来客のない奇妙な館 ~シャドーハウス考察ブログ~

ヤングジャンプで連載中のソウマトウ先生作、“シャドーハウス”の考察ブログです。

各話あらすじ

第6話 鏡

このお話、是非ともカラーでお読み下さい。

となりのヤングジャンプで見逃したという方は、電子書籍版で第一巻がフルカラーバージョンで好評発売中ですので、購入することをお奨めします。

 

と、なんだか宣伝のようになってしまいましたが、着飾ったエミリコが見られるのは今のところこの第6話だけですので、つい興奮してしまいました。

 

話の内容は、自身の容姿に自信の持てないエミリコが、ケイトの“顔”としての役割を果たせるのか不安だと吐露したのがきっかけです。

 

「私は美しくなれますか…?」

 

おもわずそう呟くエミリコ。

 

ケイトの“顔”として立派に勤めたいと思うが故の発言でしょうが、エミリコの外見も相まって、まるで大人の女性に憧れる幼女のような甘酸っぱい感傷を想起せざるにはいられません。

 

そこでエミリコを着飾ろうとするケイト、「お人形遊びよ」と言ってエミリコの身支度を始めます。
座りなさいと言われたエミリコの姿勢がなんだかぎこちなく、初めて人形らしさが伝わるシーンでもあります。

 

さて、そんなこんなでエミリコに自分の衣装を着せたケイトですが、その姿を見てシャドー家の禁忌の理由について初めて理解したようでした。


 

「人形の方が完全な存在に見えるもの」


 

“顔”である生き人形を必要以上に着飾らせたことにより、そう思い知らされたかに見えたケイト。

 

ところが、それをエミリコは即座に否定します。


この時のエミリコの表情や仕草、台詞は作品中屈指の名場面です。



ケイトへの想い、忠誠、感謝…。



それらをこれでもかというくらい叫ぶエミリコの姿に、ケイトの心も持ち直したようです。

 

最後は結局、要らない一言でケイトを怒らせてしまうエミリコでしたが、普段と違うエミリコの姿が見られる貴重な、必見の一話です。

第5話 空腹

第2話でパンを食べることを覚えたエミリコ。

とうとう隠れ食いまで覚えてしまったようです()。

 

とはいっても、ケイトにはバレバレだったみたいですね。

「盗み見るのは得意よ」と、恐らくはシャドー家で使い回されているであろう鉄板ジョークを繰り出すケイト嬢。

エミリコの一切合切を見抜いていたようです。

 

ケイトの余ったパンを勧められて、「いじきたない生き人形にはなりたくありません」と熱弁振るうエミリコですが、自分の顔がおいしそうにパンを食べるところが見たいというケイトに押されて、とうとうパンを食べることになります。

ケイトの気遣いが見て取れるいい場面です。

それよりもエミリコ、隠れ食いも十分意地汚いと思うぞ…。

 

かくしてケイトのパンを頂戴したエミリコでしたが、どうやら生き人形用のパンとは違っているらしく、「おいしー!!!」とはしゃぎまわります。さっきまで体裁を気にしていたのが嘘のようなはしゃぎっぷりです。

しかも普段自分が食べているパンを食べても「でもおいしい」と語るエミリコ。

まるで“前向き”という感情が人の形をしているかのような姿に、思わず読んでいるこちらも微笑まざるをえません。

今回のお話の売りは、この元気いっぱいのエミリコでしょうね。

食事を運んでくる顔のない人形には話しかけなくても良いと諭すケイトに対し、お礼を言いたいと返すエミリコに至っては、まるで天使を見ているかのようです。

 

さて、この第5話ではこの館の食事事情が見えてきました。

エミリコ達生き人形には顔のない人形からパンが運ばれてきますが、ケイト達シャドー家にも顔のない人形が食事を運んでくるようです。

ただその内容は違っていて、細かいところは見えませんが、パンのほかにフルーツや調味料、何らかのメインディッシュ(魚か?)がテーブルに並べられています。

見切れているもののコップも描写されていることから、飲み物も付いてくるみたいですね。

貴族らしい豪華なメニューです。

1巻巻末には、生き人形の食事としてパン以外のものもあると記載されていますが、それにしても身分に伴う格差が、食事一つとっても見受けられます。

 

これを見ると、食事は顔のない人形が調理しているのでしょうけど、食材はどこから持ってきているのかという疑問がわいてきます。館の敷地内に農園や生簀でもあるのだろうか…

 

う~ん、分からない…。

 

この館、「何か」がある…!


