来客のない奇妙な館 ~シャドーハウス考察ブログ~

ヤングジャンプで連載中のソウマトウ先生作、“シャドーハウス”の考察ブログです。

各話あらすじ

第11話 お披露目前の二人

なにやら普段と違う面持ちのエミリコ。
扉絵に描かれたその姿は、彼女自身とはかけ離れた存在のように見えます。

それもそのはず、エミリコが来ている服はポートレイトという生き人形が“顔”として役目を果たすための装いです。

なのでこれはエミリコであってエミリコでない、曖昧模糊な奇妙な少女像です。

なんだか不穏な雰囲気で幕を開ける11話、内容もほんのりと怖い不思議なお話です。

 

なお、今回はいつもよりも大分多めにネタバレ要素が含まれていますので、まだ読んでいない方は飛ばすことをお奨めします。

 


 

 

事の発端は、窓掃除をしていたエミリコがポケットからパンちゃんを落としそうになったのが始まりです。

すかさずパンちゃんを掴むエミリコ、ところが体勢を崩し庭に落ちてしまいます。

空前の非常事態、恐らく部屋の外に出るのは固く禁じられているようですが、ケイトは意を決して外に出ます。

幸いにも生垣がクッションになったのか、意識はあるエミリコ。

目が覚めると同時にケイトも現場に到着し、無事合流できました。

ところがケイトにとってはこれで終わりではなく、誰にも見られないうちに部屋に戻ろうとエミリコを急かします。

しかし運悪く途中で別のシャドー家に遭遇してしまいました。

その傍らには同じ班の生き人形、ミアがいます。

 

それに気が付き元気に挨拶するエミリコ。

ついでにケイトにもミアを紹介しようとします。

が、既にやってしまったわと言わんばかりに固まるケイト。

 

相手のシャドー家の少女が訝しげにエミリコを見つめると、隣りのミアも同じ仕草で主人の真似をします。

そして改めてケイトに挨拶をするサラと名乗る少女。

寸分違わずミアも同じ格好をします。

 

これこそが、これまで何度も劇中で言及されてきた生き人形の本分、“顔”としての役割です。

 

はじめて目にすると、不気味以外の何物でもありません。

ましてや、これまで陽気にエミリコに接していたミアが豹変したかのように見えるのですから、なお一層異様さが引き立っています。

それを目の当たりにし、さすがのエミリコも青ざめてしまいました。

 

あざ笑うかのようにからかうサラ対して反論をするエミリコですが、サラのありがたい(?)忠告は止まず、とうとうエミリコを失敗作呼ばわりします。

 

そんなエミリコの手を取って無理矢理この場を立ち去ろうとするケイト。

が、そうはさせまいとミアと挟み撃ちにして行く手を阻むサラ。

 

さんざん小馬鹿にした挙句、ケイトとエミリコを出来損ないとまでこき下ろしておきながら、“偉大なるおじい様”という意味深な言葉と共に失態を告げ口しないから安心しなさいと一方的に立ち去るサラ達…。

 

前回のお話で貴族然としていたケイトと成長の片鱗を見せたエミリコでしたが、この日ばかりはコテンパンにしてやられたかのように見えました。

 

ところが自分は出来損ないなのかと落ち込むエミリコに対し、大切なものを守ろうとしたのだから成長しているわと讃えるケイト。

その言葉にエミリコはもっと成長したいとケイトに訴えかけます。

 

膝こそすりむきはしましたが、互いの心の傷はもう癒えています。

 

この出来事をバネに、今後二人がどう成長していくのか。

シャドーハウスの世界観と共に、エミリコとケイトのこれからに興味は尽きません。

第10話 落ちない汚れ

“天真爛漫、純真、前向き…”

これがエミリコの魅力です。


ただ、それと引き換えに、


“おっちょこちょい、天然、不器用…”

という側面もあります。

 

そんなエミリコが失敗を乗り越え、新たな一面を見せたのが今回のお話です。

 

本を探しているケイトに、これではないかと机に置いてある本を渡そうとするエミリコ。

ところがその拍子に、花瓶を倒し本が濡れそうになってしまいます。

慌てて傍らにあったぬいぐるみを犠牲に間一髪で本が濡れるのを切り抜け、エミリコは一安心。

が、何とか本を守ったかに見えたエミリコにケイトは激怒します。

 

