来客のない奇妙な館 ~シャドーハウス考察ブログ~

ヤングジャンプで連載中のソウマトウ先生作、“シャドーハウス”の考察ブログです。

各話感想

第189話 一体化の儀式【感想+考察】

シャドーハウスの魅力・楽しみ方は人ぞれぞれかと思いますが、やはり1番の特徴と言えば「顔の見えない一族」が主要キャラクターであることでしょうか。

他の作品でも顔の見えないキャラクターが登場するのは珍しくないものの、シャドーハウスにおいては約半数が顔の見えないキャラクターで占められています。

こんな作品は恐らく、古今東西見回しても例がないでしょう。影絵であればともかくとして、それ以外ではまず思い当たりません。もしあれば教えて頂きたいくらいです。

シャドーハウスという作品を紹介するにあたって「類似作品不在」というキャッチコピーが用いられることは多いですが、それが誇張でないことは本ブログにお越しの方は存じていらっしゃるかと思います。

そんな「顔の見えない一族」のキャラクターの表情や感情、そしてそれに付随する様々なストーリーをああだこうだと想像し、語り合い、次話のエピソードの更新を楽しみにする……。

それがシャドーハウスの楽しみ方の一つであることは間違いありません。


しかし、一方でキャラクターの表情が読めないというのは不気味です。

ソウマトウ先生はシャドーハウスを「ファンタジーミステリー」(過去ツイート)と仰っておりましたが、謎に包まれた舞台やストーリーもさることながら、顔の全く見えないキャラクターが跋扈しているという設定もミステリアスさをより倍増させています。

この点について個人的に好きなのは第89話のラストですね。

過去記事でも書きましたが(「第89話 甘言」)、最後のページでケイトに挨拶をするサラの顔はもちろんとして、隣にいるミアの姿が意図的に隠されたことによって全く彼女の表情が読めず、どんなことを考えているのか一目では分からないようになっています。

当然ながら、我々読者は神の視点から見ているわけですからサラが何をしようとしているのかは把握していますが、しかしそれでもなお、表情が見えないだけでここまで不穏な光景になるのかと当時は驚きました。一面的な意見なのは自覚していますが、「顔の見えない」という設定が活かされたシャドーハウス有数のシーンだと思っています。


さて、しかしそうすると「シャドー」と呼ばれる面々が何を考えているのかを知るにはどうしたらいいのかという話になりますが、読者からすれば彼ら彼女らのモノローグがあれば間違いなく分かります。会話シーンでは登場人物同士の駆け引きもあるでしょうが、モノローグであればよほどのことがない限りキャラクターの本心が書かれていますからね。

もしそうでないのであれば、キャラクター自身が自分を誤魔化したり誤解しているとか、そういった説得力ある設定や描写(伏線)が必要になるかと思います。いずれにせよ、読者からすれば物語を読み込んでいればまず読み間違えることは少ないと言えるでしょう。


ただ、逆に言えばこのモノローグがなければお手上げともいえます。

シャドーハウスではその代表がルイーズでした。

なぜなら、お喋りな彼女にはほとんどモノローグがなく、口数とは裏腹に本心が掴みにくいキャラクターだからです。SNSではそういった感想がこれまでに多く見受けられました。特に「一体化」に関しては、彼女が何を考えているのか分からないと危惧する声も少なくなかったです。


しかし、此度のエピソードではルイーズが「一体化」についてどう思っていたかその種明かしがなされました。

そしてそれと同時に、謎に包まれていた「一体化」の儀式の様子が描写されました。

第37話でソフィが「館の重大な秘密」と語っていた秘儀の一端がついに明らかになります。
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第188話 敵と味方【感想】

信じた道を征く、初志を貫徹する……

こうした言葉は人生の指標として、或いは憧れとして語られることが多いです。人生訓として用いられることもあれば座右の銘として掲げる人もいますし、言葉は違えど似た意味合いの語句・文章を見かける機会は少なくありません。

それこそ実生活の中だけではなく、創作物の中にもそれらの大切さを説く作品はいくらでも溢れています。


ただ、そうした風潮がありふれているのは誰もがそんな風に生きているからではありません。むしろ、信じるべきものを信じて生きていくことの方が難しいのが世の常です。

しかし、だからこそでしょうか。

強い意志を持って目指す道を進んでいくアスリートや冒険家、あらゆる分野のパイオニアや第一人者が称賛と共に憧憬を集めるのは。

もしかしたら、誰しもが一度は抱きながらも夢破れた各々の理想像を、知らず知らずのうちに重ねているのかも知れません。


自らを信じる、と聞いて私が最初に思い浮かべるのはCHAGE&ASKAの「PRIDE」という曲です。

デビュー10周年に発売された同名のアルバムはオリコンの週間チャートで1位を記録しましたが、当時のCHAGE&ASKAは楽曲の質の高さとは裏腹にセールスは伸びず、苦境の中にいました。