第4話 すすだるま

つかの間の休息。いつも掃除で使う踏み台に腰掛けると、少女は物憂げな顔で空を見上げました。

淡いランプに照らされたのは、初めて目にする黒い雪。

それは天からの贈り物ではなく、少女が仕える主人によってもたらされたものでした。

白と黒。

冷たいと温かい。

すべてを覆い尽くす白い雪と、すべてをさらけ出す黒い雪は、なにもかもがあべこべの存在です。

白い雪ならば、季節が廻ればやがて溶けて消えます。しかし黒い雪はいくら時が経とうとも、自然に消えることはありません。

“わたしに何ができるだろう…”

暫時ぼんやりと黒い雪を眺めていた少女は、逡巡ののち、一つの決意を固めます。

少女は主人の心に触れようと、そっと小さな手を伸ばしました……

 

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こんな物語が浮かんできそうな扉絵ですが、残念ながら第4話はこんな幻想的なお話ではありません。というよりむしろエミリコのドタバタっぷりが見られるというか…。

 

かいつまんで説明すると、ケイトに字を教えてもらったエミリコが夜中にはしゃぎだしてしまい、結果的に寝坊してケイトを不機嫌にさせた、というのが今回のお話です。

 

見どころとしては、すすだるまを作っているのをエミリコに見られて恥ずかしがっているケイトや、“こびりつき”を瞬時に発見し退治しているケイトなど、どちらかといえばエミリコよりケイト嬢に注目をしてほしいお話であります。

 

特に圧巻なのが寝坊したエミリコを出迎えるケイトですが、これには一読者という立場なのに、思わず慄いてしまいました。

大変だろうけど、超がんばれ、エミリコよ…。

 

さて、すすだるまやこびりつきなど、以後の伏線が多かった今回のお話。

改めて読み返すと、やっぱりシャドーハウスは物語が緻密だなあとしみじみと思い知らされました。

第3話 説明書

今回紹介する第3話、実は私が好きなお話の一つであったりします。

内容は、

 

一日の仕事を終えたエミリコが部屋に戻り就寝 → 翌朝、再びケイトのお世話をする

 

というシンプルなストーリーです。

エミリコの部屋の中やケイトの部屋とを繋ぐ扉・生き人形に下命された役割など、見るべきものが多いお話ですが、何よりも注目したいのが、ケイトにとってエミリコの存在がどんどん大きくなってきているのが読み取れる点です。

 

なお、ここからはネタバレを含みますので、まだ第3話を読んでない方は飛ばすことをお薦め致します。↓↓

 

 

 

 

さて、では最初から振り返ってみましょう。

まず冒頭、風呂上がりのケイトが登場しますが、ここで彼女はいつもより早い時間に寝床に就きます。
なぜ早いかどうかなんて分かるのか?
それはケイトの台詞に隠されています。

普通、習慣上普段と同じ時間に寝るのであれば、ここで出てくる言葉は


「今日もそろそろ寝るわ」


のはずです。ところが口にしたのは、

 

「今日はもう寝るわ」

 

これはいつもと違う時間、かつ、いつもよりも早く寝ることを示唆する発言です。


何故早く寝たいのか理由は分かりません。
たまたま疲れていただけかもしれないし、何か気になることがあったのかも知れません。
あるいは早く忘れたいことがあったのかもしれないし、逆に覚えなくてはならないことが多すぎて勉強疲れが出た、とも考えられます。


いずれにせよ、何か思うことがあってケイトは早く寝ようとしたわけです。


そして翌朝、鈴の音を聞いたエミリコが飛び起きます。この鈴の原理は不明ですが、恐らく屋敷にいる生き人形たちに定時の起床を知らせるもののようです。


食事しながら朝支度を済ませるエミリコ。さっそくケイトのもとに赴きますが、ケイトはまだ寝ています。エミリコの様子だと、いつもであればこのくらいの時間にケイトも起きているようですが、この日ばかりはどうやら違うようです。

