深く澄んだ瞳です。モノクロでも分かるほど澄んだこの瞳は、エミリコに一切の邪気・敵意がないことをキャンディに伝えるには十分すぎるものでした。キャンディの見開かれた目が、前回ラストのものとは全く様相が違うことがそれを証左しています。ここにはかつてのように伏し目がちな「弟子」はもういませんでした。
この後の「見ていて下さい」と告げるや否や、こびりつきに向かうエミリコの背中といったら頼もしいほどこの上ありません。
箒で飛んで来るこびりつきを打ち、這いずり回るこびりつきを踏みつぶし、師匠のように箒の柄でこびりつきを串刺しにするのかと思いきや、ご自慢の「フミッ」で二連こびりつきを粉砕するエミリコ。
師匠の技を継承しつつもそれでいて堂々と「悪意」に立ち向かうエミリコは、かつてと良いところは変わらない、けれども大きく成長した姿を「師匠」に見せつけました。
心なしかエミリコの表情も輝いて見えます。この眩い限りの一連のシーンがキャンディの瞳を通したエミリコの姿そのものです。なんという希望に溢れた場面でしょうか。なんという躍動に満ちた場面でしょうか。是非ともアニメで見たいシーンであります。
さて、長々とここまでエミリコがシャドーハウスの中で出世したのはエミリコが努力してきたからだと書きました。その考えは間違っていません。
ただ、間違ってはいないものの十分でもありません。何度も書いているように、個人の力だけではどうにもならない、環境や人間関係によって道が阻まれることもままあるからです。
そんなキャンディが見上げた先には、ハラハラしながら従者を見守るケイトがいました。
この時のキャンディの笑みを見るからに、多分ここで全てを把握したのかも知れません。エミリコが成長したのはあのシャドーがいたからこそだ、と。
「雑用」と呼ばれつつもそれに甘んじない気概があった、本気でやりたいから何度もあたいの元へ来て練習を積んだ、周りがやる気ない中でも不貞腐れずに努力を重ねた、陰口を気にせずそれどころか「腹話術」に関心を示し真似ようとした、怪我をしてもめげずに挑戦をする、そして何とか「綱渡り」ができるまでになった……
そうしたエミリコに対し、サーカス時代からキャンディは認めていた節があります。
ですが、その後のエミリコの成長はケイトの存在無くしてはあり得なかったとキャンディは察したのでしょう。或いは、エミリコを気に掛けた過去の自分と今のケイトを重ねていたのかも知れません。だからこそのあの微笑みだったに違いありません。
「綱渡り」
腹話術を使うことで洗脳が解けていることを示した「弟子」に対し、かつての渾名を呼ぶことでこれまた洗脳が解けていることを明かしたキャンディ。
しかし「綱渡り」という名前ももう過去のものです。そして「上等な名前」を付けるでもなく既に素敵な名前が目の前の少女にはあります。
「エミリコ」
この名前がここまで輝かしく描かれたのはそう、第114話以来でしょうか。忘れることはありますまい。ケイトがエミリコに名前を授けたあのエピソードです。
今回のエミリコも主人から名を受け取った時と同じくらいに眩しい笑顔です。「はい!」の返事も何だか輝いて見えます。
そういえば、こんな風にエミリコの台詞の吹き出しのみで幕が閉じられるのは第29話以来ですが、この「はい!」の返事を見て私が思い出したのは、第3話や第12話のラストでケイトに向けていた笑顔でした。
当時のエミリコも実に眩しい笑顔をしておりましたが、いつだって前向きで明るいエミリコはケイトのことを何度も救ってきました。このように自分の存在だけで人を動かすことのできるエミリコは天性のカリスマの持ち主といえましょう。
ここはシャドーハウス、一時も油断ならぬ闇深き場所です。
そしてつい先日、私もケイトとキャンディの目指す先が違うことを懸念しました。彼女達の方向性の違いが今後摩擦をもたらす可能性が高いことは否定できません。
しかし、それでもエミリコさえいれば何とかなってしまうのではないかと、エミリコなら何とかしてくれるのではないかとつい信じてみたくなるのも人情であります。
エミリコを見守るケイト。
エミリコと共に困難に立ち向かうキャンディ。
第182話の事前告知では、ソウマトウ先生のツイッターにて「過去」「現在」という語句が用いられていました。(12/21発売ヤングジャンプ3・4合併号)
ケイトとキャンディ。
相容れない者同士に見えるこの二人の「未来」を繋ぐのは、過去にも現在にも共に過ごす時間があった唯一の人物・エミリコを置いて他にはありません!
