先週、単行本16巻の発売と共に嬉しい知らせがありましたね。

原画展の地方開催決定の報です。

昨年8月に行われた渋谷での原画展は、発表当初より「東京会場」と書かれていましたので当時から『他の地方でも開催されるのでは?』という憶測も多くありました。かく言う私も、そう思っていた一人です。

しかしあれから半年。原画展公式HPもシャドーハウスの公式ツイッターアカウントも全く動きがなかったので、正直深読みしすぎたかなと思い始めておりました。ですので、この知らせを受けた時はとうとうきたかと胸躍りましたし、またあの素敵な空間が見られる喜びでいっぱいになりました。実にめでたいです!


気になる開催地ですが、どうやら大阪と福岡で開催するとのことです。

さっそくソウマトウ先生から「東京会場にお越しくださった沢山の方のおかげです!」とのファンサービス溢れたツイートもありましたね。煤(メッセージを書く黒い付箋)が沢山貼られたメッセージボードに亡霊が何体もできたことが、こんな風に繋がったと思うと何だか嬉しくなってきます。


ただ、それよりも何よりも、シャドーハウスという魅力ある作品の力こそが原画展地方開催を後押ししたのは間違いないでしょう。

私としては、普段の行動範囲とは離れた地ですので昨年とは違い足を運ぶのは難しい状況ですが、せっかくの機会ですので時間があればなんとか行ければと考えています。(でも福岡は遠いなあ……)


さて、ところでその直後に公開された第187話にも「原画展 地方開催決定!!!」の報が当然載せられているわけですが、昨年6月の原画展開催の告知と共通する点があるのにお気付きでしょうか?


それは『ダグラスのメイン回』という点です。


あの時公開されていた第167話のサブタイトルは「風紀班」です。その名の通り、ダグラス率いる1班の描写に多くが割かれていました。(当時の記事→第167話 風紀班【感想】)

そして今回も、カラー扉にダグラスの生き人形・ダグが描かれています。ということは、もちろん彼等1対のエピソードが描かれたわけです。なんとも奇妙な一致です。


しかし、二人を取り巻く環境はあの時とは全く違います。

第167話ではダグラスと我らが主人公・ケイトとエミリコとの対峙が描かれていましたが、今回はその対極に位置する人物がダグラス達を惑わそうと「甘言」を弄しました。

目下ケイト最大のライバル・エドワードが、ダグラスの引き抜きのために一気に攻勢をかけます。
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先程、原画展開催の告知のタイミングと第167話について触れましたが、今回奇しくもフィンが再び描かれていますね。

なぜ彼らが登場したのかと言いますと、ダグラスが過去を振り返っているからです。


エドワードから発せられた「侵入者」という語句。

これは館の暮らしが長いダグラスにとって、ケイトを疑うに十分な情報でした。前話ではこれまでのケイトやキャンディの行動を振り返りながら「俺は騙されて…いいように使われていたのか…」と悟り、通信を絶っています。そのせいでケイトの計画は危うく失敗寸前にまで追い込まれました。


今回は更に、ケイトの言動について思い返しエドワードに伝えてしまっていますね。

もっともマーガレットの「葬儀」について聞いたエドワードは、幸運にもあまり重要視していないのでそれは救いでした。

なぜならエドワードの台詞を見ると、外部の儀式を取り入れる=エミリコ&キャンディ侵入者説の補強、という受け止め方に留まっているように思われるからです。

これは恐らく、エドワードは自分の推理が正解だということを確認して平静を保とうとしているからでしょう。

つい先ほど、三階の重鎮達から"お手柄"をなかったことにされたことを思えば理解できます。あんなに汗だくだったのに、ダグラスとの会話がひと段落したら「反乱分子は一掃する!」(バッ)なんて格好つけて上着を羽織るくらいに気力が回復したのを見れば一目瞭然です。エドワード的には「部下」が良い報告をもたらしてくれたとご満悦でしょう。


