来客のない奇妙な館 ~シャドーハウス考察ブログ~

ヤングジャンプで連載中のソウマトウ先生作、“シャドーハウス”の考察ブログです。

各話感想

第223話 氷解【感想】

二年前のちょうど今頃、真夏のさなかの渋谷でシャドーハウスの原画展が開催されていました。

私は初日から観に出かけましたが、素晴らしい展示品の数々と共に思い出されるのが尋常でない「暑さ」です。特に渋谷はすり鉢状の地形ですから、余計に熱がこもり汗が止まらないくらいでした。西武デパートに入店してクーラーの涼しさに救われたことを、今でも昨日のことにように思い出せます。


しかしながら、今年も二年前と負けず劣らず日本各地で猛暑が続いていますね。

いや、今年の酷暑はそれ以上でしょうか。

8月5日の群馬県伊勢崎市では、国内歴代最高気温を更新したとニュースになっていました。

計測値はなんと41.8℃。

私が子供の頃は山形市の40.8℃が国内最高気温として知られていましたが、あれから1℃も上がったわけです。(こういうこと言うと世代がバレそう……)(今思い出しましたが2年前の原画展初日も8月5日でしたね)

ここ一週間の東京地方は比較的過ごしやすい気温ではありますが、今後も猛暑日はまだ続くようです。これからも熱中症には注意していきたいですね。


さて。

「暑さ」の話題が出たから、というわけではありませんが、今回のサブタイトルは「氷解」です。まさしく、外にいるだけで溶けてしまいそうな今年の夏を表しているかのような副題です。

しかしながら、この「氷解」は今年の気温の暑さがもたらしたものではありませんでした。


本話で語られた「氷解」

それはとある主人“たち”の、従者への深く「熱い」愛情がもたらした和解劇でした。続きを読む

第222話 平和ボケ【感想】

今回は第111話以来のゾロ目回、かつ公開日が単行本20巻の発売日と重なったとあってカラー扉でした。

ということで、こちらのヤングジャンプ編集部公式ツイッターをご覧下さい。

元気ないっぱいなエミリコのダブルピース!!ケイトも控えめなピースで、二人合わせてトリプルピースです!!!

最近のエピソードでは快活なエミリコがやや影を潜めていますので、扉絵と言えども元気そうなエミリコを見られて嬉しかったです。叶うことなら、ほんの少しでいいのでケイトとエミリコのささやかな部屋でのシーンを見てみたいなあなんて思いました。(現状厳しそう)

ところで、エミリコのピースってどこかで見たよなあと思い返したら、同じく「2」にまつわる出来事で描かれていました。

単行本2巻発売当時のソウマトウ先生のイラストです。

今思うと、単行本2巻と20巻の発売日にエミリコが同じようにピースしてるとは面白い偶然ですね。

222話の公開日に単行本20巻が発売され、エミリコが2巻以来のピースをしているだなんて「2」の渋滞です。ピースがいくつあっても足りないんじゃないかと心配になってきました。

余談ですが、日本語で「ピース」と呼ばれるこのポーズは元々「Vサイン」という勝利を表すハンドサインでした。それが1960年代のベトナム戦争の反戦運動を経て、平和を願うサインとして世界中に広がったとのことです。現在では「勝利」「平和」のどちらの意味も含むようになっています。


さて、そうすると本編でも平和なエピソードといきたいところですが、そうは簡単にいきません。

今回のサブタイトルは「平和ボケ」

「ピース」尽くしだった第222話の扉絵を皮肉るような副題です。否が応にも悪い予感しかしません。


そして、実際に「平和」とは程遠いこどもたちの棟の姿が描かれました。

悪辣な扇動者によってこどもたちの棟に危機が訪れようとしています。
続きを読む

第221話 昔語り【感想】

サブタイトルの「昔語り」に乗じて、私からも少し昔語りをさせて下さい。


シャドーハウスの単行本1巻が発売された当時、池袋のジュンク堂書店池袋本店で「複製原画展」が行われていました。

「複製原画展」といっても、渋谷で一昨年行われたシャドーハウス原画展とは違い、コミックスフロアの一角にポスターと数枚の複製原画、そして作品の世界観を反映した幾つかのイラストが掲示された小規模な展示です。