最近出番のなかった我らが主人公・エミリコですが、年の終わりに大仕事をやってのけてくれましたね!
何と言っても今話の注目は、あれだけ疑心暗鬼だったキャンディを味方につけたことです。
前回ラストでボソッと「師匠」と零してしまったエミリコ。今話冒頭のエミリコの表情を見るからに、これは意図に反する言動だったようです。
しかし、こんな逆風をものともしないのがエミリコという少女です。ショーンが「エミリコは自然に人の心を動かせる…!」(第96話)と言ったように、今回も見事にキャンディの心を溶かしてみせました。
それにしても、キャンディ視点の過去のエミリコを見ると、あながちサーカス時代のエミリコは今とあまり変わらないように見えますね。
「えっ、そう?」と思われたら申し訳ないのですが、少なくとも私にはそう感じられました。
例えば、頑張り屋なところは今もそうです。
キャンディの回想によれば、エミリコはサーカスでの雑用(洗濯とか)をこなす傍らで綱渡りを練習していたようですが、こうした部分はケイトに文字を教えて貰っていた時(第4話)や日々学んだことをノートに綴る(第13話)といった、地道な努力を苦にしないというエミリコの姿勢は昔からのものだったことが分かります。
また、今の境遇から抜け出すために自らの頭で考え、アクションを起こすという点も見逃せません。
普通はエミリコのように幼い頃から不遇な環境下だと、大抵は諦めや世の中に対する不明によってズルズルいきそうなものです。
ところが、彼女はそうではありませんでした。
エミリコが洗濯中に綱渡りをするシーンの直前、キャンディがサーカス団を仕切っている様子が描かれていますが、恐らくエミリコは現況を脱するためにキャンディのような花形になることを目指したのではないでしょうか?
「雑用」から解放されて出世するために技術を身に着ける、そのためにはキャンディのようになるしかない……
そうエミリコが考えたのは想像に難しくないからです。
思えば、過去エピソードでもそうしたエミリコの貪欲さを示すエピソードは幾つかあります。
まず挙げられるのはお披露目前夜に「星つき」を目指すと明言したシーンです。(第22話)
この日のエミリコは自分の考えを整理するために「考えないノート」を使っていましたが、その過程の中でシャドーハウスについてもっと知りたいと考えた結果、「星つき」を目指すことに思い至ります。
通常の生き人形であれば普通はそんなこと思いつかないでしょう。ましてやエミリコはケイトという「新人」の生き人形なのです。ケイトが「星つき」を目指すとはっきり言ったのは第53話の時ですから、エミリコは30話以上前から主人に先んじて高みを見据えていたわけです。
こう考えると、エミリコは『自分の置かれた環境を俯瞰する』『自分の現況を把握する』『自分が何をしたいか明確にする』『より良い方向に進むための目標を定める』『そのために必要な行動を起こす』というステップをちゃんと踏んでいるのが分かります。これを無意識に実践していたエミリコは何だかんだで地頭が良いかも知れませんね。
ただこれ。ここまで書いて気づいたのですが、現在の私たちが社会人として必要なスキルそのままですね……
経営者でもサラリーマンでも自営業でも専業主婦でもそうですが、上記に挙げた『自分の置かれた環境を俯瞰する』『自分の現況を把握する』『自分が何をしたいか明確にする』『より良い方向に進むための目標を定める』『そのために必要な行動を起こす』は意識するしないに関わらず重要なことです。
ビジネス書の中には、こんな普遍的なことを如何にも成功のために必要な秘策という風に長々と書いた本も見受けられますが、それだけ基本的な事柄なのです。