ただエドワードのいつもの癖ですが、彼の推理が微妙に間違っているのもダグラスの報告を重要視しなかった一因にも思えます。

微妙に間違っていることとは、「侵入者」がエミリコとキャンディ(キャンディは侵入者で合ってますが)ではなくケイトこそが「侵入者」であるという事実です。

もしケイトが「侵入者」だと分かっていれば「葬儀」などという外部の、それも命を認識する儀式を行ったのか深く考えるきっかけになったでしょうし、それこそシャドーハウスとは関係ない"シャドー"がなぜ存在しているのかという部分まで掘り下げられたでしょう。しかし残念ながらエドワードは、ダグラスの報告にはほとんど取り合わず、想定内といった程度の受け止め方でした。

最近ケイトは思うように事が進まないことが度々ありますが、ケイトがイレギュラーな"シャドー"であることはそうそう見抜かれないと思います。この辺りは敵勢力と渡り合う中でケイトにとって大きなアドバンテージになるかも知れませんね。


さて、話がズレかけていますので今話に戻りましょう。

ケイトの話もそこそこに、エドワードとダグラスの会話が館の組織図にまで至ったのは驚きました。ダグラスも「俺をそこまで信頼くださるとは…」と胸打たれたかのような反応を見せています。

本来ならこどもたちには一切明かされない情報、それが知らされたのですから当たり前でしょう。ついにダグラスはダグに目配せをし、ルイーズとルウの奪還作戦の告発を決意するに至りました。

こうなってはもう時間の問題です。ケイトの行状が明るみに出るまであと少しです。


思い返せば、第89話の「甘言」でもエドワードはすす能力をダグラスとサラに見せながら「優秀さを買っている」「大きな才能」と甘い言葉で二対を惑わし、結果的に当時の星つきであるバーバラから離反させるのに成功しました。

多分それと同じ効果を狙ったのでしょう。今回も新星つき・ケイトからダグラスが離反するまで秒読みとなりました。


しかし、今話ではそう簡単にはいきませんでした。

なぜダグラスがすぐにケイトを裏切らなかったかについては今話で様々に語られています。


同期のサラを「すす出し要員」にすると聞いたことでダグラスの中で疑問が頭をもたげた、エドワードの態度がかつてフィンを陥れたキングに重なった、ケイトのこれまでの発言を反芻したことで館への疑問が膨らんでいった……


ダグラスのモノローグを読むと、推測可能なのはこういった事柄でしょうか。どれも強烈な記憶・情報ですから彼が混乱しても仕方ありません。

とうとうラストでは、もっとも身近な存在であるダグにすがるように視線を向けました。


さて、ラストのダグラスについてSNSなどではこんな指摘が見受けられました。

それは第44話でのお披露目パーティーにて、ステージの上でジョンやパトリックがシャドーハウスに疑問を持った時、二人とも揃ってそれが正しいかどうか従者に心の中で投げかけていた描写に似ているというものです。

正直私もラストのダグラスを見て第44話のシーンが頭に浮かびました。そう考えるとこの後のダグラスは、残念ながら再洗脳されてケイトから離反することでしょう。


しかし希望はあります。

第44話のジョン・パトリック、それだけではなく第89話のダグラスとサラの状況と、今回のダグラスとの間には決定的な違いがあるからです。


それは従者が直前に珈琲を飲んでいないことです。


いや、それどころかもしかしたら今回のダグは紅茶を飲んでいる可能性すらあります。エドワードがもし、ダグにも紅茶を用意していたとしたら洗脳が薄まっていることは十分に考えられます。私はその可能性に賭けたいと思います。


実を言いますと、ダグラスがシャドーハウスや偉大なるおじい様を信じられなくなっていると葛藤するシーンで、もう一つ過去に似た描写を重ねていました。


第101話のパトリックです。

あのエピソードの冒頭、彼はケイトから聞かされた館の真実を受け入れられず「そんな考え方は…偉大なるおじい様に逆らうことになるぞ…!」と頭を抱えていました。

ですがその結果は皆様ご存じかと思います。

既に洗脳が解けていたリッキーの涙によってパトリックは完全に館の支配から脱することができました。


もしダグも同じく、洗脳が解けるまではいかなくとも、少しでも薄れていればあの時のパトリックのようにダグラスもケイトの完全な仲間になってくれるのではないかと思います。

扉絵のダグの瞳に映るのが、かつてのリッキーと同じように主人であるダグラスへの信頼であることを祈るばかりです。