そんな風にもがく中で二人が発表したのが「PRIDE」です。



日々の生活に疲れ果てた主人公が挫折や諦観を抱えつつも前を向き、どんなに打ちのめされようとも“PRIDE”だけは譲れないと立ち上がる。そんな人間の弱さと強さが6分間のバラードに込められた名曲です。

彼等はこの2年後に「SAY YES」の大ヒットで日本を代表するアーティストに上り詰めますが、デュオとして耐え忍んだ期間を象徴する「PRIDE」は、1994年のミュージックステーションのファンアンケートで1位に選出されました。今もなお、往年のファンだけではなく当時まだ生まれていない人々の心を掴んで離さない魅力を放っています。


さて、私も例外ではなくこの楽曲に惹かれた一人ですが、その中で印象的な詩が「誰も知らない涙の跡」の部分です。

誰もが他人には見えない心の中で悲しみや苦しみを抱えて生きている、という普遍的かつ真理を突いたこの一節に学生時代は救われたものでした。今では大分ふてぶてしくなったので繊細さなどとっくに捨て去りましたが、それでも思い出深い懐かしい記憶です。


ところで、シャドーハウスでは心はおろか表情すら見えない一族が存在しています。

「シャドー」です。

今更語るまでもありません。彼ら彼女ら「シャドー」は表情が見えないことで不便を強いられ、時にはすれ違いを引き起こし、果ては悲劇に繋がることも珍しくない境遇を抱えて生きています。

その悲しみはReoNa氏の「まっさら」でも歌われていました。こちらも名曲ですので機会がありましたら是非聞いて下さい。


では長くなりましたので本編へとまいりましょう。

今回のエピソードでは、心だけではなく身体に負った傷さえも誰にも知らせずに戦ってきた、一人の少年の姿が描かれました。

そしてその苦闘を誰よりも近くで見守ってきたもう一つのシルエット。

プライドを持って立ち上がった時、彼らはもう一人きりではありませんでした。
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第187話 猜疑心【感想】

先週、単行本16巻の発売と共に嬉しい知らせがありましたね。

原画展の地方開催決定の報です。

昨年8月に行われた渋谷での原画展は、発表当初より「東京会場」と書かれていましたので当時から『他の地方でも開催されるのでは?』という憶測も多くありました。かく言う私も、そう思っていた一人です。

しかしあれから半年。原画展公式HPもシャドーハウスの公式ツイッターアカウントも全く動きがなかったので、正直深読みしすぎたかなと思い始めておりました。ですので、この知らせを受けた時はとうとうきたかと胸躍りましたし、またあの素敵な空間が見られる喜びでいっぱいになりました。実にめでたいです!


気になる開催地ですが、どうやら大阪と福岡で開催するとのことです。

さっそくソウマトウ先生から「東京会場にお越しくださった沢山の方のおかげです!」とのファンサービス溢れたツイートもありましたね。煤(メッセージを書く黒い付箋)が沢山貼られたメッセージボードに亡霊が何体もできたことが、こんな風に繋がったと思うと何だか嬉しくなってきます。


ただ、それよりも何よりも、シャドーハウスという魅力ある作品の力こそが原画展地方開催を後押ししたのは間違いないでしょう。

私としては、普段の行動範囲とは離れた地ですので昨年とは違い足を運ぶのは難しい状況ですが、せっかくの機会ですので時間があればなんとか行ければと考えています。(でも福岡は遠いなあ……)


さて、ところでその直後に公開された第187話にも「原画展 地方開催決定!!!」の報が当然載せられているわけですが、昨年6月の原画展開催の告知と共通する点があるのにお気付きでしょうか?


それは『ダグラスのメイン回』という点です。


あの時公開されていた第167話のサブタイトルは「風紀班」です。その名の通り、ダグラス率いる1班の描写に多くが割かれていました。(当時の記事→第167話 風紀班【感想】)

そして今回も、カラー扉にダグラスの生き人形・ダグが描かれています。ということは、もちろん彼等1対のエピソードが描かれたわけです。なんとも奇妙な一致です。


しかし、二人を取り巻く環境はあの時とは全く違います。

第167話ではダグラスと我らが主人公・ケイトとエミリコとの対峙が描かれていましたが、今回はその対極に位置する人物がダグラス達を惑わそうと「甘言」を弄しました。

目下ケイト最大のライバル・エドワードが、ダグラスの引き抜きのために一気に攻勢をかけます。続きを読む

第186話 共同戦線【感想】

「クラシックの悔しさは ここで晴らした天才の一撃!」

フジテレビ・立本信吾アナウンサーのこんな実況が響いたのは2022年の競馬中継、天皇賞秋での出来事でした。

キタサンブラックの仔として期待されながらも大舞台での惜敗が続き、満を持して最強馬決定戦に臨んだイクイノックスが栄光を掴んだのです。

ということで、競馬に詳しくない方もいらっしゃると思いますので、もし興味ありましたらこちらのレース動画をどうぞ。



イクイノックスは昨年末に惜しまれつつ引退しましたが、上記の天皇賞秋から引退レースとなったジャパンカップまでなんと6連勝という驚異的な成績でターフを去ります。その「伝説」と呼ぶべき競争生活は、連勝記録の始まりである2022年の天皇賞秋で称された「天才」そのものだったと言えるでしょう。果たして彼が今後どんな仔を生み出すのか、まだ先のことですが楽しみにしています。


