先々週、都道府県魅力度ランキングが発表されていましたね。
今年で15回目だそうです。

率直に言ってこのランキングに何の意味があるのか良く分かりませんが、各都道府県の担当者がこの「地域ブランド調査」の結果に一喜一憂する様子がTVで流れていました。
北海道が12年連続の1位とのことで、次いで京都府・沖縄県・東京都となっています。

地域によって特色が違うのだから、所詮は一シンクタンクによる恣意的な選出と言ってしまえばそれまでです。しかし、やはりみんな気になるのでしょう。この日の夕方は盛んにメディアで放映されていました。

ところで毎年繰り広げられるこの狂騒ですが、今年は例年と大きく違う点がありました。

それは何かと言いますと、7年連続最下位(14回の調査で13年最下位)だった茨城県が『万年47位』から脱したことです。
最下位でもニュース、最下位を脱しても大ニュースと、かの県にとっては不名誉ではありますが、この時期だけはほぼ宣伝費ゼロでメディアに取り上げられる美味しい立場を獲得しています。

ただ、以前当ブログでも取り上げましたが、茨城県って割と格好良い歴史があるんですよね。

詳細については過去記事茨の城をご覧下さい。シャドーハウスと茨城県の歴史を絡めて書いた、かなり異色の記事となっております。

当時私は、ケイトのシャドーハウスに対する姿勢を見て「もしかしたらケイトは館に対して反抗するつもりではないだろうか?」と考えたのですが、彼女の目論見については第47話で明かされましたね。
ここからようやく作品の主題がスタートしました。


そして今回。
ケイトと同じく、館への抵抗姿勢を鮮明にする存在が姿を現しました。

その人物の出現によって、再びケイトとエミリコは迷宮へといざなわれることとなります。


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吹き曝しとなった栄光の廊下に佇む、バーバラとエドワード。
そこにはもうマリーローズ達はいません。一瞬の静寂が辺りを支配します。

その静寂を破ったのは、壊れた廊下を見て唖然とするスザンナと、星つきに過失はないと言わんばかりのオリバーでした。

オリバーの発言を聞き一喝するエドワードですが、その表情は苦渋に満ちています。庭園迷路でケイトがゴールした時でさえ見せなかった『顔』です。

まあ無理もないでしょう。
今回の事態は明らかにエドワードの失態です。大失態です。
心の中で自白していますが、バーバラが用意した“引き渡しの同意書”があるわけですから、当然星つきに濡れ衣を着せるわけにはいきません。

エドワードは怒りに打ち震えながら、星つき達とケイトを退去させました。見事、マリーローズとバーバラの絆の勝利です。勝利と言うと語弊があるかも知れませんが、少なくともエドワードに相当の打撃を与えました。前回まで見せていた余裕そうな態度は見る影もありません。

やはりマリーローズ達は、最期の最期まで同期や後輩思いでした。


ところが、バーバラもただでは済みませんでした。

尊敬するクリストファーの言葉を胸に、身体に鞭打ってきたバーバラ。
常日頃こどもたちから誤解を受け、理想を追い求める彼女の心はいつも悲鳴を上げていました。

しかも今回の事態によって、姉のように慕っていたマリーローズの変心だけではなく、身を投げる瞬間まで目の当たりにしてしまいました。
こうなると精神の崩壊は時間の問題です。


栄光の廊下の扉を閉めるバーバラ。気丈なのはここまででした。

こどもたちの棟に戻るや否や、彼女は発作に倒れます。辺りには大量の煤が蔓延していました。

それにすぐさま反応したのは従者のバービーです。ベンジャミンとオリバーも駆け寄りました。スザンナは前話と同様、ケイトを現場から遠ざけます。
そのお陰もあって、ケイト達は『栄光の廊下』と『バーバラの発作』という二つの修羅場から逃れることができました。


ようやくケイトの部屋に辿り着いた二人。

これでしばらくの間は一安心です。きっとケイトは、エミリコと今後の動きについて相談しようと考えていたことでしょう。マリーローズ達亡き今、こどもたちの棟が激変するのはほぼ確実です。


ところが、部屋には正体不明の不審者が待ち構えていました。

ローブを羽織った怪しげな人物。
それを見て、エミリコは目を疑います。

「マリーローズ様…!」

このエミリコの叫びは、後に判明することですがマリーローズが生きていたことに対する驚きではありません。なぜなら、ケイトとエミリコはマリーローズ達の投身に際してある入念な準備を行っていたからです。


その準備とは、マリーローズ達の落下地点に亡霊を出現させることです。

“最後の授業”で敗北しうなだれるマリーローズ達を前にして、ケイトは亡霊の弾性力を利用した救命方法を編み出していました。うまくいくかどうかは別として、ケイトは何としてでも二人を助けようと知恵を絞りだしていたのです。

この方法については既に部屋の中で“煤クッション”として実践済みです。やはりケイトは、最後まで諦めていませんでした。

それを踏まえて解釈すると、エミリコはマリーローズがこどもたちの棟に戻るのが早すぎることに驚愕していたと考えるのが自然でしょう。
栄光の廊下でのエミリコの涙は、悲しみではなく切望の涙だったということです。