しかしながら、この「複製原画展」を見たことで、私はさらにシャドーハウスの魅力に取りつかれました。

ソウマトウ先生が手掛けた精細な原稿に惚れ惚れした、というのも大きいですが、何よりもその周りに貼られていたイラストが、実に謎で作品の奥深さを感じさせるものだったからです。


その内容は過去記事の「ジュンク堂 複製原画展」で簡単に触れていますが、残念ながら写真撮影は禁止でしたので、公式ツイートから大体の雰囲気を感じていただければと思います。

→【複製原画展】「シャドーハウス1巻」


お分かりでしょうか?

額に入った原稿の下に貼られている、顔が黒塗られたシャドーと思しき少年少女が描かれ、英文が綴られた紙々がそれです。


これらのイラストを見た当初は、本編には関係のない、複製原画展用に描き下ろされた装飾だろうと考えていました。

ところが、そこに描かれている人形を携えた少女や、井戸の脇で遊ぶ児童、草むらの中で迷子になる女の子を見ていくうちに、これはシャドーハウスという場所がどんな館なのかを示したイラストではないかと思えてきたのです。

そして、ケイトという不思議な少女と、エミリコという少し抜けた“生き人形”が日常を過ごすシャドーハウスという作品は、単調な物語に留まらない、奥深い魅力と壮大な世界観を有した漫画なのではないかと直感しました。


そこからはもう、シャドーハウスをもっと見たい、ソウマトウ先生が手掛ける設定を余すことなく知りたい、という欲求は留まることを知りませんでした。ブログを書くことで少しでも応援になれば、と本ブログを着想したのはその二週間後です。

あれから7年、今でもケイトとエミリコとともに、不可思議な館の謎を追っています。思い返すとシャドーハウスを読んでいく上でのターニングポイントだったなあと思っています。


さて、なぜこんな昔話を語ったかと言いますと、「複製原画展」を見た当時のことを思い出す、とある謎が第221話で明かされたからです。

からくり屋敷を思わせる、多くの罠が張り巡らされた奇妙な館。

その正体は、時代に翻弄され青春を失った男性と女性が、未来の「こどもたち」のために残した夢の跡でした。続きを読む

第220話 ジョゼフの思惑【感想】

もう4年前になりますが、当時のヤングジャンプの本誌には「今週の質問」というコーナーがあり、その週に掲載されていた作者先生方の回答が載せられていました。

もちろんシャドーハウスの掲載週だと、ソウマトウ先生のご回答が載っているわけです。普段知ることのできない先生の一面を見ることができて、いつも楽しみだったのを覚えています。

因みに、ヤングジャンプ2021年47号(第113話「一対の条件」が掲載された号)(エミリコがとんでもない形相でラストを締めた回)は、こんな質問内容でした。


「10月21日は関ヶ原の戦い!ジャンル不問、個人的ベストバウトを教えてください!」


「バウト」とは英語で「bout」を指し、「ベストバウト」とは言葉通り、最高の試合・最高の勝負を意味します。上記の質問に対し、ゴールデンカムイの野田サトル先生は「東京五輪の柔道」、ウマ娘シンデレラグレイの久住太陽先生は「ラオウVSトキ」といったように、各先生は現実のスポーツや、フィクションにおける闘いを挙げておられました。


そんな中、我らがソウマトウ先生はというと、このようなご回答でした。

「ミツバチ VS スズメバチ」

んんん!?

ミツバチとスズメバチって、昆虫のミツバチとスズメバチのことですよね!?

生物系にお詳しい方ならご存じかと思いますが、ミツバチの巣を襲うスズメバチに対して、ミツバチが巣総出でスズメバチを撃退しようと奮闘するあの闘いのことですよね!?(知らない方は「熱殺蜂球」で検索!)