昨晩早く寝たにも関わらず、よほど疲れていたのか、それとも眠れないほど何か悩んでいたのか・・・。


エミリコが隠し扉の反対側でしばらく待機していると、ようやくケイトが目を覚ましました。
(この時エミリコのお辞儀の足が揃っておらず、さり気なく仕事に慣れてない様を表現しているのがニクいです。)


ところが起きて早々開口一番、


「寝ている間はすすが出るとはいえ今朝はいつもより多くて掃除が大変そうね」

 
と語るケイト。

これ、なかなかに重要な台詞です。

なぜか。


1話を振り返ってケイトの言葉を思い出して下さい。


“「すす」はね、怒ったり… 良くない感情のときに出るの”

つまりこの日の夜、ケイトはいつもより不安定な精神状態に置かれていたのが推測されるわけです。
その詳細を知る術は他人にはありませんが、それにしてもケイトの心中を思うとなんだか切なくなってきます。おまけにエミリコの仕事を増やしているも同然な状況・・・。

 

しかしそんな主人の想いを知ってか知らずか、

「私お掃除大好きです!」と宣言し、まばゆいばかりの裏表ない笑顔を輝かせるエミリコ。

 その笑顔には二心抱くことない、ケイトを慕う真心がひしひしと感じられます。

そんなエミリコに呼応するかのように表情が明るくなるケイト。

もう大丈夫そうです。
既に彼女からすすは出ていません。一晩中抱えていた負の感情が、エミリコの笑顔で一気に瓦解したのです。

 

出会った当初はあくまで身の回りを世話する分身だったのが、いつの間にか心の支えになっていた…。

ケイトにとって、エミリコの存在が大きくなった瞬間です。


二人の関係がより深まったのが手に取るように、でも決して安易な表現を用いないで読者に伝えるこのお話は、まぎれもない傑作の一つです。

第2話 壊れた人形は

続いて第2話です。まずは各話一つずつ紹介しようと思っているのですが、なかなか先が長そうです。果たして連載に追いつく日は来るのだろうか・・・。


それは置いとくとして、このお話は題名の通り、人形=生き人形=エミリコが壊れてしまった!?、というストーリーです。まあ実際は壊れていなかったんですけどね。

詳細については、となりのヤングジャンプにて無料公開されていますのでそちらをお読み下さい。
今現在、1~3話までと1巻収録分以降に連載された各話が公開中です。

 

さてこのお話について、改めて読み返してみると

「生き人形って本当に人形なの?」

という疑問が浮かんできます。連載当初は1話で生き人形と紹介されていましたし、こちらもそういう先入観で読んでいたので特に疑問に思わなかったのですが、よくよく見てみると人形要素が全然ないんですよね。
それどころか、ご飯は食べる・痛みはある・体に人形的な機構は外観上見受けられない、etc…。

これではまるで人間です。

ケイト曰く、シャドー一族に似ていて動けて顔があるので生き人形は人に似せている、と理由づけていますが、それにしては凝りすぎな気がします。だからといって、生き人形は人間だと結論を出すのもまた早計でありますが、少なくとも我々が現世で考えうる人形とは全く違った存在と考えて間違いはなさそうです。

 

ちなみにエミリコはこの会話の中で、「ケイト様は人ですか?」というド直球、インハイぎりぎりを突くような質問を投げかけますが、ケイトは真正面から拒否します。多分彼女もよく分かっていないのでしょう。ケイトは本を読んでいる姿が多く描写されていますが、まだエミリコというパートナーを持ったばかりのいわば新参者の彼女は、勉強しなければならないことがいっぱいあるのだと思います。


にも拘らず、失敗をしてしまうエミリコをやさしく諭すケイト・・・。


読者でも彼女の表情を読み取ることはできませんが、所々でエミリコを気遣うその姿は人格者であり、お嬢様と呼ぶに相応しいと感じさせます。

もっとも最後はエミリコの勘違い(思い込み?)によって、珍しく慌てふためくケイト嬢でしたが、二人の距離は縮まりつつあるのだなと見て取れるオチでした。


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