その犠牲にしたぬいぐるみはケイトのお気に入り、大切なものでした。

これまで一度もエミリコの失敗を怒鳴りつけることのなかったケイトのことですから、よほど大事なものだったのでしょう。

エミリコの弁明を聞くことなくお風呂に入ってしまいます。

 

さすがに今回は大失敗をしてしまったと落ち込むエミリコ。

そんなエミリコに今度は落ちない汚れが立ち塞がります。

 

部屋に戻って掃除のマニュアルを見ようにも文字の読めないエミリコ。

寝坊してケイトとお勉強できなかったあの日のことが悔やまれます。

 

ところが、しょげるエミリコにある文面が目に留まります。

それは生き人形の掟についてのお約束…

 

エミリコは気を持ち直すと、なんと濡れてしまったぬいぐるみをきれいに直してしまいました。

 

こんな特技があったのかと読んでいる読者もびっくり。

ケイトも元通りになったぬいぐるみを見て感心しきり。

 

なんと、先程怒鳴った非礼をエミリコに詫びました。

自身が至らなかったと思えば素直に非を認め、相手が過ちの責任を果たしたのであればそれをきちんと受け入れる…

 

もはや貴族の真似事ではなく、貴族そのものと言って差し支えありませんね。

まるで連綿と受け継がれてきた名門貴族の血を引いているかのようです。

エミリコがケイトの鏡ならば、ケイトは貴族の鏡と呼んでも過言ではないでしょう。

 

こう書くと、何をそんなに大袈裟な、と思う方もいるかと思いますが、何かと人は身分が高くなるにつれてこんな簡単なことができなくなるのが相場です。いや、身分の高い低いに拘らず、大多数の人間の本質とも言えます

 

それをこうやって自然と態度に出すことのできるケイトは、既に立派なフロイライン(ドイツ語で令嬢の意)の一員です。

 

さて、ついついケイトへの賛辞を書き連ねてしまいましたが、逆に言えばケイトにこんな振る舞いをさせたエミリコも十分凄いことをやってのけたと思います。

 

というか今回の話の要点はそれでしょう。

しかも別の布で自分のぬいぐるみまで作っていますし。(なぜか分からないけど鳥を模したデザイン、名前は“パンちゃん”)

更に、ケイトの怒りが静まったのと連動するかのように、落ちなかった汚れがバッサリ落ちました。
相変わらず謎の多いすすです。

 

それまで大きな挫折という失敗のなかったエミリコですが、今回のお話で大きく成長した様子がはっきりと描写されました。

 

節目となった第10話は、受け身がちだったエミリコが初めて己を前面に出した、ターニングポイントとして欠かせないエピソードです。

第9話 すす取りの間

まるで磔にあったかのようなエミリコの姿から始まりますが、もちろん彼女への懲罰ではありません。

以前に少しだけ登場した、すす取りの間のお話です。(第3話参照)

風圧ですすを吹き飛ばす設備ですが、かなり強い風が吹くようです。
食品工場や精密機械工場の入り口にはクリーンルームというエリアがあって、身体に付いた埃などを除去したりしますが、それと同じ類のものでしょう。
(余談ですが、工場だと風圧だけでなく、粘着シートが貼ってあるコロコロで服の汚れを取ったりもします。)

その話をエミリコがケイトに話すと、ケイトは興味を持ったようです。
そもそもなぜそんな話になったのかも気になりますが、恐らくはケイトが、
「そんなにすすで汚れてエミリコの部屋も汚くならないの?」
とか、
「そういえばエミリコが部屋から出て行ったあと大きな音がするけど、あれって何?」
とか質問したのでしょう。

掃除していないから恥ずかしいというエミリコをよそに、そんなのは気にしないから見てみたいと話すケイト。
かなり興味津々なようです。

考えてみれば、一日中部屋の中で本を読むか食事をするか、すすだるまを作る毎日。そんな日常を繰り返すケイトにとって、これは数少ない好奇心を満たすチャンスです。

お気に入りのケープを羽織って、いざすす取りの間に参上です。

エミリコが重い鉄の扉を開け、そして中に入るケイト。
入り口脇の計器類を見て、心なしかテンションが上がっているように見えます。
なんだか可愛いな、ケイト様。
しかも自分もやってみたいとか言い出すし…。