さて、「天才」という語句ですが、誰を指すのかについては人それぞれ違うかと存じます。

例を挙げるなら、メジャーリーガーの大谷翔平選手やイチロー、将棋の藤井八冠と羽生九段、競馬の武豊騎手といった一線級の競技者がそう称されています。

また、時代を遡れば小説家の三島由紀夫や政治家の田中角栄元総理も入るかも知れませんね。さらに歴史上の人物を含めれば古今東西折々の傑物が名を連ねるでしょう。


そんな中で、私が天才だと思うのはこちらの作者です。

明日の神話

画像が小さくてすみませんが、ご存じの方ならぱっと見て分かるでしょう。もしかしたら昨年のシャドーハウス原画展に行った際に見てきたという方もいらっしゃるかも知れません。

答えは、岡本太郎です。この「明日の神話」という大作は渋谷駅のコンコースに展示されています。

因みに上の写真は、2020年4月に渋谷で予定があった時に「こんなに人がいない渋谷は今後ないだろうから寄っていくか」と思い立ってコロナ禍の中撮影したものです。

前代未聞の事態の中、もしも今の世に岡本太郎がいたとしたらどんな切り口で世を見つめ、そして表現したのだろうかと思い耽ったのが懐かしいです。

余談ですが、ソウマトウ先生のギリギリアウトでは主人公(ソラ)の父親が「爆発だー!」と言いながらイリュージョンを披露したりするのですが、恐らくモデルは岡本太郎ではないかと想像しています(笑) いつか機会があれば先生に事の真相をお聞きしたいなあ……。


ところで、実を言いますとシャドーハウスにも「天才」と称されるキャラクターがいます。

スポーツ選手でも芸術家でも政治家でもない、ごく一般の物静かな少女。

そんな慎ましやかな彼女が持っているのは、「空間」と「時間」を正確に把握するという、通常では考えられない頭脳です。

それでは本題に入りましょう。

今話ではエミリコの良き友達・ラムが遺憾なく能力を発揮しました。続きを読む

第185話 作戦続行【感想+考察】

今話の事前告知にて、さらっとではありましたがソウマトウ先生から懐かしい話題が出ましたね。

こちらのツイートです。

先生が仰る「きららでゲスト掲載したとき」とは、まんがタイムきららで連載された「ゆるコワガール」のことだと思います。2011年11月~2012年2月の3か月間に亘って掲載されていました。

覚えている方もいらっしゃるかも知れませんが、実は過去記事にてご紹介しています。
→ソウマトウ先生の過去作品のご紹介(ゆるコワガール)

ということで、せっかくなので1/2扉の画像を載せてみましょう。
扉

残念ながら私が持っているのは最終回のまんがタイムきららだけですので、ソウマトウ先生が今回のツイートで言及したのがこの扉絵かどうかは分かりません。

でもこう見比べてみると、可愛い女の子達が笑顔で画面いっぱいに描かれているのが何となく似た雰囲気ですよね! もし可能であれば「ゆるコワガール」の1話・2話の扉絵と並べてみてみたいものであります。(ネット上で探してもほぼ本ブログの情報ばかりで見つからず。検索の邪魔だなあ…)(自虐)


さて、それはさておきシャドーハウスの話へとまいりましょうかね。

シャドーハウスとは思えないくらいに賑やかで、朗らかなシーン。

こんなにもたくさんのキャラクター達が楽しげでいるのはそうですね、第156話以来ではないでしょうか?

第156話といえばケイトが星つきになってから間もないエピソードです。ネタバレ防止のため詳細は伏せますが、当時のケイトは「かりそめ」の手段でバーバラを救ったが故に意気消沈していました。

しかしそんなケイトの心を救ったのは、彼女の部屋を訪れた仲間たちの姿でした。

「星つきと仲良し作戦」で距離の縮まったベンジャミン、「無能力者襲撃事件」解決の協力者エリザベス&ロレッタ、班員のイザベルとミラベル、そして同期のパトリックとルイーズ。

広くガランとした部屋があれほどに明るくなったのは初めてのことだったでしょう。エミリコの嬉しそうな顔といったらありません。


ですが、今ケイトが抱える苦悩はこの回から始まったのは間違いありません。

ラストで微笑むルウ。

彼女を救うためのタイムリミットが刻一刻と迫っているからです。ダグラスはその現実から目を離すなとケイトに忠告しました。残酷な二者択一がケイトを苦しませます。


ところが、そんなケイトに頼もしい援軍が現れました。

仲間を救おうと奮闘するケイト。

そこに10人もの新しい仲間が加わりました。続きを読む
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