来客のない奇妙な館 ~シャドーハウス考察ブログ~

ヤングジャンプで連載中のソウマトウ先生作、“シャドーハウス”の考察ブログです。

あらすじ

第112話 入館

今、人気作の仲間入りをしつつあるシャドーハウスですが、一昨年までは鳴かず飛ばずの状態でした。

連載初期こそは大々的に書店でPRされたものの、作品の質とは裏腹に売上はほとんど伸びていなかったのです。巻を経るに従い購入特典を頒布する書店の撤退が相次ぎ、芳しくない情勢が長く続きました。当時、劇中ではエミリコ達がお披露目中でしたが、まさに作品自体も奮闘中だったのです。

しかし、そんな状況でもシャドーハウスは期待されていたようです。お披露目終盤の第41話・42話の掲載号では2週続けてカラー扉でした。これは単行本3巻の発売と連動したプロモーションです。

この時のカラー扉は編集部のツイッターでもあげられていましたので、本記事でも引用させて頂くこととします。こちらの画像です。

第41話扉絵
(週刊ヤングジャンプ編集部公式・@yung_jump・2019/9/19 00:38)

これは第41話の扉絵です。

黒い手がエミリコにまとわりつくこのイラストは奇妙で、ソウマトウ先生も「注文ガン無視」「ホラー風味」と呟いておられました。

ただ、不思議と恐くないのはケイトがエミリコの手をしっかりと握っているからでしょうか。エミリコのラピスラズリのような瞳にはケイトの姿が映っています。
(ラピスラズリのような…、という表現は以前ツイッターのフォロワーさんが仰っていたのを拝借しました)


ところでこの扉絵。

掲載された頃はどんな場面なのか不明でしたが、今話を読んでようやくその答えが見つかりました。

エミリコが眠りから目を覚ます瞬間を切り取ったかのような描写。

それは3か月後の作品の大ブレイクだけではなく、ケイトとエミリコの物語が始まった、本当のスタートを告げるシーンだったのかも知れません。続きを読む

第111話 森に潜む影

ただの雑感ですが、週刊ヤングジャンプって結構遊び心のある雰囲気なのかなと思う時があります。

なぜかといいますと、作品間で似たフレーズや描写が度々見受けられるからです。

例えば、シャドーハウスの第42話が公開された時のことですが、次ページに掲載されていた『メイド・イン・ひっこみゅ~ず』の扉絵が黒塗りのシルエットだったことがありました。

また、第45話のラストはエドワードの顔が大写しになっていましたが、その次に掲載されていた『銀河英雄伝説』では、丁度エドワードに容姿の似た人物のメイン回でした。

更に、お披露目ではエミリコの象徴としてシロツメクサが描かれていましたが、『君のことが大大大大大好きな100人の彼女』と『久保さんは僕を許さない』でも、シロツメクサの花言葉が重要な意味を持つエピソードがありました。

こういった事柄を目にしていますので、ひょっとしたら各担当者間での連携がうまく取れているのか、またはそれを統括する優秀な編集者がいるのかなと以前より感じていました。

尤も、私は週刊ヤングジャンプ以外の漫画雑誌を熱心に読んだことはないので(強いて言えばビッグコミックくらい)、もしかしたら他の雑誌でも見受けられるのかも知れませんけどね。


しかしいずれにせよ、編集部内の雰囲気は良いのではないでしょうか。今年の「次にくるマンガ大賞」では週刊ヤングジャンプ作品がワンツーフィニッシュ、しかも11位以内に4作もランクインするという快挙でしたが、そんな気風が良い方向に作用しているのかも知れません。

同雑誌で連載を続けるシャドーハウスも、いつか看板作品になれるようこれからも応援あるのみです!


さて、ところで今号でも似たフレーズが出てきた作品がありました。シャドーハウスの前に掲載されていた『真・群青戦記』においてです。

この作品のラストページで、主人公は自分の下に集まった村人を見て「なんか弱そうだな」と心の中で呟くのですが、シャドーハウスでも同じように第111話の主人公が「なんだか…弱そう」と呟きます。


その人物とは、ケイトです。
そしてケイトが弱そうだと感じたのは、前回彼女が見つけた、あの珍妙な生物のことでした。


ではネタバレ含みますので、今回のあらすじは続きよりどうぞ。続きを読む

第110話 奇妙な不文律

世の中には、人が決して足を踏み入れてはならない場所があります。

理由は様々ですが、最も分かりやすいのは物理的な危険性がある場合です。

例えば、気象条件が厳しい極地や人に危害を加える動植物が生育しているケースは良く見聞きします。

2014年にデング熱が確認された東京都の代々木公園では、70年ぶりの国内感染という事態もあって1か月以上閉鎖されました。

また、政治的・軍事的に立ち入りが禁止されている場所もあります。

散発的に戦闘が行われる紛争地帯や、機密を漏らさないよう関係者以外の立ち入りを禁止している軍事基地のような場所です。この例で著名なケースは、アメリカ・ネバダ州のエリア51だと思います。

長年フィクションや都市伝説の格好の材料となってきた空軍基地ですが、秘密基地だとかUFOの研究をしているとか真偽の分からない噂が乱立しており、オカルトマニアにとって外せない話題の一つです。


ただ、日本において最も身近な「人が決して足を踏み入れてはならない場所」とは、宗教を理由としたものではないでしょうか?