思わずすすのようにケイトも吹き飛んでしまうんじゃないかと妄想を爆発させるエミリコでしたが、幸運(?)にもケイトは無事でした。
しかも「すすで出来てるわけじゃないわよ」とエミリコに的確なツッコミを入れる冷静っぷり。
シャドー家として、余裕な立ち振る舞いは既に一人前なようです。

さて、破れてしまったケープが欲しいと申し出たエミリコですが、その理由が、
“部屋に素敵なものがないので、綺麗な柄だから飾りたい”
というものでした。

それを快く承諾するケイトでしたが、このやり取りからは二人の支えあう関係性が見えて、なんだかほっとします。

足りないものを分かち合える。

シャドー家の掟ではない、毎日の生活を通じて育まれた二人の関係が、また一歩前進した回でした。

第8話 部屋の外には

いよいよ今回は、エミリコが部屋の外へとお勤めに行く回です。

連載中は扉絵に並ぶ生き人形達に心躍らせたものですが、単行本だと前回のエミリコの最後の台詞と連動した絵だということが分かり、絶妙な構成に唸らざるを得ません。

今回からエミリコ以外の生き人形が続々と登場し物語が賑やかになっていきますが、それとともに注目したいのが、屋敷の中の書き込み具合です。

まるで私たち読者も館の中に足を踏み入れたかのような描写は、素晴らしいの一言に尽きます。

さて、前回窓掃除の時に会ったミアという生き人形に導かれて広間を歩くエミリコ。
命綱をつけて掃除する生き人形や男の子の生き人形、何やら物騒なマスクを被った集団等々とすれ違って暫くすると、二人の生き人形がいました。

ローズマリーとルウという生き人形です。

どうやらこの4人で一つの班として行動をするようです。

陽気なミアに、おっとりローズ、無口なルウに、純真エミリコ…。

なかなかいい具合の構成ですね。

今回のお話にも見所がたくさんありますが、かなり長くなりますので割愛させて頂き、また別の日に改めて書きたいと思います。

これからの各生き人形達の活躍が楽しみです。

第7話 別の顔

窓を必死で拭くエミリコ。
あまりに落ちない汚れを見て、ケイトは語り掛けます。

「それ、外側の汚れじゃないかしら?」


直後の表情、「外?」という台詞、窓を開けるケイトに驚く姿…。

この様子だと、エミリコは屋敷の外に全く関心がなかったことが伺えます。

なので外の空気に触れるのは初めてだったのでしょう、興味深そうにきょろきょろするエミリコですが、上を見上げた時、別の生き人形を見つけて思わず胸が高鳴ります。


ちなみにこの場面、私は漫画を描かないので詳しいことは分かりませんが、実際に窓から上を見上げた様子が見事に再現されていてすごいなあと思います。
窓から身を乗り出して上を見ると、本当にああいった構図になるんですよね。
難しいであろう当事者の視界を、よくもここまで描写できるものだと絵心のない私はひたすら敬服してしまいます。

さて、上にいる生き人形に気を取られてか、落ちてきた窓にギロチンの如く挟まれるエミリコ。
慌てているさまを上にいる生き人形に笑われてしまいます。

それでもこんにちはと挨拶するエミリコに、上にいる生き人形も「こんにちは」と挨拶を返してくれました。どうやら優しい性格の生き人形のようです。

挟まったエミリコは結局、ケイトに担ぎ上げられて助け出されるわけですが、別の生き人形と話せて大喜びです。
ああ、本当にこの子は純真だなあ…。

その後、ケイトからそろそろ部屋の外へとお呼びがかかるだろうと言われたエミリコ。
外の世界に思いを馳せているのか、窓際に顎を載せながら屋敷を眺めています。
残念ながら、上の窓にはもうさっきの生き人形の姿は見えません。
エミリコの複雑な心境が見て取れる場面であります。

そんな時に階下の渡り廊下を通る二つの影。
シャドー家とお付きの生き人形です。
ところがさっきの生き人形と違いこちらは不愛想で、エミリコを睨みつけるとそのまま行ってしまいました。

“生き人形も色んなタイプがいるのでしょうか?”

読者と同じ疑問を抱え、次回よりエミリコは、とうとう部屋の外へと足を踏み出します。

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