しかし、それだけで成功を掴めるほど世の中単純ではありません。こうして慎重に事を進めたとしてもタイミングを逃しては元も子もありません。
ですがエミリコ場合、やる時はやるという思いきりの良さも特徴の一つです。
これに該当するのはエミリコがサーカスから抜け出したエピソードです。
あの時エミリコはサーカスで失敗したことで団長からクビを言い渡されましたが、ショーン達の手ほどきを受けて「選別会」へと臨みます。
当時のエミリコは普通ならそのまま路頭に迷う可能性の方が高かったでしょう。ところがショーン達からシャドーハウスのことを聞くとすぐにシャドーハウスへ行きたいと言い、ショーン達の助けを借りて遂には「選別会」の参加にこぎ着けます。
サーカスで身に着けた身軽さを発揮して校長の部屋へ侵入し、持ち前の勉強熱心さでなんとか「ケイト」という字を名簿に記入し、何が何でも運命を変えようともがき、そしてシャドーハウスへと向かう道筋を立てたのです。
シャドーハウスへ行くことが幸福かどうかはさておき、エミリコの自らの不遇を克服し、未来へと進んでいこうとするバイタリティの強さには全く驚かせられますね。
ソウマトウ先生は以前、pixivFANBOXの記事で「ソウマトウが好きなもの(描くもの)ってずっと『世界を変えられない者が自分に向き合い生きていく日常』なのでシャドーハウスで初めて世界を変えたいと思う主人公になった」(全体公開記事「黒の日」)と語っておられましたが、まさにエミリコはそれを体現したキャラクターといえましょう。
そう、これこそが、これこそがエミリコの真骨頂なのです!流石我らが主人公!!
いやはやしかし。それにしても、こうした「現状の打破」を自然に行うエミリコの優秀さといったらないですね。
今話の途中でキャンディはエミリコについて「何がどうなったら今の立ち位置に…?」と疑問を呈していますが、これまでのエミリコを見てきた読者からすればエミリコがここまでのし上がってきたのは当然すぎる結果です。エミリコくらいのスキルを持っていれば現代日本でも成功するのは確実でしょう。やはり我らの主人公です!
ただ、ここまで長く語っておいて難ですが、個人の努力だけでどうにかなるほど世の中甘くありません。いくら冷静に現況を分析し、緻密な計画を立て、慎重に行動に移し、大胆に事を成す度胸があったとしても限界があるからです。
キャンディの上での発言は恐らくそれを加味したものだと私は考えています。
彼女ほど人生経験があると思われる少女が困惑しているのは、エミリコの実力を認めているものの、それだけで「星つき」に上り詰められたのは何故だという疑問が拭えなかったのでしょう。
しかし、そんなキャンディの疑念を払拭するシーンがここで鮮やかに描かれます。
腹話術でキャンディに語り掛けるエミリコ。
それだけなら、洗脳が既に解けているというキャンディへのメッセージでしかなかったかも知れません。
ですがここでのエミリコの瞳はあくまで真っ直ぐで、そして輝いていました。
これは洗脳に侵された濁った瞳ではなく、どこまでも深く澄んだ瞳です。モノクロでも分かるほど澄んだこの瞳は、エミリコに一切の邪気・敵意がないことをキャンディに伝えるには十分すぎるものでした。キャンディの見開かれた目が、前回ラストのものとは全く様相が違うことがそれを証左しています。ここにはかつてのように伏し目がちな「弟子」はもういませんでした。
この後の「見ていて下さい」と告げるや否や、こびりつきに向かうエミリコの背中といったら頼もしいほどこの上ありません。
箒で飛んで来るこびりつきを打ち、這いずり回るこびりつきを踏みつぶし、師匠のように箒の柄でこびりつきを串刺しにするのかと思いきや、ご自慢の「フミッ」で二連こびりつきを粉砕するエミリコ。