特に神道において、神が宿るとされた山や磐座は触れてはならないものとされてきました。科学の発展した21世紀に何を大袈裟な、と思われるかもしれませんが、こういった例は数多くあります。

藪知らず

写真は千葉県市川市の通称「八幡の藪知らず」です。恐らく我が国で一番有名な「禁足地」である当地は、市街地の真ん中にあるにも関わらず、数百年に及ぶ神隠しの伝承により、今もなお手付かずの森となっています。

私も行ったことがあるのですが、街中の、それも先を見通すことのできる広さの林でなぜ神隠し伝説が生まれたのか疑問に思いました。

しかし逆に言えば、そんな場所なのに現代でも畏怖されているからこそ、屈指の「禁足地」として君臨していると言えましょう。

神道繋がりで言えば、伊勢神宮の式年遷宮で執り行われる「木本祭」は最重要の秘儀とされ、関係者以外は参加できないだけでなく森への立ち入りも厳禁とされます。心御柱を伐り出すこの儀式は人目につかないよう真夜中に行われますが、そこで何が行われているのかは謎のままです。

もっとも、その「謎」こそが神宮に対する畏敬や神秘性を生み出したことは否定できません。神道最高の聖地なだけあります。


さて、冒頭からなぜこんな小難しい話から入ったのかと言いますと、第110話ではまさに「禁足地」を思わせる「決まり」がケイトの行く手を阻んだからです。

しかしその「決まり」に対するケイトの行動は、これまたケイトらしいものでした。



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第109話 シャドーハウス

ちょっとしたトリビアですが、ソウマトウ先生のオリジナル作品で長期連載された「黒」「ギリギリアウト」「シャドーハウス」の中でサブタイトルを先生が考案していたのは「黒」のみとなっています。

例えば「黒」最後のエピソードとなった3巻の「はなしの話」は、ソウマトウ先生の好きなユーリ・ノルシュテインの「話の話」という作品から名付けられました。

しかしソウマトウ先生によれば、そんな風にこだわり抜いてサブタイトルを考えていると時間がとられることから、「ギリギリアウト」と「シャドーハウス」は担当者の方がサブタイトルを付けているそうです。

とはいえ、どのサブタイトルを見てもクオリティの高いものばかりです。エピソードを読み終わって『ああ、あのタイトルにはあんな意味があったのか!』と気付いたのは一度や二度ではありません。

私がシャドーハウスで特に好きなのは「第42話 解」「第43話 最後の一対」「第56話 破鏡不照」「第91話 ケイト」ですね。

いずれもエピソードの内容と密接に関連しているだけではなく、最後まで読んで初めて意味が分かるようになっています。「意味が分かると怖い話」ではなく「意味が分かると凄いタイトル」です。

それどころか、暫く物語が進んでから新しい意味を見出せるタイトルもしばしばあります。

「第56話 破鏡不照」なんかはその典型で、あとから読み返すと確かに、あの時のキャラクター達の行動は後戻りのできない選択の連続でした。凄いです。

ここまで凝ったサブタイトルを見ていると、担当者の方のシャドーハウスへの愛が感じられますね。やはり作品を読み込み、大切に想っているからこそのクオリティでしょう。

シャドーハウスのサブタイトルは、作品の魅力の一つと言っても過言ではありません。私は毎回楽しみにしていますし、最新話公開時に真っ先に目を通すという方は結構多いのではないでしょうか?


ところが、今回のお話を本誌で読むとサブタイトルがどこにもありません。扉にも書かれておらず、第82話の時のようにページをめくっても出てこないのです。不可解です。

しかし、それはその筈です。

なぜなら今回のサブタイトルは、予想を覆すタイミングで登場したからです。

それを見た私は、ケイトが受けたであろう衝撃を追体験していました。
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第108話 生い立ち

変身(フランツ・カフカ)


画像の文庫本は「変身」という小説です。
(この本ではもう一編「断食芸人」を収録)

20世紀を代表する小説家、フランツ・カフカの代表作です。

フランツ・カフカは19世紀末期から20世紀初頭まで生存していた人物でしたが、生前は薄い短篇集を出版したのみで、いわゆる「知る人ぞ知る実力作家」的ポジションでした。

ところが、カフカが遺言として焼き捨てるよう頼んだ原稿を、友人のマックス・ブロードが発表していったことで風向きが変わります。

カフカの実存主義的な作風が大きな反響を呼び、高い評価を得たのです。

やがてその影響は後世の小説家へと及び、現在では20世紀を代表する小説家として知られるようになりました。

翻訳者の池内紀氏は、ブロードの行動を「誠実な裏切り」と評しています。


さて、私が何故フランツ・カフカの「変身」を取り上げたのかと言いますと、この作品の主人公と関係があります。

この主人公は『ある朝目覚めると虫に変わってしまっていた』という理不尽な運命に遭うのですが、第108話を読んだ私は、思わずこの作品を思い出してしまいました。

いや、むしろ「変身」の主人公が大人の男性だったことを考えると、第108話の方が過酷なストーリーかも知れません。

それだけやるせない現実が、ある少女を襲ったのです。

今回のお話の主人公はケイト。

麗しの薔薇の過去が、今明かされます。



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