いやあ、あまりに異色のご回答でビックリ致しました。これと似た回答はスナックバス江のフォビドゥン先生の「カンガルーVSヘッドロックされた犬の飼い主」ぐらいです。

各ご回答を眺めていると、漫画家皆様の個性といったものが垣間見られて興味深いものでした。


さて、しかしながらソウマトウ先生のご回答に驚いたものの、ソウマトウ先生ならさもありなんとも思います。なぜならソウマトウ先生は、生物系の方面にも造詣が深いからです。

過去作を見ると、寄生彼女サナのコミカライズや黒では寄生生物について取り上げられていますし、シャドーハウスでも「モーフ」と呼ばれる不思議な生物の生態が描かれています。

よって、ミツバチやスズメバチといった昆虫についてお詳しいのもある意味当然かなとも思うんですよね。先生のどちらが生物系に詳しく、そしてどんな背景があるのかは不明ですが、それはともかくとして作品にもその知識が反映されているのは間違いないでしょう。

欧州の建築物や服飾といった描写に注目されがちですが、生物学的観点からシャドーハウスを読んでみるともっと面白くなるかも知れませんね。


そんなことを思い出しつつ第220話を読み込んでいくと、それを彷彿とさせるシーンが現れました。

絶対的な階級社会を持つシャドーハウスという館。

その生態はまるで現実世界の「蜂」そっくりでした。続きを読む

第219話 直談判【感想】

シャドーハウスを読み始めてからというもの、毎回最新話が更新されるたびに感情を揺すぶらせながら読み耽っていますが、200話を超えてくるとエピソードごとの印象の違いも当然出てきます。

個人的な評価になりますが、序盤で言えば第7話と第11話は特に印象に残っているエピソードです。

第7話はミアが初めて登場した回です。第6話まで登場人物はケイトとエミリコのみでしたが、ミアが姿を見せたことで、部屋の外にも他者が存在しているということがはっきりと認識できました。

第11話はサラが初めて登場した回です。意図せぬ事故によって部屋の外に出てしまったケイトとエミリコは、偶然出会ったサラから「シャドー」「顔」についての情報を得ます。

読者にとってみても、第10話まで描写されてきた「顔」「生き人形」とは一体何なのかという謎について、断片的ながらも開示されたエピソードでした。


以上に挙げた二つのエピソードは、いずれもシャドーハウスという物語において、作中の世界が一気に広がったエピソードといえましょう。

第6話までのケイトとエミリコの二人だけの物語が、第7話でミアが登場したことで様々なキャラクターが描かれるようになり、第11話でサラからシャドーハウスのルールについて発言があったことで、ケイトの部屋だけではなく、館全体の描写が次々と描かれるようになったからです。

そうしたターニングポイントとなるエピソードだったからこそ、第7話と第11話は印象深かったのではないかなと、己の中で分析しています。


さて、そうすると「作中の世界が一気に広まった」という点において、他にも印象的なエピソードは幾つかあります。そして、それらの中で一つ挙げるとするならば、第28話「視線」を個人的に推したいと思います。

第28話については詳細を書くとネタバレになりますが、簡潔に説明すると、

「お披露目」の最中に檻に閉じ込められたケイトが、まるで見世物のようだと指摘したジョンの発言をきっかけに、「お披露目」という名の儀式なのだから誰かに見られていると勘付いた。

ケイトの勘は当たっており、エドワードが企画した「お披露目」は正体不明の5名の人物たちによって注視されており、文字通りこの儀式は「お披露目」であった。

という回です。

今でも覚えているのですが、私はこのエピソードを読んだ時「やっぱり『お披露目』は『お披露目だった』!」「このいかにも偉そうな面々は何!?」と驚いていました。

何と言っても当時は、ケイトを含めた新人たち5対と、“特別な生き人形”エドワードくらいしかキャラクターが描かれていませんでしたからね。それ以外に名前が明かされていたのはサラとミア、ローズマリーとバービーくらいでした。そんな中で、これまでとは明らかに年齢層が異なる人物たちが現れたのですから衝撃を受けないはずがありません。

あの正体不明の5名は、偉大なるおじい様を除いて「重鎮」と呼ばれる階級だと後に明かされました。第28話もまた、情報が断片的ながらも明かされることで世界観が広がったエピソードといえましょう。その後も、「重鎮」について少しづつ描かれることで、その役回りや人物像、個性が徐々に明かされていきました。


そして今回、とある「重鎮」の存在がクローズアップされることとなります。

その名はジョゼフ。

これまでシルエットに隠されてきた重要人物の素顔が遂に語られました。続きを読む
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