師匠の技を継承しつつもそれでいて堂々と「悪意」に立ち向かうエミリコは、かつてと良いところは変わらない、けれども大きく成長した姿を「師匠」に見せつけました。
心なしかエミリコの表情も輝いて見えます。この眩い限りの一連のシーンがキャンディの瞳を通したエミリコの姿そのものです。なんという希望に溢れた場面でしょうか。なんという躍動に満ちた場面でしょうか。是非ともアニメで見たいシーンであります。
さて、長々とここまでエミリコがシャドーハウスの中で出世したのはエミリコが努力してきたからだと書きました。その考えは間違っていません。
ただ、間違ってはいないものの十分でもありません。何度も書いているように、個人の力だけではどうにもならない、環境や人間関係によって道が阻まれることもままあるからです。
そんなキャンディが見上げた先には、ハラハラしながら従者を見守るケイトがいました。
この時のキャンディの笑みを見るからに、多分ここで全てを把握したのかも知れません。エミリコが成長したのはあのシャドーがいたからこそだ、と。
「雑用」と呼ばれつつもそれに甘んじない気概があった、本気でやりたいから何度もあたいの元へ来て練習を積んだ、周りがやる気ない中でも不貞腐れずに努力を重ねた、陰口を気にせずそれどころか「腹話術」に関心を示し真似ようとした、怪我をしてもめげずに挑戦をする、そして何とか「綱渡り」ができるまでになった……
そうしたエミリコに対し、サーカス時代からキャンディは認めていた節があります。
ですが、その後のエミリコの成長はケイトの存在無くしてはあり得なかったとキャンディは察したのでしょう。或いは、エミリコを気に掛けた過去の自分と今のケイトを重ねていたのかも知れません。だからこそのあの微笑みだったに違いありません。
「綱渡り」
腹話術を使うことで洗脳が解けていることを示した「弟子」に対し、かつての渾名を呼ぶことでこれまた洗脳が解けていることを明かしたキャンディ。
しかし「綱渡り」という名前ももう過去のものです。そして「上等な名前」を付けるでもなく既に素敵な名前が目の前の少女にはあります。
「エミリコ」
この名前がここまで輝かしく描かれたのはそう、第114話以来でしょうか。忘れることはありますまい。ケイトがエミリコに名前を授けたあのエピソードです。
今回のエミリコも主人から名を受け取った時と同じくらいに眩しい笑顔です。「はい!」の返事も何だか輝いて見えます。
そういえば、こんな風にエミリコの台詞の吹き出しのみで幕が閉じられるのは第29話以来ですが、この「はい!」の返事を見て私が思い出したのは、第3話や第12話のラストでケイトに向けていた笑顔でした。
当時のエミリコも実に眩しい笑顔をしておりましたが、いつだって前向きで明るいエミリコはケイトのことを何度も救ってきました。このように自分の存在だけで人を動かすことのできるエミリコは天性のカリスマの持ち主といえましょう。
ここはシャドーハウス、一時も油断ならぬ闇深き場所です。
そしてつい先日、私もケイトとキャンディの目指す先が違うことを懸念しました。彼女達の方向性の違いが今後摩擦をもたらす可能性が高いことは否定できません。
しかし、それでもエミリコさえいれば何とかなってしまうのではないかと、エミリコなら何とかしてくれるのではないかとつい信じてみたくなるのも人情であります。
エミリコを見守るケイト。
エミリコと共に困難に立ち向かうキャンディ。
第182話の事前告知では、ソウマトウ先生のツイッターにて「過去」「現在」という語句が用いられていました。(12/21発売ヤングジャンプ3・4合併号)
ケイトとキャンディ。
相容れない者同士に見えるこの二人の「未来」を繋ぐのは、過去にも現在にも共に過ごす時間があった唯一の人物・エミリコを置いて他にはありません!