ケイトが見せた、窮地に陥った者を助けようとする姿勢。
不審者はそれに対し密かに高い評価をしていました。

ローブの下から正体を現したクリストファーの元従者。
まぎれもなく、それはアンソニーでした。

ケイトをまっすぐに見据えた瞳。その瞳は主人を失い悲しみに暮れていた時とは違い、黄金期のこどもたちの棟を率いていたカリスマそのものです。

アンソニーはクリストファーを失ってもなお、何らかの手段で今まで生き延びてきたのです。


瞬時にローブの下の素顔を看破し、そしてアンソニーの生存を確信していたケイトを褒め称える“人間”。

その自信たっぷりな様子は、これまでこの薄暗い館で生き永らえてきた自負を感じさせます。マリーローズはクリストファーを「自信が欠けていた」と評していましたが、恐らくそれを補佐していたのが、このアンソニーの強烈な性格だったのでしょう。

エドワードやリッキーとはまた一味違った、強力な自信家の出現です。


しかしその言葉の端々には誰とも相いれない、何か良からぬ思想が感じられます。

ケイトの「あなたの目的は何?」という質問に対し「それは一緒のはずだ」と返すアンソニーですが、直前に「僕は人間だ」と明言する人物とシャドーであるケイトの目的が果たして一緒なのかは疑問です。

いや、むしろそうは思えません。
もしかしたら、目的は同じでも手段は違うとでも考えているのではないでしょうか。


ケイトとの論戦に満足したのか、アンソニーは一方的に話を切り上げて去っていきました。
去り際に「…君には僕が必要だ」と言い残していった彼の姿はどこにもありません。きっとダストシュートから逃げたのでしょう。取り残されたエミリコは困惑しますが、ケイトは深く思案し始めました。


「マリーローズはアンソニーのことを『仲間』とは言っていなかった…」


マリーローズはアンソニーのことをケイトに伏せていましたが、かといって全く情報を与えていなかったわけではありません。答えを出さないこと、無論それが答えのような論法もあります。

ケイトは、アンソニーを警戒すべき存在だと判断したようです。


目的は『一緒』
ケイトにはアンソニーが『必要』


差し出す手は敵か味方か。
それを見極めるにはまだまだ時間がかかりそうです。


どれだけ時間が経ったでしょうか。
考えを巡らせるケイトに対し、エミリコは言葉では表しにくい笑顔でこう語りかけました。

「きっと生き延びていますよね!」

『生き延びている』とは、もちろんマリーローズとローズマリーのことです。

エミリコはいつだって前向きで元気。そしてケイトの味方です。
何か本当か分からない曖昧模糊な館の中ですが、それだけはれっきとした事実です。

それを感じ取ったのか、ケイトも元気を取り戻しました。不思議と二人の部屋が明るくなったようです。

ケイトはまだ考えたいことはあると言いつつも、それはまた明日ということになりました。
この日は沢山のことがありすぎましたし、それが良いでしょう。少し休んでからでも決して遅くはない筈です。



しかしそんな和やかなやり取りが館の一室でなされていたのと丁度同刻。
別の部屋では静かなる悲劇が起きていました。


やせ衰えた姿のベル姉妹。

亡霊事件の“真犯人”が見つかったことで、二人はようやくすす管清掃から解放されました。
彼女『達』がいるのは無味乾燥な一室です。


明日からはいつも通りの生活に戻れると言いながら食事を摂るベル。

器を胸に抱えて力なく横たわるベル。


ベル姉妹はこれまで、“二人は一つの存在”を信条として生きてきました。
掃除の時もそうですし、お菓子の味見をするときだってそうでした。

ところがその“生き人形”としての思い込みが、自らの身を滅ぼすこととなります。


食事を摂らないのかと尋ねるベルに対し、疲れたから代わりに食べて欲しいと頼むベル。
きっと彼女は、もう一人のベルが食事を摂れば自身も満腹になると思い込んでいたに違いありません。

元気な方のベルも同じ考えだったようです。
横たわるベルから器を取り上げると、それを完食しました。


しかしこの思考は、エミリコ達が以前気付いた「『命』を意識させないため」の洗脳に他なりません。
器を渡した方のベルは、自分の身に迫る生命の危険信号に気が付くことができませんでした。


片方のベルが食べ終わったのを見て、満足そうに腹部を撫でるベル。
満腹になったという思い込みからか彼女は睡魔に襲われます。

その表情は見えません。ですが言葉を聞いているだけだと、幸せに満ちたような台詞です。


しかしそれからほどなくして、彼女の手から匙が投げ出されました。
恐らく眠りについたのでしょう。

その眠りが、目覚めを伴う眠りなのか否かは分かりません。

力なく垂れ下がった腕と衰弱しきった顔。
それを見る限りでは、どうしても悪い方へと想像が膨らんでしまいます。


この館は、これまで描写されてきたように「死」でさえも悲劇の一部でしかない罪深い場所です。


留まるのも地獄。
進むのも地獄。

かといって少しでも抵抗しようものなら、最悪処分、よくてマリーローズ達の二の舞です。


屋敷の倫理に基づいて生きるバーバラ達。
屋敷の思想に囚われたあまりに非業の運命をたどったベル姉妹。

そうして留まり続ける彼女達にも、否応なく悲劇は襲い掛かります。

しかし進み続けたからと言って、その先に待っているのは成功するか分からない“一体化”、そしてエドワードや重鎮達との権力闘争です。


ならばどうすれば良いのか。
皮肉にも、その答えはアンソニーが語った言葉の中にあります。

「戦い続ける意思」

それを持ち続けるしかありません。


中に住まう者すべてを嘲笑するかのように建つ、奇妙な館。

アンソニーの登場により、物語は新たな展開へと移り変わりました。